38 冒険者ギルドがある世界
町の外壁には大きな扉があり、門を入る前に身分を確認するらしい。
門番へロヴェンテさんが身分証を見せ、私たちを指さしていた。
「変わった格好をしているな。何人いる? 12人? 多いな」
門番から木札が渡される。何か書いてあり、数字っぽい。
「これが簡易身分証だ。6日以内に冒険者ギルドで登録するんだな」
「え、冒険者ギルドあるんだ!」
門番の言葉に男子が騒ぎだす。
(あるのか、そんなもの)
ゲームの世界では良く聞く言葉だが、現実に存在できるのだろうか?
史実の中世ヨーロッパにはもちろんない。
ギルドとは職業別の組合だ。手工業者のギルドとかはあるが、冒険者は職業ではない。
勇者みたいに呼び名なのだ。
採掘者ギルドならまだ分かるのだが、どうやって採算を取っているのだろう?
「俺も行くから、登録すればいいさ」
ロヴェンテさんに先導されて、門から街に入った。
独特の臭いが押し寄せる。人が大勢暮らしているせいだろう。
耐えられないレベルではない。
「臭い」
「なんでこんなに臭うの」
高校生にはキツイようだ。
石畳には馬の落とし物がそこらここらにあるのだから、しょうがないのだろう。
村に入った時のように、町の人からもジロジロ注目される。
まあ赤ジャージの集団は目立ちまくるよね。
大通り沿いの大きめの建物に入り、階段を上りに昇って3階へ。
「ここだな」
扉の先にはアニメとかでよく見るカウンターが。部屋はせまいけど。
「いらっしゃいませ、御用は?」
「彼らの身分証の登録だ」
「多いな。亡命か?」
「転移魔法の暴発らしい」
ここでも設定を伝える。
受付をしているのはまじめそうな中年の男性で、言葉遣いは乱雑だがいかにも事務員と言った風情。
彼に木札を見せられた。
「災難だったな。文字の読み書きはできるか?」
「この国のは無理です」
なぜか木札に書かれている言葉がなんとなく理解できるが、書くまではできないと思う。
「では読み上げるので、納得したらあんたのお国の言葉でこっちに署名を」
内容は短期滞在の許可と犯罪行為の禁止とギルドの依頼をこなす義務とかだ。
登録料の銀貨をはらい、渡された札に名前を書く。
読み方を教えると、係の人が札にルビを書きたしてくれる。
(書いてあることが読めるのはスキルかな)
手の甲を見ると文様は光っていた。
(後で確認しなきゃね)
「ではこのカードと水晶に血を一滴垂らして」
多分人体の情報を覚えさせるのか。
(DNA登録みたいだ)
「冒険者ギルドってどんな組織なんですか?」
針を指にさしながら私はたずねる。
「まあ流人を管理する機関よ。ギルドとは言っちゃいるが役所の一環だな。冒険者は‥流人や不法入国者では感じが悪すぎてそう呼んでいるだけだ」
領地へ不法に入ろうとするならず者が後を絶たなくなった時代に、領主が制度化したらしい。
この国の大きな領地では必ずあるのだとか。
「魔法契約で縛る代わりに町の一時的な居住権を認める制度だな」
この領地のために格安で仕事を請け負わせ、その見返りとして住むことを許しているらしい。
さすがにゲームと同じ組織ではなかった。
生徒たちも次々と登録する。数が多いから、書類の読み上げは省略された。
まあ隣で私が文面をチェックしているし大丈夫だろう。
しかし、女子の数人が針を刺して血を出すのを嫌がった。
「注射と同じだし、針は汚れないよう九十九さんにきれいにしてもらうから大丈夫だよ」
針の使いまわしによる感染症を心配しているのかと思ったらそうじゃなかった。
「む、無理です。自分で針を刺すなんて‥痛いんですよ!」
えっと‥そっち? もう高校生だよね、君たち。
そして地下の怪物たちと死闘をくり広げていた猛者だよね。
「戦闘より痛くないから‥ってか予防接種みたいなもんだし、気にしない!」
まさか‥こんなことで洗脳スキルを使うとは思わなかったよ。
どういう設定にしたら冒険者ギルドが成り立つのか、を考えてみました。
そして忘れがちな初期設定、新しいスキルを覚えると手の甲の紋様が光る、を再登場させています。




