37 街に向かいます
そして体力も回復し万端の状態で町へ向かう‥はずだった。
「先生、私ここで待っていちゃダメですか?」
矢島さんが真剣な顔で頼んで来るのよ。
「転送陣が使えるなら、私は拠点で待っていたいんです。街に行く途中で動けなくなったら、みんなを困らせちゃうし」
生徒を単独で置いて行くなど考えられない。だが彼女の体力では、確かにそれしかない。
「1人じゃ危ないから、誰か仲のいい子と‥」
と思ったが彼女と親しい子に戦闘巧者がいない。
「私も残ります!」
江崎さんが手を上げているが、彼女たちインフラ組が万が一にでも誘拐されたりしたら大事。
リスクは分散しなければ。
「じゃあ僕が残りますよ」
暁君が手を上げた。
「僕の家に泊まれば絶対防御で安全です」
「じゃ、私も。村の人には13人しかいないって思われていますよね。だったらそれ以外は残らなきゃ」
さすが賢者和田。理論的に説得してくれる。
「オレも残るか‥」
「わたしも」
年頃の男女だけにするなんて‥と一瞬頭をよぎったが、手を上げたメンバー全員に洗脳すればすむ話だったので気にしないことにした。
1日2日で解ける魔法じゃない、はず。
「じゃあお願い。向こうに着いたら、転移陣起動するから」
江崎さんは嫌がっても連れて行くけど。
「あなたは浮遊魔法が使えるし、疲れないじゃない」
「うう‥面倒くさい」
間宮さんに転送陣の入り口を設置してもらった。
和田さんには残留組の指揮を頼む。
町に行くなら、私とロヴェンテさん大人両方が必要だから。
「和田さん、みんなをお願い。何かあったらスマホに連絡してね。あと、初めて会う人は信用しないで欲しい。村の人たち、個人は悪い人じゃないけれど、集団になったらどうなるか分からないから」
まあみんな強いからそこまでの心配はしていないけどね。
人間は怖いのよ。和田さんも神妙にうなずいている。
そして生徒を11人連れ、出発する。
集落を出て細い道を歩いた。
アスファルトで舗装なんてことはないが、今まで暗い洞窟を動いていたのだ。
さくさく進めた。
あたり一面に空や森や畑が広がる。
解放感に包まれながら、私たちは歩き続けた。
「いでよお弁当! そしてお土産!」
少し開けた場所に出たので昼食にする。
唐揚げ弁当にカレー弁当、サンドイッチなどを大量に出し、好きな物を取ってもらう。
デザートはお土産屋さんのお饅頭。
そう、レベルアップをしまくった今の私は、東京駅で売っているものならお弁当だけじゃなくお土産のお菓子やキャラグッズまで出せるようになったのだ!
「相変わらずうまいな」
ロヴェンテさんは慣れて来ただろうに一々ほめてくれる。
私だっておいしい物を一緒に楽しむのは楽しい。
「疲れた時はあんこの甘みが体にしみるわ~」
「先生、オレチョコも欲しい」
「オッケー」
生徒の頼みで甘味をホイホイ出す。
「今日でワタリたちと別れるのか‥」
ロヴェンテさんは食べ終わるのが残念そうだ。
これで食べ収めのはずだから、感慨深くなっているのだろう。
全員が食べ終わった後は、漫喫の扉を出し、空の容器をゴミ箱にきちんと分別して捨てる。
MPは消費するし面倒くさいけど、異世界をプラスチックで汚染するわけにはいかないよね。
「町が見えて来たぞ」
ロヴェンテさんが指で示す。
畑の向こうにあるのは、教科書でおなじみの城塞都市だ。
(おお、中世ヨーロッパ風の世界だ‥)




