50 神殿と古代文字
街には神殿もあった。
私は召喚をしてきた自称女神を調べるため向かってみる。
生徒数人もついて来た。
「女神の像はごらんになりましたか? 碑文が台座にきざまれていますよ」
おだやかな神官さんに案内されて私たちは女神像を紹介される。
露出度が高いことは同じだが、同じ女神かどうかは分からない。
もしあいつだったら拝むのも悔しかったけど、収穫はあった。
碑文がなんとなく読めたのだ。
「ええっと、建国より500年を記念して‥かな」
「おお、古代文字が読めるのですね」
これも特殊スキルの影響だろうか。
「こちらには古代国家レーマの建国神話が書いてあります。天界より神の使いが現れ、王レムスを助け奇跡の御業で敵を滅ぼしたのですよ」
これは千年前の話でしてね、と神官は続ける。
「レーマ時代の芸術はとても優れていましたが、今ではこのような彫刻を作る職人はおりませぬ。そう言えば我が国が建国された時も神の使いは現れたそうですね。太陽神が最高神とされたのはそこからでした」
一緒に来た生徒たちでは、鈴木君や間宮さんは読めないが、大久保君と森さんが読めた。
「新スキルはあるかな?」
私はステータス画面を開く。
英語の勉強は散々させているため、英語力が向上した子はスキル『他言語理解』を獲得しているのだ。
(勉強によって獲得できるスキルがあるのなら、欲しい)
ステータス画面のスキル欄には『他言語理解』があるが、そこから派生する形で『古典理解』が加わっていた。
「これは古典を特訓すれば良さそうだね」
神殿で古代文字が読めたことを告げると、興味を持った生徒が何人も見に行く。
「どう、読めた?」」
和田さんがうなずくのは分かる。小林君と、矢島さんもそこそこ読めた。
うなずく私に森さんが声をかける。
「渡里先生、私、新ジョブ獲得しました!」
「え、見せて、おお」
森さんが手に入れたジョブは『読み手』だ。
使い方はイマイチ分からない。と、言うことは‥
「絶対役に立つじゃん!」
この世界で分かったこと。不思議ジョブほど便利である。戦闘以外で、だけどね。
午前中は毎日、2時間を勉強にあてるのは変わらない。
教えるのは私の担当である世界史と、まあまあ得意な日本史。
英語と古典は教科書の内容を説明くらいはできる。
現代文は名作の特徴と評価をまとめさせた。
理系は‥動画サイトや得意な子に丸投げ。
洗脳スキルがあるので、コピペ&生成AIの禁止はたやすい。
(このスキル、これだけでいいから現実世界で使えないかしら)
1人の教員として、切実に欲しかった。
『読み手』の森さんは本を出せるようになった。
江崎さんと違って、文学系が出せるのが嬉しい。
ネットでも読めるけど、紙の本は貴重だ。
それに暁君の家にある本と、江崎さんの本棚で出せる本だけでは、参考書として心もとなかった。
「もし森さんが本屋にある本はどれでも出せるようになったら、好きなテキスト選び放題じゃん」
森さんも目をキラキラさせている。
「いいですね、それ」
そして古典の復習が進む。
教科書だけじゃなくて森さんが出してくれた枕草子や徒然草を、徹底的に読みこませた。
おかげで『古典理解』のスキル持ちが増えたよ。
「別に、この世界の古代文字なんて読めなくてもいいじゃん‥」
後藤君はぼやいているけどね。
「それでも、少しだって女神の情報を手に入れたいの」
神殿には聖典もあるそうだけど、一般信者には見せてくれないらしい。ケチ。
このクラス、元の世界に戻ったら文系教科で無双できるかも?
なんちゃって古代ローマも設定作りました。オオカミに育てられた双子の、弟レムスが創ったからレーマです。




