45 英語の勉強
この世界への順応だけど、上手くいく場合だけじゃない。
「ああくそ、字が難しすぎる」
後藤君が頭を抱えていた。新しい文字を知ってからふた月立つが、まだ読めない子も半数はいたから。
「とりあえず読めるようにはなろうね」
私の場合はこの世界の文字を書けるまでにもなって来た。
異世界の文字は難しい。
なぜなら私たちの耳にはこの世界の言葉が日本語として聞こえてくるからね。
字を覚えても、頭の中で音声化しないと日本語にならない。
書く場合はもっと大変で、完全に外国語である。
私や他数人のステータス画面に『他言語理解』のスキルが現れなければ不可能だっただろう。
「なんでウチにはそのスキル出ないのよ?」
『他言語理解』が出ない子は半数ほど。
「あ~もしかしてさあ」
間宮さんが頼りなげに手を上げた。
「ここの文字が読める子って、みんな英検の準2持っていない?」
私はハッとした。この世界の言葉は主語と動詞の組み合わせがメインで、文法は英語に近い。
生徒全員に確認を取ると、準2級を持つ子は全員文字が読めた。
そして文章をかけるようになった子はみな成績上位者。
「アタシ、英語だけは得意で準2は取ってたからさ。もしかしてって思ったんだけど当たりだっかも」
間宮さんの言葉に私もうなずく。なるほど、勉強はとっても大切なんだね。
「この世界の庶民はどれくらい読み書きできますか?」
ダンジョンでロヴェンテさんに出会ったので聞いてみる。
「ん? 自分の名が読めれば十分だろう。 ああ、値札も必要だな」
と言うことは、庶民は数字と自分の名前くらいしか読めないんだ。
「だったら後藤君が読み書きできなくても何とかなるのか」
思案する私を見てロヴェンテさんは目を丸くする。
「もしかして、ワタリは読み書きが出来るのか?」
「日本語ならもちろん。まーここの文字は簡単な文章しか書けませんけど」
すごいんだな、と感心されてしまう。
「それなら金持ちの店で働けるぞ」
「それも考えたんですけどね、マナーとかが面倒くさいんですよ。向こうの常識はこっちじゃ通じないですし」
「ああ‥」
人間の生息圏では、かける苦労が洞窟とは違った。
とりあえず、後藤君にはマンツーマンで教えてみる。
「これがアの字で続いてエ、イ、オ、ウになるでしょ。これと他の字を組み合わせるから、ローマ字みたいなものなんだよ」
「ローマ字か、なら分かる!」
他の子もそこまでは読めている。
発音さえわかれば、音が脳内で自動翻訳されるのだが‥文法がメチャクチャらしい。
「うーん、英語だったら説明できるんだけどね」
「じゃあ英語で教えればいいんじゃないですか? 読むだけなら英語力があれば大丈夫そうですし」
迷っていると和田さんがアドバイスをくれた。
「なるほど」
「と言うわけで英文法の説明をします」
「げえ」
使う教材は暁君の部屋からもらう。
「単語は読めるのですから、五文型だけさらえばいいでしょう」
生徒の顔が暗くなった。
「ワタセン、オレ、五文型? が1番訳分らないとこなんですけど」
後藤君が情けなさそうに訴えるから、私は慰めるように伝えた。
「うん、私もそうだったから知ってる」
高校の英語はボロボロだった私だけど、大学は教授の教え方と相性が良かったらしく、成績はAを取っていた。
ついでに塾のアルバイトで復習したから、専攻した世界史じゃなくてもそこそこは教えられる。
「それに教えるのは裏技と言うか邪道なやり方です」
授業を開始した。
「まず、英語は主語+動詞が基本形です」
主語は私とかあなたとか、文章の主人公になる部分。
「私が走るとか、彼は寝たとかね。だから1番基本のこの文型を、第1文型と呼んでいます」
「‥でも先生、例文が長いのもあるんですけど‥」
「それは取り外してもいいやつ。文が成り立つために絶対必要なのが主語と動詞だけってのが第1」
主語と動詞の後に前置詞、inやtoとかがあったら、それ以降は切り捨て可能と見てほしいと説明する。
副詞パターンもあるけど無視したわ。
この物語の教訓 「勉強は、異世界行っても必要です」
義弟の短編をアップした日に風邪をひいて、翌日に悪化しました。更新は時々にします。
インフルエンザは陰性だったのですが、発熱しない以外はインフルっぽいので安静にしますね。




