一難去ってまた一難
なんか微妙にテンプレ展開か?
一方その頃、シレジエン北西の名も無き村・・亜人の軍勢が攻め寄せ焼き払われていた。山の麓に小さな祠があり、村人の言い伝えで入ってはならない禁断の地とされていた。だがその言い伝えを守るべき村人も既になく、一人の黒衣の魔道士がそこに立っていた。フードを深くかぶり、その面差しは見えない。ローブに覆われた体は男女の別もわからない。ただ口元には歪んだ笑みを浮かべていた。
魔道士は結界の張られていた入り口を手をかざすだけですり抜け、奥へと進んでいゆく。幾つかの結界をすり抜け、魔法錠のかかった扉を開いた。手のひらを上に向け火球の魔法を唱える。明かりに浮かび上がったのは祭壇であった。さらに笑みを深くしたその魔道士の顔は口元は三日月のように釣り上がり、禍々しさを増す。そして聞こえるか聞こえないかの囁くような声で呪文を唱える。
先程までの戦いでシレジエンの地に降り注いだ血は計り知れない。人も亜人も関係なく、多く命が散らされた。死を強いられた魂は怨嗟に満ち溢れ黒く染まる。魔道士の掲げたオーブに黒く染まった魔力が集まり、やがて魔道士の手を離れ祭壇の上に移る。黒い輝きは祭壇を照らす。
「ククク、ようやくだ、やっとこの時が来た。ニーズヘッグよ。この狂った世の中をお前の力で無に還すのだ」
輝きが収まると黒い魔力に包まれた魔導書が現れる。魔道士は躊躇なくその魔道書「闇のグリモア」を手に取り狂ったような哄笑をあげていた。
さて、俺は改めて頭を抱えていた。竜王なら俺の足元だぞと突っ込みかけた。口が裂けても言えないが。リリから降り立った俺をすさまじいまでの歓呼の声が包んだ。そこにシリウスに乗ったままのミリアムが戻ってくる。歓声が倍になった。いっそうるさい。手を掲げる。声がピタッと収まる。なんか訓練された連中だ。さて、このままじゃ収まるまい。とりあえず奮戦してくれた皆に言葉をかけよう。王様ってのは難儀なもんだ。
「フリードの精鋭たちよ、よくぞ戦い抜いた!私は諸君らを誇りに思う!」
「「「「ワアアアアアアアアア!!!」」」
「私は新たな友を得た。建国王の友たる白き竜リンドブルムが私を助けてくれる」
「「「オオオオオオオオ!!!!」」」
「いかなる敵をも退ける力は私とともにある。フリードの兵よ、我が精鋭よ、私に続け!」
なんかいい感じに盛り上がっているところにいきなり爆発音が響き渡った。いや、違う、爆発と勘違いするほどの魔力が放出されたのか。北西の方に黒い魔力で構築された柱が立っていた。この距離でも見えるんだから相当な規模だ。この感覚、またあれか。正直げんなりする。が、それを表に出すわけには行かん。王様ってのは因果なもんだ。
現実逃避気味に独りごちる。そしてふと思いついてリリの方を見ると・・・ガクブルしてやがった。
「何が起きている?」
「ニーズヘッグが復活するんです、我怖い」
「おいおい、あれってまさか」
「最後のグリモアが解き放たれた」
「ってことは?」
「消滅したグリモアの魔力は残りに集まる。今までは2冊が消滅した。北で消滅したのはかなりの魔力が相殺されたけど」
「うんうん、それで?」
「全てのグリモアの魔力が1箇所に集まった時、ニーズヘッグが封じられた次元の門が開く」
「ってことは、今のを消滅させなければ・・・」
「どっちにしても、2冊が同じ場所に集まったら一緒」
「となれば、あれを光の魔力で消滅させたら?」
「ニーズヘッグを弱体化できる。我も奴も魔力が集まって意思を持った存在。だから開放された時の分の魔力でしか具現化できなくなる」
「ん?ってことは、お前も力を封じられているのか?」
「そう、けど、封印の魔法具は失われた。今のこの存在の魔力が失われたら、我の復活には幾星霜かかるかわからない」
「事実上の消滅じゃねえか」
「人の時間から見たらそうなる」
「なんてこった。って待てよ、ニーズヘッグにも同じことが言える?」
「肯定。けれどグリモア1冊分でも我より強い」
「使えねえ」
「ひどい、我すねる・・・」
「まあ、しかたねえ。2冊分の魔力になる前にあの魔力の持ち主を消し飛ばすのがいいか」
「そう、我も行こう」
「よろしく頼む」
と会話をしている間もあったが、兵はあまり動揺していなかった。ってかそもそもキラキラした目で俺を見る兵たち。おいおい、勘弁しろや・・・
「これよりリンドブルムとともにあの魔力を祓おう。私は必ず戻る。フェルナン卿、留守は任せる」
「かしこまりました。ご武運を」
「「ワアアアアアアアアア!!!」」
兵の歓呼の声に見送られ、ミリアムとともにリリの背に乗る。そのまま飛び立ち黒い魔力の柱の元へ向かった。そんなとき、緑色の小鳥が飛んで来る。
「久しいの、主殿」
「えっと・・・どちらさま?」
「あー、いつも眷属だけだったからの。シルフィードじゃ」
「・・・・・おお!」
「えーっと・・・この扱いはひどくないかのう?」
「おう、久しいな。して、何かあったのか?」
「・・・まあよい、フェンリルとリンドブルム、そしてわしはの、建国王との契約を果たしに来た」
「・・・へ?」
「はるか未来、闇の勢力が再び人の世を脅かすとき、我が後継者を見出しその力となってくれ」
「お、おう、んで、なんで俺?」
「フェンリルが認めたじゃろうが、最初に。その後で、わしの試練も超えておる」
「そういえば」
「忘れとったんかい。まあ、眷属を通してしか助力しておらんかったからの」
「はっはっは、それで、結局どうなるんだ?」
「もともと風の魔法におぬしは適正があるからな。風の属性であればどんな魔法も仕えるようにしよう」
「んじゃよ、こういうのってできるか?」
「ん?・・・・なんだと?正気かお主」
「できないのか、意外と使えんな」
「やってみせよう!」
「ふむ、口だけじゃに所を見せてくれよ」
「無論じゃ!」
3つの人外のしもべ?を得た俺はこんどこそ決着をつけてやると意気込んで黒い魔力の柱に向けリリを急がせるのだった。
王様が桃太郎状態(犬:シリウス キジ:シルフィード サル:リリ(竜)




