40 街のルール
私たちは階段を上がって冒険者ギルドに入る。
「こんにちは、今日の用はなんだい」
昨日の気の良さそうな男性が受け付けてくれる。
「昨日は疲れていてできなかったんですが、獲物の買取をお願いします」
私は袋から、怪物の角や牙を取り出した。
根本さんの収納魔法でしまっていたのを、佐藤さんが古くなったジャージの布をほどいて作ってくれた袋に移し替えたのだ。
「こ、これはすごい」
受付さんは目を丸くしている。
「これなら甲ランクの冒険者に匹敵しますよ」
いきなり敬語になった。
目の前に金貨や銀貨が積み上げられる。
「当分の生活費には困りませんね」
ニコニコ会話して受け取った。
家についてここでも聞いたが、冒険者は基本家を買えないらしい。
「乙ランクでようやく賃貸が認められるんです。資金があるなら月貸しの宿がよろしいかと」
「俺たちはそうしている」
なるほど。アニメで見る冒険者たちも家より宿に泊まっている方が多かったから、月貸しとかがあるのだろう。
役所の壁には掲示板があり、ランク別に依頼が張り付けてあった。
丁ランクの依頼はゴミ収集や街路整備など肉体労働が多い。
仕事の内容をメモし、誰なら可能か考える。
「月末は期限延長のため簡単な依頼から消えていく。丁ランクの内は早めに依頼をこなした方がいいぞ」
私はうなずいた。
丁ランクの人間なら毎月4回はギルドの仕事をこなさなければならない。
そうしてやっと翌月の滞在が許可されるのだ。
許可が下りなければ宿にも泊まれない。
問題でも起こそうものなら、容赦なく壁の外に追い出される。
街壁の外側には身分証を失効した流人が地べたに寝ていた。
ホームレスたちは街の人間から仕事をもらい、さらに格安でこき使われるのだそうだ。
(私たちも気をつけなくちゃ)
壁にはやってはいけないことの一覧表もあった。
盗みとか暴力は当たり前だが、森での狩りや木の伐採も禁止だとは。
「これは領主の財産だからですか?」
「ああ。ま、許可を取ればできるが、新入りは知らないだろうしな」
ちなみに落ちている枝や木の実は採集してかまわないらしい。
狩猟も、ウサギは1羽、鳩なら2羽まで許容されるが、それでも税金を取られるのだそうだ。
その後は間宮さんと一回町の外に出て畑や森の位置を確認し、適当に街壁へ転送陣を設置する。
「迎えに来たよ~問題はない?」
「はい、大丈夫です」
転送陣の出口をわざわざ街の外に作ったのは、待機組にも簡易身分証を作らせるため。
それがないと冒険者ギルドの手続きが面倒くさくなると、ロヴェンテさんに教わったからだ。
「多いな」
受付のおじさんにはあきれられてしまった。
宿に戻ると生徒全員に通達をした。
「これからはこの町でしばらく過ごします。色々勉強しなくてはいけないので、5人以上での自由行動を許可します」
「やった」
私の決断にみんな喜ぶ。
「しかしみんな知っているように、私たちのスキルはこの世界では異端です」
攻撃魔法や回復魔法、補助魔法は威力が強すぎるみたいだし、扉や食料に便利グッズを出す魔法は存在しない。
「私たちのスキルは便利すぎるから、知られたら誘拐されて権力者の言いなりにさせられる危険性があります」
全員に届くよう、能弁スキルをいかんなく発揮した。
「だから、扉や食べ物や服、物質を出すスキルは人前で禁止します。あ、氷とか土とかの魔法は別ね。あ、魔法を使う時は威力を抑えること」
みんなが集中している所できっちり洗脳もする。
「冒険者ギルドの依頼をこなしたり、買い物に出かけたり、資金は必要です。みんなには銀貨を1枚ずつ渡すので、それで明日1日過ごして下さい」
私は銀貨1枚が銅貨10枚で、その下にも半銅貨があることを伝える。
今日見た市場の様子では、銀貨はそれなりに価値があった。
物価が違いすぎて単純に日本円には換算できないが、食事くらいなら十分だろう。
「買い物をしたらいくらだったか覚えていて。記録するから」
ちなみに私のステータス画面には『他言語理解』のスキルを習得したと書いてあった。
読むだけで手に入れられるのは超便利。
狩猟と伐採は禁止ですが、あらかじめ許可証を発行してもらえば可能です。もちろん有料。
街の住人は経験則でグレーゾーンを知っていてそれなりにごまかしています。
村人は役人が来た時だけ守っている風を装います。
ロヴェンテの名前をロアルドと書いてしまったミスが多々ありました。すみません。
指摘して下さった方、ありがとうございます。
短編と同時進行で書いていたためですね。
ロを打って自動で変換されたのを気がつきませんでした。




