52 プール⁉
「あんたたちのおかげだよ、まったく」
顔見知りのおかみさんがうれしそうに料理を持って来てくれた。
「サラさんの所はまだ水路が通ってないですよね」
「それでも水くみは楽になったからね。井戸の水まで減っていたところだから、本当に助かっているんだよ」
数日間、大久保君は大活躍だった。ため池に水を補充してからプールで遊ぶ生活だったからね。
ちなみに、普段は街で暮らす組と村で暮らす組を分けているけど、プールに入りたいのは全員だ。
そしてプールを味わいつくした江崎さんが‥スキル『市営プール』を覚えた。
「江崎さんて、遊ぶたびにスキルが増えるのでは‥」
もしたくさん歌わせたらカラオケだって出せそうだ。よし試そう。
そう考えながら1度町まで戻り、生徒を何名か交代させる。
仕事で疲れたから、1日はしっかり休んだけど、冒険者ギルドで依頼の確認もしなくちゃ。
「お、久しぶり」
大通りでロヴェンテさんに会った。
お仲間のジェイクさんたちも一緒だ。みんな暑さにやられたようで、疲れた顔をしている。
「お前たちは仕事か? 元気だな」
「ええ、あと少しで乙ランクなんです」
そうか、と答えてロヴェンテさんは口ごもった。
「ワタリちゃん、こいつと食事してやってくんない? 俺たちとは別の店に行きたいんだよな」
ジェイクさんに提案されて、それくらいなら何でもないのに、と私は請け負う。
「すまん。あんたならもっとうまい飯を食えるだろうに」
「え、こっちのお店も良く来ますよ。珍しい味でクセになります」
肉料理をがっつきながらたわいない会話をする。
男性と2人きりでご飯なんて、ちょっと緊張しちゃうね。
暑い中食事すると汗も出て来て恥ずかしい。
まあ汗だくなのはロヴェンテさんも同じだからそこまで気にすることじゃないのだろう。
そして私はロヴェンテさんをプールに誘ってみた。
「地底で水遊び? 俺も一緒でいいのか?」
「はい。水泳着はこちらで用意するので、ロヴェンテさんも遊んで下さい」
自分たちだけ楽しいのに罪悪感がわいていたからね。
「他の方に秘密なのは心苦しいのですが」
彼ならもう秘密が色々バレているし、誘ってもかまわないだろう。
「そこは問題ない。その‥楽しみだ」
「じゃあ、3日後に宿で会いましょう」
ロヴェンテさんに来てもらうことにして、別れる。
まずは冒険者ギルドの依頼を片付けなくちゃ。
そして3日後、依頼を終わらせた私はロヴェンテさんと合流し、村に向かった。
「家もちゃんとしたんだな」
「あ、直してから来るの初めてでしたか」
洞窟から転送陣を使うまではいつも通りだった。
江崎さんが出した、市営プールの扉をくぐる。
スキルのプールなら街でも村でも出せるのだけど、水不足の時に万が一バレたらやばいので隠しているのだ。
「こっちの部屋で男性陣は着がえて下さい」
設備は完璧。
更衣室もシャワールームもある。
他の女子生徒と一緒に私もわらわら着がえた。
市営プールなら広いから、入りたい子が全員入れる。
「みんな、軽く準備運動してから入ってね」
生徒たちにうながし、自分も震脚運動をする。
「ちょ、ちょっと待て」
しかし、ロヴェンテさんはこちらを見てあわてふためいていた。
「水浴び場は男女共有なのか?」
「ええ? そうですけど」
ロヴェンテさんは真っ赤になって、顔を手で隠している。
「そ、その、こんなはしたない恰好で男女が一緒なのはおかしいだろ‥」
はしたない? 私は自分の姿を確認する。
この世界の人と男子生徒にむやみな刺激を与えないため、水着は学校指定の水泳着だ。
肩は出していないし足は太ももまでカバーできるやつ。色気も素っ気もありゃしない。
「いくら子供でも男と女を分けないのはありえないぞ!」
この世界ではお風呂的な考えなのかな?
「お、俺はもう帰る」
ものすごいスピードで、ロヴェンテさんはその場を去って行った。
ちょっとくらい水に浸かって行けばいいのに。
「先生、悩殺しちゃったんじゃ」
矢島さんがあきれていた。
水着回でした!




