49 佐藤さんと野上君
生徒視点で書いてみました。
私は佐藤紡。
異世界で不思議な力を与えられて、今はクラスの裁縫担当。
この間、収納魔法の根本さんと協力してマジックバッグを作ったの。
「とりあえず、容量は倍になったね」
最初に作ったのは失敗だった。
収納魔法は成功したのに、2倍の荷物を入れたら、重さも2倍になっちゃった。
「うわちゃぁ、これ、質量保存の法則だ」
私はうめく。
「根本さんはどうやって持ち運びしてるの?」
「ん? 自分の近くに架空の部屋があって、そこにしまう感覚」
「だったら、バッグは入り口だけにして、そこに小部屋を作る方向にできないかな」
ダメだった。
「ゴメン、どうしてもバッグの中に、空間を広げちゃうみたいで」
「いっそのこと、浮遊魔法で浮かせちゃうか」
江崎さんの浮遊魔法も足せば、それっぽいのができ上る。
問題点は浮遊魔法の効果時間が短いこと。
「江崎さん、自分にかけたのは解除するまでずっとなのに、他の物とか人だとすぐ切れちゃうんだよね」
「あーアタシ、役立たずなんで」
いやいやゴメンね、と私はひたすらあやまった。
(防具を作った時は防御力アップを念じながら作ったよね。今回もそれで行けないかな)
軽量化を念じながら作っていたら、できた。
マジ?
ご都合主義がものすごい。さすが異世界。
とにかく何個も試していたら、入れた物質の重量が半減するまでになったの。
「後は、バッグの利便性ですね。耐久性とか使いやすさとか」
ある程度自信が持てたから、友達や先生にも披露した。
「リュックだったら、鈴木がスキルで出したのが使いたいんだけどな」
坂本君がこぼしたのが聞こえちゃう。
確かに冒険者の鈴木君が出すリュックは使いやすい。
現代日本の技術がつめこまれていて、物は大量に入るし肩にかかる力も分散されるの。
「それでも、この世界で異質に見えすぎないよう注意したいのよ。みんな使うならこっちにして。佐藤さんのバッグなら、この世界にもなじめそうだから」
先生は私のバッグの方がいいってほめてくれた。
リュックは、私だって似たような構造で作れるけどさ。金具とかは発注する必要があるじゃん。
「ない物を作ってもらうのって、目立ちまくるんだよね」
だからたとえ作ってみても、私のリュックはデザインがちょこっと残念に。
それでも、荷物の持ち運びがずっと楽になったんだから、いいじゃん。
***
オレは野上耕太。
いきなり異世界に召喚されて戦う羽目になった時は訳が分からなかったが、今ではそれなりに余裕ができた。
オレのジョブは『職人』だ。
ダンジョンでは武器を作れる人間がオレだけだったから頼りにされたが、街に出た今は声がかかることが激減した。
イライラしたけど、別にオレは物を作るのが好きなだけで、武器職人になりたい訳じゃない。
「こっちの靴って歩きにくいよね。野上君、ここで違和感を持たれない靴って作れない?」
先生がボヤいていたから挑戦してみる。
加藤のおかげでネットが使えるから、革靴の作り方とか検索してみた。
靴底以外なら可能そうだ。
店できれいに処理された革を買って、カットする。
道具はスキルで出せるし、時間をかければ形ができて行く。
靴底は、迷った。
結局、佐藤さんに出してもらった靴を分解してゴム底の部分だけを自分の手作りに取り付けることにする。
靴底だけならゴムを使っても目立たない。
まだちょっと不格好な靴だけど、成功だろ?




