33 脱出
翌日洞窟を登ると、天井と側面が大きくえぐられ大空洞に接する部分に通りかかった。
「あのてっぺんから下りて来たんだ」
「欲をかいて奥まで行かなきゃ良かったんだよな」
「今それを言うなって」
大空洞には人より大型の鳥が飛び交っている。
「あれに捕まらないことしか考えていなかったんだからな」
冒険者組に案内されて、分かれ道もスムーズに進めた。
ただひたすら登り坂が続き、傾斜もさらに急になる。天井が低くて四つん這いが必要になったりするし。
時々大空洞にそった通路を歩くが、その時は怪鳥との戦闘を覚悟する必要があった。空を見上げられるのは嬉しいけど、疲れは半端ない。
「も、もう無理です」
休憩時間もたっぷり取ったが、敵は怪鳥だけじゃなかった。
小型敵の討伐が大変になったのだ。
「うわ、ハチじゃん」
大空洞を住処として飛び回る巨大蜂は動きが素早すぎて超狙いづらい。
「ああ、奥の敵って強いけど動きが遅くて倒しやすかったんだ」
炎魔法と雷撃魔法で何とか対処する。
巨大トカゲだって、コモドオオトカゲくらいに小型化したけど俊敏だ。
MPは消費するが広範囲魔法でなんとか乗り切る。
「魔物除けの聖水とか欲しい‥」
周りの全員がうなずいた。
おかげで? 怪鳥との戦闘には慣れてきた。
「この鳥、食べられますか?」
「知らん」
食用鑑定の後藤君がいないと、敵を倒しても役に立てられない。
とりあえず放置していれば他の魔物がガツガツきれいに片付けていた。
(後で後藤君に見てもらわなきゃ)
たくましいモモ肉や胸肉はとってもおいしそうなのよ。
地上に出るまでにはもう2泊必要だった。
最短距離で進めればいいのだが、天井が崩落して遠回りを余儀なくされることが何回もあるから。
「は~私たちのスキル、おかしいところないですか?」
「まあ、威力がすごいこと以外は大丈夫だ」
夜中の定期報告も続いている。
「それより、体力的に大変そうだな」
「そうなんですよ。もうボロボロで」
テントに入るたびに転送陣を起動させ、拠点に戻ってごちそうを食べ栄養ドリンクを飲んでいるのだが‥休みたい。
「明日は地上だ。街までしばらく歩くぞ、たどり着けそうか?」
「無理でしょうね。外に出たら転送陣の出口を作りたいので、街の方角だけ教えてください。しばらくはゆっくりしますよ」
「そうか」
ロヴェンテさんは虚空を見つめ考えこんでいる。
「もう寝ます。おやすみなさい」
翌朝、体はバキバキだが地上への期待が大きかったのだろう、目がスンナリさめた。
「さあ、今日こそ地上だぞ」
私はサービスの意味をこめて、給食コッペパンを出す。
「お、今日のパンはやわらかいな」
「レベルが上がったのかもしれませんね」
自分がマズパンから解放されたかっただけかもしれない‥。
私たちに逆さ円錐形の最上部が見えてきた。
通路はどんどん明るくなり、大空洞へ接する個所では空が大きく広がる。もう全員のテンションが爆上がり。
空にはうっすら雲がかかっていて、風で形が変わる。
洞窟の天井画では雲の形は変わることがないし、太陽を見上げてもまぶしくなかった。
「おお外だ!」
「出るのは向こうの横穴からだぞ。そっちは崩れやすい」
指でしめされた先へ、運動部男子は走り出している。
もう強い敵は現れない。
小型の虫や獣は私たちを見ると逃げて行っちゃうから安全だ。
私はいつものペースでゆっくり進む。
トンネルの先に光が見えた。もう道案内は必要ないだろう。
直射日光に目を細めた。
周りでは仰向けに倒れこむ子や座りこんでいる子、辺りを見渡して歓声を上げている子と反応は様々。
私も万感の思いをこめて空と地平線を見渡す。
遮る物のない蒼天に目が潤んだ。
「本物の、空だ」
隣りで半藤さんが泣いていた。
これにて1章完結です。
2章はまだ散らかりすぎているので、まとまったら再開します。
9月の頭くらいになる予定です。




