34 村
10話くらいはストックできました。
「ここから少し下ったところに村がある」
私たちがいるのは鉱山の中腹。
えぐり取られ、ぽっかりと空く地表の大穴を見渡す。今までは見上げるだけだった。
山道を下るのは大変だったが、傾斜はなだらかだし上り坂よりはマシ。
木立が切れ、畑が広がる。家も点在していた。
村に到着すると村人からジロジロ見られた。
「ゾロゾロ出てきたな」
「見慣れねえ。どこのモンだ」
すっごい警戒されている。まあしょうがないか。
冒険者の5人とはここでお別れだ。
私は彼らに向けて希望を告げた。
「私たちのスキルは、他言無用でお願いします。無用な混乱を避けたいので」
「ああ、分かった」
「了解。さすがに言えねえよな」
洗脳を発動しながらなので、5人ともすぐ了承してくれる。
「お前ら、先に帰ってくれ」
「おう」
しかしなぜか村の柵から出て坂を下っているのはジェイク・ドン・ミック・ガイの4人だけで、ロヴェンテさんは残っていた。
「町まではつき合うさ」
ちょっと照れながら彼は私に告げる。
「助かります」
この人が良い人なのは知っていたが、面倒見も良いらしい。
「ワタリ、こっちだ」
ロヴェンテさんに連れられ一軒の家に向かう。
「すまん、宿が欲しい。庭を借りていいか?」
中年の女性がエプロンで手をふきながら出てきた。
「何人だい?」
「13人分だ」
「そりゃ多いね。というか、あんたたちはどこから来たんだい? 山から下りて来たんだろうけど、村を通らずにダンジョンに入れたかねぇ」
うわ、ここの人たち村を通った人間全部を把握してるの? 赤ジャージの集団が目立つから?
てか田舎の情報伝達速度、早っ。
「転送魔法の暴発だろうな」
ロヴェンテさんがすごく分かりやすい言い訳をしてくれた。
「ああ、そりゃ災難だったね。家畜小屋で良ければ泊ってきな」
「テントもあるし、食料にも余裕がある。場所さえ貸してくれればいい」
「それなら裏の空き地があいてるよ。井戸はあそこ、便所はあっち。火をたく時は火事に気をつけておくれ」
トントン拍子に話が決まった。
「できたら空き家を貸してもらえますか、古くてもせまくても大丈夫です。できたら数泊したいんです」」
「じゃあ今夜だけ外で寝るんだね。使って良い所を村長に聞いてあげるよ」
農家のおかみさんに案内されて、家畜小屋の裏に向かう。
「料金は銅貨13枚さ」
私が銀貨を取り出すと、おかみさんは2枚をサッと取った。
「つりはないから。もうちょっと待っていておくれ、食事を出すよ。保存食だけじゃ味気ないだろ」
満足げなおかみさんが家に戻ると、ロヴェンテさんが貨幣の数え方を教えてくれる。
「これが銅貨10枚分でこっちが5枚分なんだ」
ぼったくられたのが銅貨2枚なら騒ぐほどじゃないね。
「じゃあ、今夜はここにテントを張ります」
私たちは野営の準備を始める。
「家を借りる必要はあったのか」
扉を出すだけならどこでもいいはずだから。しかし私は首を振った。
「まあ、拠点が欲しいんですよね。資金はありますし」
出張手当で出せる金額も増えていた。
ちょこちょこ使ってはいたが、『傭兵』ジョブの綸堂君がスキル『換金』を覚えてからは特に増える。
だからお金はかなりあるのだ。
町についたら、家を買ってもいいかもしれない。
テントの内側に、転送陣の出口を作る。
生徒たちはそこを通ってゾロゾロ拠点に戻って行った。
私はお弁当をどっさり出し、待機組に情報を伝える。
「え、外に出られたんですか?」
「うん、今村の空き地にテント張らせてもらってる。村の人に怪しまれないように、交代で出てくれない?」
「よろこんでー」
私は弁当を食べずにお風呂だけ入り、村側に戻る。
私と一緒に待機組が外出当番だ。珍しく矢島さんまでついて来た。
「え、テントで寝るの?」
「あーいえ、空だけ見て戻ります」
なるほど。彼女以外の追放組3人はテントで寝るらしい。
テントはギューギューづめになりそうだ。
チップ文化があるので多少のぼったくりは許容される世界です。




