閑話 学園編~トーナメント初日 やり過ぎはいけません~
特に山も落ちもない試合ですが、ちょいと描写を増やしてみたり。
2週間後、トーナメントが発表された。くじ引きとかはなく教官が相談の上作ったとか言われてるが、真相は不明だ。うちのメンバーは綺麗にブロックが別れており、当たることはない。なんか作為を感じなくもないが気にしても始まらない。だがなんか知らんがイリスがブチ切れていた。
「どうなってんのこれーーーー!」
「どうしたイリス?」
「あ、エレス。トーナメント見た?なんか、あんたの一回戦の相手だけど、上級生の主席なのよ」
「ほう、くじ運ないな俺」
「その次が、順当に行けば・・・」
なんか話を聞くと、剣術の使い手とか槍の名手とかお強そうな人たちが並んでいるらしい。
「これ絶対貴方を潰しにきてるわ!」
「そうかそうか、俺はなかなか高く評価をされているらしい」
「ニヤニヤしてる場合か-!」
「何だ、心配してくれるのか?じゃあ、こうしようか。俺が負けたら卒業後の進路はイリスのところで雇ってもらおう」
「え?どういうこと?」
「なに、この程度の試練を超えられないようなら国に仕える価値もない。だったら商家の用心棒にでもなるさ」
「私に仕えるのはついでってこと?」
「何だ、どっかのお姫様みたいだな」
「むう、負けたらあなたは私の部下になるのね、わかったわよ」
「まあ、せいぜい頑張るさ」
そしてさらに2週間後、トーナメント当日。
「候補生諸君!私はこの日を待ちわびていた。諸君らが日頃の鍛錬の成果を存分に発揮することを切に望むものである。毎回恒例であるが、準決勝以降は国王陛下がご覧になる。恥ずかしい試合をしないように。では、開幕とする!」
バルデン伯の挨拶はまあご立派だった。文官志望の候補生は自由参加となるので、だいたい全体の7割位は参加しているようだ。ここでいいところを見せれば、地方領主の直属になったり、王都防衛軍や近衛騎士への道が開けるかもしれない。目の色を変える候補生がいるのも当然だった。
「Aブロック第4試合。エレス候補生とロレンス候補生、前へ!」
教官からの呼び出しを受け、木剣を手に舞台に上がる。剣の長さを調節して作ったバスタードソードが今の得物だ。流石にダインスレフ持ち込めないしな。相手はラウンドシールドと片手剣を持った標準的な騎士スタイルである。
「はじめ!」
合図とともに距離を詰めてくる。俺の武器から予想される間合いを見て。接近戦を挑んできたようだ。良い判断だ。鋭い突きを繰り出してくるが立てた剣で払い躱し武器ごと相手の盾に体当りして距離を取る。あまり押し込めなかったが構わず横薙ぎに剣を振るう。大振りを見てバックステップしてギリギリの間合いで剣が通過した瞬間踏み込む。いい動きだが、甘い。相手も気づいた。振り切ったはずの剣を止めて刺突の構えになっていることを。そして相手が盾を戻す間も与えずに突く。体を開いて躱す。だが俺は剣身を水平に突き出している。つきだした剣をそのまま横薙ぎに払った。以前トモノリに習った平突きという技だ。盾で受けることもできず綺麗に胴を薙ぎ払った一撃は相手、ロレンスを綺麗に吹き飛ばした。
「勝負あり!勝者エレス候補生!」
会場が沸いた。あまりに一方的な勝利にどよめきが広がる。部隊から落下していたロレンス候補生は俺に握手を求め、さわやかな笑顔を残して舞台を降りた。爽やかイケメンとか爆ぜればいいのに。という俺のモノローグは口には出さなかったが、そこらじゅうから異論が出るだろうと仲間たちにが口をそろえて言い放ったのは、なんか納得がいかなかった。
二回戦。槍使いの候補生で、振り回すだけで腰が引けていたので、穂先を切り飛ばしたらいきなり降参された。三回戦、大剣使いだったが、鍔迫り合いで押し返し相手が転倒したところに剣を突きつけ勝利した。自らの腕力が通じなかったことにショックを隠せなかったが、世の中は広いんだと伝えるとなんかキリッとした顔で舞台を降りていった。
「エレスって強かったのね?」
「んーある意味俺より強いのがいるからな」
「え、それって誰なの?」
「内緒だ」
そう言ってニヤリと笑ってみせたがイリスは不満気な意思表示なのか、頬をふくらませていた。
そして次の試合から王の前で戦う御前試合となるようだ。本日の日程は終了し、解散を告げられたため、食堂に繰り出した。
そういえば、他の連中の戦績だが、まあ、負けるはずもなく皆各ブロックで勝ち抜いていた。
明日もあるし、とっとと寝ようと言い出すと呆れ顔で見られたが、「ま、エレスらしいよな」の一言で解散になった。カイルよ、どういう意味だ?と聞くも笑ってはぐらかされ、釈然としないまま自室に引っ込んだ。
トーナメントを順調に勝ち抜いたエレスはバルデン伯の模擬戦に臨む事となった。
最初の打ち合いの後で、何故か木剣がぽっきり折れる。
「これがあんたの差金か」
「知らんな」
この模擬戦は無事に終わるのか?
次回 トー^ナメント後編(仮