51 プール!
暑さが厳しくなる。
みんなダンジョンで依頼をこなすか、冷房の効いた部屋にいるかどっちかになった。
「ダンジョンは温度が一定だから楽。なんでこの世界なんでこの世界、エアコンないんだ」
「まだ発明されていないからな」
男子の会話を聞き流す。
まあ現代ヨーロッパもエアコン設置率が低すぎて、夏は熱波の被害にあっていたけど。
暑い時期は、冒険者ギルドで氷魔法の依頼が増える。
依頼料も、他の依頼より割高だ。
賢者和田さん・水魔法使い大久保君に加え、『冷風』を覚えた高橋さんも引っ張りだこ。
「プール行きたい‥」
水泳の授業は面倒くさくなるお年頃だろうが、暑い日は気持ちが変わるのだろう。
「学校指定の水泳着なら、人数分出せますよ」
『仕立て屋』ジョブの佐藤さんが申し出てくれた。
「粘土を操れば、水をためることはできるんじゃないかな」
土魔法使いの園村さんも提案してくれる。
「よし、じゃあプールを作るか」
「おっしゃ」
問題は作る場所だ。
地底の拠点が一番目立たないだろうから、そこにしよう。
園村さんの土魔法で穴を掘り、粘土をあやつって保水力を高める。
大久保君が大量の真水を出して穴をいっぱいにした。
「子供用のプールくらいか」
広さはあんまりない。大浴場くらい。
風呂よりは深いけど。
「やっほう!」
着替えの早い男子から、水に飛びこんでいた。
「さすがに全員は無理だから、15分ずつ交代ねー」
保水力はそこまでなかった。
だんだん水位が下がるので、そのたびに大久保君や和田さんが足している。
「大久保君ってさ、水を出せるだけじゃなくて動かせたりもできたよね」
「あたり前だろ」
暁君がオドオド話しかけていた。
コミュニケーションはまだ苦手らしい。
「なら、川で泳ぐこともできるよ、ね。溺れてもすぐ助けられるから」
なるほど。
「川ならみんなで楽しめるね」
地底から戻った私は、集落に向かった。
泳ぐとしても地元の人に安全な場所を聞いた方が安全だから。
「泳ぐ? 無理無理。最近は雨が少なくてね。とても泳ぐことなんてできないよ」
初めて村に来た時お世話になったおかみさんに聞くと、水不足だと知らされた。
(プール作っている時じゃなかった)
「ため池とかあったら教えてください。水魔法使える子がいるんで」
「ため池?」
あら、この地域にはため池の風習がなかった。
「畑に水を引くための池造っていいですか」
私は村長さんに聞いてみる。
「そんなことができんのか?」
中々信じてもらえない。
「場所を指定してくれれば、造ってみますよ。大きいのは難しいですが」
村長と一緒に川の近くを見て回る。
確かに水量は少なかった。
「畑に水路ってあるんですか?」
「いや。ここいらから水をくんで使うのよ」
水田じゃないから用水路まではなかった。
「なら畑の近くにあれば便利でしょうね」
ひと晩泊まってMPを回復させてから、ため池造りに向かう。
午前の授業を終わらせ、私は大久保君と佐藤さんと園村さんと鈴木君と和田さんを伴って段々畑の上の斜面を登った。
「ここら辺なら掘っていいって許可もらったから、お願いします」
「はいはーい」
園村さんが昨日造ったくらいの穴を想定し、斜面をえぐって行く。
和田さんは取り除けられた土砂から粘土層を分離した。
私たちは粘土と水を混ぜこねてから、底や側面を補強した。
その後、鈴木君が防水タープをスキルで出し、佐藤さんが池の幅にそってぬい合わせる。
「ここまでやれば、保水力もしばらくは持つよね」
昨日のプールから学んだのだ。
暑い中の作業で汗をかきまくる。
お昼休憩の時はアイスクリームも出して、味わいつつ涼んだ。
午後は水路の作成。今度は和田さんが水路を掘り、園村さんが粘土を分離していた。
水路も一応補強する。
村人に声をかけてから、仕上げに大久保君が水をドバっと出した。
「おおお!」
下流から歓声が聞こえる。
水が無事に届いたらしい。
季節の変わり目は気温の変化がすさまじくって、どう頑張っても風邪を引きます。
やっと前回のが治ってきたところなのですが。
ちなみにこれを書いていた時は西日本水不足でした。
書き終わったとたん、台風が連続で襲来しています。




