36 ショートカット作成
「ワタリ、どこに行くんだ?」
私が山を登ろうとしていると、ロヴェンテさんがついて来た。
「ああ、転送陣の設置場所を探したいんです。地下の拠点に向かえるように」
廃屋には設置しなかった。別にそこに作っても良かったのだが、ちょっとだけ訳がある。
「あの拠点を、完全に廃棄するのは惜しいんですよね。できたら好きな時に行き来したいんですよ」
「いざと言う時用か。なら俺も探す」
2人で草をかき分け進む。
ちなみに、むやみやたらに探している訳じゃない。
ステータス画面のマップを出しっぱなので、自分の周りはある程度マップに表示される。
目当ての場所もすぐ見つかった。
「この奥ですね」
ツタを押しのけると、ぽっかりと山肌に穴が空いている。
明らかに人の手で掘られた穴だ。
「この山が昔の鉱山だったら、ダンジョンの入り口以外にも坑道があると思ったんですよ」
大空洞が正規の坑道なら、村人が国に隠れてこっそり掘った坑道だってあるかもと推測したのだ。
人が1人通れるだけの幅をくぐる。中に気配は感じないが、慎重に奥へと進んだ。
内部は暗闇だったからステータス画面はしまわない。光源は常時出しておかなくちゃ。
そして日光が届かないせいか、外と違ってここはずいぶん涼しい。
「ダンジョンと違って冷えますね」
「ここは魔力の循環がないからな。寒くても魔物の心配はしなくてすむぞ」
ロヴェンテさんによると、今までいたダンジョンは魔力が満ちているから温度も心地よかったらしい。
(氷室とか鍾乳洞とか考えれば、温かいのが不思議だったんだな)
ここは鉱石を求めて掘り返し、期待外れだったか崩落したかで廃棄されたのだろう。
足元を虫が走る。
せまかった道が広がる。壁に明かりを置くためのくぼみがあった。
「ここにします」
分かりやすい目印の側に、出口を設置した。
「これで、地下の拠点と村を、好きなだけ往復できるんで」
地底の拠点に帰って園村さんと鈴木さんを呼ぶと、またヒンヤリした空間に戻る。
「土よ、硬化して空間を支えて」
土魔法の園村さんに崩落の危険を減らしてもらった。
「物質強化」
吟遊詩人の方の鈴木さんがさらに補助魔法をかけ、これで安全面は万全だ。
「このトンネルを抜けた先の家を借りたから」
生徒を全員外に出させ、借家まで案内する。
借家は村の中心から離れているから誰かに見られることはないだろう。
ま、見つかってもみんなジャージ姿だし、一度に全員出さなければ不審には思われないはず。
小さな家に十数人がぞろぞろ入って行く光景は何かシュールだ。
そりゃあ壁の中に設置した扉に入って行くのも同じくらい奇妙なのだろうが。
「みんな無事に地上に出られたので、今日はパーティーだよ!」
「やったあ」
後藤君と協力して、私はビュッフェを出す。
増えたMPを惜しげもなく使った。扉の中はもう有名ホテルの晩餐会だ。
「うっほ、寿司だ」
「ステーキ、ステーキ!」
「ケーキの種類がこんなに‥」
「ここが天界だったか‥」
生徒全員が感動しているそばで、ロヴェンテさんは天に召されそうな表情をしている。
家を借りた5日間、私たちは漫喫でダラダラし、村の周辺をぶらぶらした。
村人がパンや野菜だけじゃなく、パイやロースト肉なども売ってくれる。
田舎の素朴な食事を楽しんだ。
「これはこれでおいしいんだよね。また食べたいからレシピ教えてもらおうかな」
街に向かうことを考えると後ろ髪を引かれてしまうね。




