8 衣食住が整い出します
いつものように探索組を送り出すが、今日はいつもと反対方向へ。迷わないように目印をつけてもらった。
ステータス画面で移動した個所は表示されるけど、全員が地図にそって動けるわけじゃないのだよ。
彼らが出発したら、私は残りのみんなのスキルをチェックだ。
江崎さんのスキルは本棚を出せるまでになった。まだスカスカだけど、台所と同じでだんだんいっぱいになるのだろう。
そして後藤君がスキル『購買』を覚えた。
昼休みの購買で買えるパンが出せるのだ。
今は焼きソバパンが1個だけだが、レベルが上がれば大量に出せるだろう。彼のスキル獲得条件はたくさんたべることかもしれない。
仮説を立証するため、後藤君には食料の割り当てを増やしてみよう。
『仕立て屋』ジョブ佐藤さんのスキル『既製服』は、出せる服が選べるようになってきた。
カッコいい服はMP消費が多いので、とりあえず数枚ずつジャージを出してもらってみんなに渡す。
インナーも一緒に出してもらうが、矢島さんが綿シャツを熱望したので皮膚弱い勢向けに綿製品を出してもらった。
「1人だけズルくないですか?」
陰口を言った子には後で説明した。
「食品アレルギーがある子には別の食材を用意するでしょう、それと同じことなの。綿じゃないと絶対ダメなのは矢島さんだけだとして、ギリ我慢している子にも無理させたくないし」
子供は世界がせまい。少し我慢すればいいのにと不満を募らせる子もいるだろう。
しかし当人からしたらとんでもなく大変なのを我慢させられている場合だってあるのだ。
「だからあなたも、あんまりギリギリまで我慢しないで先生に教えてね」
みんなにも同じことを伝える。
命の危険がなくなってくるときの方が不満はたまりやすい。
さっそく暁君が私に声をかけて来た。
「先生‥他の奴がうるさくて眠れないんです」
彼の表情は告げ口して良いかどうか悩んでいる。
周りを拒絶したい訳じゃないが、安眠は確保したいのだろう。
「分かった。今夜からは寝る時は静かにするよう洗脳しとくから」
最強キャラの機嫌を損ねることは避けたい。
暁君はホッとしていた。
「それから‥ステータス画面をちゃんと読んだんですけど、僕のこの部屋絶対防御らしいです」
すご。ほらやっぱりこの子が1番の当たりスキルじゃん。
「へ、じゃあ君だけ生きのびるのは可能なんだね」
私は新情報に考えこむ。
(拠点を移動してもいいのかもしれない)
彼の部屋があれば、どんな強敵が現れても防御可能だし。
今までの探索で、獣が現れるのはここから200mは進んだ場所だ。
運動部の土井さん情報だから確かだろう。彼女は(暁君の部屋にあった)目覚まし時計で計りながら走ってくれた。
あと経験値稼ぎに使っていた虫がもうほぼ全滅していて、生徒によってはレベルが上げられない。
探索班が無事に戻って来てから、私は移動を発表した。
「レベル上げと探索の効率アップのため、拠点を替えようと思います」
みんながざわつく。
「もちろんここより広い環境が良いので、ふさわしい場所を探します。そのため、探索は全員で行うことを覚悟して下さい」
「無理ですよ」
「死ぬ、絶対殺される」
私はおびえる生徒を何とかなだめる。
どうしても嫌がるなら、洗脳するしかないのか?
「初めは探索用のA班とB班に2・3人ずつ待機組を混ぜます。ここにいてはみなさん経験値が貯められないでしょう」
待機組もこん棒やナイフなら持っている。暁家のキッチンには包丁もある。工作好きな野上君は『職人』ジョブを持っているので、武器が壊れても直してくれる。
非力な女子であっても、弱い敵なら討伐可能になったのだ。
しかしこの世界で生きるために必要とは言え、胃が痛むよ。
(せめて自分で行ければ‥ダメ、それは安全が確保されてから)
指揮官が不在の集団はすぐに崩壊する危険がある。
とにかく渋る待機組から2人選抜し、探索に向かわせた。
「危なかったらすぐに戻っていいから、お願い」
多少は洗脳を効かせて送り出す。
残った私は暁家から持ち出した厚紙の工作だ。
これからの目標に向けて必要になるだろうから。
肌着は綿100%じゃないと着られません。
首回りとかの化繊、本当にいらない‥綿100%をうたいながら肌に触れる部分に化繊のレースなど使いやがっている製品は詐欺綿と呼んでいます。




