閑話 学園編~トーナメント決着 結局やらかしました~
戦闘の描写って難しい
「そういえばエレス。イリスととんでもない約束をしたって?」
「とんでもない?なんのことだ?」
「いやだって、今回のトーナメントで誰にも負けない。負けたらイリスの奴隷になるって」
「奴隷?いや、イリスの家で雇ってもらうって話はしたが」
「んじゃ若干話が膨らんでるのか。イリスのとこに入婿に入るとかもあったぞ」
「まてまて、なんでそうなるんだよ」
「エレス、浮気は許さない」
「浮気って、なんのことだ?」
「今回の試合で一度でも負けたらあの女のものになるって」
「だからんなこと言ってねえって」
「ところででエレス殿、今回のという部分で一つ気になる点があり申す」
「ん?どういうことだ?」
俺はナガマサのセリフに凍りついた。
「バルデン伯を模擬戦とはいえ打ち倒すつもりでござるか?」
「えっ?!」
「そもそも、エレス殿の口調ですと候補生同士の試合には負けぬという認識に聞こえ申す」
「いや、俺もそのつもりで・・・」
「しかし、今回のトーナメントとなると、バルデン伯との模擬戦も含まれるような?」
「あ・・・・・・やっちまった」
はめられた、俺がそのことを理解した時にはもう遅かったのである。
昨日やたらイリスの機嫌が良かった理由を俺はいまさらながら悟った。
王様が貴賓席に座り、模擬戦トーナメントの再会を告げた。ここまで生き残っているだけあり、水準以上の力量を持っている。俺の初戦の相手は二刀流の剣士だった。力技で一気に薙ぎ払った。次の相手は大斧を振り回してきた。ひたすら避けまくってバテたところを一撃、斧を弾き飛ばした。どっちかというと重量武器を一撃でふっ飛ばしたことに驚かれたような気がする。
そして最後にあたった剣士。こいつが強かった。片手剣と盾のオーソドックスなスタイルだったが、最初にあたった剣士の更に上を行く腕だった。平突きを対応してくるとかどんな反射神経してんだこいつ。
最後に勝ちを拾ったのはまあ、普通は使わない技を使ったこともある。剣を横に大振りする。かわした敵が突きを打ち込む。そこにカウンターで柄を叩き込んだ。大剣の間合いにはないゼロ距離からのしかも低い位置からの刺突に脇腹を強打し、倒れこんだところに剣先を突きつけた。
まあ、あれだ、正統派剣術では使わない裏ワザみたいなものだ。だからこそ決まった。それにまあ、命のやり取りのない試合で言うのも何だが、今後戦場に出たとき、自分の知らない技を使われて卑怯だとでも言うつもりだろうか?言う間も無く首が飛ぶだけである。物理的にな。
候補生でかくトーナメントを勝ち抜いた6人が王の前で跪く。ってかお前ら全員勝ち抜いたのかよ。もう一人は貴族の令嬢ということで、すっごい美人だった。だが剣を構えた時の立ち姿は並以上の剣士であるのは間違いない。そしてミリアムに思い切り脇腹をつねられた。なぜだ?!
「候補生たちよ。お主らの武勇はこの国の盾となり鉾となろう。将来が楽しみだ。オーギュスト卿、模擬戦には誰を指名する?」
「わが息子を破ったエレス候補生を指名しましょう」
「謹んでお受けします」
息子?え?あのブヨブヨは出てなかったろ?
「エレスが決勝であたったのって、バルデン伯公子のレックス卿です」
「・・・まじっすか?」
「エレス、生きて帰ってきてね。私を未亡人にしないで」
「ミリィ、激励ならちょっと的がずれてる。後縁起でもないこというな」
「「殿、ご武運を!」」
「エレス、約束忘れないでねー」
「コイツ相手でも有効なのか?」
「男に二言はないわよね-」
「吠え面かかせてやる」
「足震えてない?大丈夫?」
「だー!余計なお世話だ!」
なんか緊張感もふっとんだ。イリスなりの激励だったのかね?
校長が険しい顔でこっちを睨みつける。流石に迫力だ。
「ふん、女とイチャつくとか余裕だな」
「いちゃなんかついてねえ!やかましいわ老害!」
「なっ!手加減せぬぞ小僧」
「最初からする気無いだろうが」
「良い度胸だ、試合中の事故はよくあることだしな」
「おーこわいこわい、せいぜい殺されないようにしますか」
始めの合図とともに踏み込む。流石にこの相手で余裕ぶっこいた戦いをするつもりはなかった。真正面から唐竹割りの振り下ろし。盾でいなされる。左脇に斬撃、右足を軸に半回転し剣を当てて防ぐ。手首を返して袈裟懸けで斬りつけるが剣先を滑りこませて流される。バックステップして体勢を整え三連続で飛んでくる刺突を避ける。盾は手元でしっかり体をガードしており、すきがない。無理に斬りこんだら盾でいなされるのが落ちだろう。このおっさん強い。
「なにを笑っている?」
「え?そうか、俺は笑っているのか」
「貴様、わしを愚弄するか!」
「いや?そんなつもりはない。笑う理由は、貴方が強いからだ」
打ち合いは熾烈さをました。剣を振るう、突く、防ぐ、躱す、お互いに決め手を欠く戦いは千日手の様相を呈し始めていた。王すら固唾を呑んで戦いを見守る以外なかったのである。
そして転機は思いもよらない形で訪れた。激しい打ち合いに武器が限界を越え、エレスの木剣が折れたのである。普通はここで勝負ありとなるが、オーギュスト卿は剣を振り上げる。エレスも折れた剣を捨てて素手で構える。剣が振り下ろされた。まともに受ければ、木剣ですら命を落としかねない一撃。そしてその直後の光景に唖然とした。エレスの両手に振り下ろされた剣が挟み込まれていたのである。
「おお、真剣白刃取り!!」
どっかのトモノリが叫び声を上げる。会場はあまりの離れ業に声を失う。
両手で挟み込んだ剣を引っ張り相手の耐性を崩し懐に飛びこむ。胴に肘を打ち込み、下がった顎にショートアッパーを入れる。そしてズダンッと踏み込んだ力を膝から腰、肩から肘へ伝え拳で爆発させる。ほぼ密着状態から繰り出されるすさまじい打撃に状態が揺れる。そこに狙いすました上段回し蹴りが叩きこまれ、オーギュスト卿の意識を刈り取った。
「見事!」
王が立ち上がって手を打ち鳴らす。あまりといえばあまりな決着に言葉を失っていた観客も大完成をあげ手を打ち鳴らすのだった。
そして俺はいまさらながら思い当たったことがあった。こいつらの一族全部のしてしまったみたいだが、俺暗殺とかのターゲットになってやしないだろうかと。
目を覚ました校長は俺と目が合うといきなり大笑いを始めた。私が不覚を取るなど今までなかった。素晴らしい武勇だと褒めそやす。だが目の奥底は笑っていなかった。どうやら俺はやらかしたらしい。
次回 行軍訓練(仮




