43 誘惑
私は数日置きで街と村を行き来することに決めた。
どうせ時間はかからないのだから。
村では畑を作ってみる。まくのはこの世界の野菜の種。
興味がある子はここで土にまみれるし、冒険が好きな子はダンジョンに探検に出かける。
時々町組と村組のメンバーを取りかえた。
多分、私たちの全体数を知る人はロヴェンテさんと冒険者ギルドの職員さんだけかな。
夜はかならずスマホで生徒たち全員と連絡だ。
誰1人欠けていないことを見届けないと眠れない。
資金はまだたっぷりあるので、生徒に渡す金額も増やしている。
しかし人混みにまぎれていては新しい問題も生まれる。
所持金を全額すられてしまった子が3人もいた。
「こんなにレベル上げしても盗まれるだなんて‥」
「ある意味勉強になったかな。みんなも気をつけてね」
こーゆーのは勉強代とでも言うのだろう。
海外に慣れない旅行客の気分だ。強くはしかれない。
私が村にいる時が一番危ない。
監視の目がないからか、街組が気をぬくのだ。
ロヴェンテさんが酔っぱらった鈴木君と後藤君を連れて宿に戻ったらしい。
スマホで知った時には、もう夕暮れだったが村を出てしまった。
たとえ村人に怪しまれても街に急ぐ。
「何をしたか正直に言うように」
尋問はもちろん洗脳を発動させて。
「こいつらが娼館をのぞいていたから、さすがに止めたぞ」
はぁ? 娼館?
ロヴェンテさんに告げ口されて、真っ赤な顔の鈴木君と後藤君は慌てた。
「違うんれすよ~先生、セクシーアーマーのお姉さんがいたからぁ、つい見ちゃっただけ」
「オレたち冒険者だって話したら、お姉さんダンジョンの同行もやっているって」
「そうそう、一緒に冒険しないって誘われただけなんれす~」
「店の中にはオレたち行かなかったんですよ」
2人は必死に言い訳をしている。
私が町を見た様子だと、セクシーな格好をしている女性はまちがいなく水商売の関係者だ。
「はあ‥。泊まるだけでも金がかかるのに、ダンジョンなんかに同伴したらとんでもなく高くつくんだぞ。金貨が袋ごと消える」
ロヴェンテさんがあきれている。
「知り合いが止めてくれて良かったわね」
私は生徒のピンチにめまいがした。
「はい、で、ロヴェンテさんが気晴らしならこっちにしとけって紹介してくれたお店に入ったらなぜかお酒が出て来ただけで」
「オレたち悪くないじゃないれすかぁ」
何してくれてるのロヴェンテさん。
「子供にお酒なんて飲ませないで下さい!」
「あ、あれは子供でも飲めるエールで‥」
そりゃあ私だってそんな文化があることは知っている。
生水が危険だからエールの方が安全なのだろう。
「それでもダメです、日本人はアルコール代謝が弱いんです! 子供用でもいけません!」
「悪い。もうしない」
ロヴェンテさんはアルコール代謝なんて言葉は知らないだろうが、意味は伝わったようだ。
言葉も表情からも反省が伝わってくる。
「もう飲みませんよ、苦かったから」
「そうれすよ~のどかわいていたから飲んだだけで、しょうがないじゃん」
伝わってこないのは男子2人から。
味の問題ではない。私は2人をにらみつけた。
「酒だって知らなかったんですよ」
「そんなのひと口ふくめば酒かどうかは分かるでしょう。へべれけになるまで飲むんじゃありません!」
「子供でも飲めるって言われたからぁ」
「な」
(ああもう。責任を人任せにして‥)
「たとえばね、修学旅行で18歳から飲酒可能な国に出かけたとして、引率の教師が生徒の飲酒を許すとでも?」
許すわけないだろう。
私はため息をついて、生徒全員に飲酒の禁止を申し渡した。
「ペナルティとして2人には資金を10日渡しません」
「げ」
「そんなぁ」
私は男子全員に向け、洗脳スキルを発動する。
「娼館なんて絶対に行っちゃダメですからね」
「イエス、マム!」
修学旅行であればもっと生徒の行動を規制できるのだが、今彼らを率いるのは私一人。
危険や誘惑から全て守ることはできないので、おのおのに対処を学ばせるしかなかった。
「お酒なんて飲まなくても臭いで分かるのに」
矢島さんがつぶやいている。
異世界物によくいる露出多めの女性冒険者は、夜のお店のお姉さんってことにしました。




