32 地底の牢獄
「俺も‥あんたたちのスキルは隠しておいた方がいいと思う」
薄暗い中でロアルドさんがボソッとつぶやく。
「あいつら、悪い奴らじゃないんだが、誘惑は少ない方がいいからな」
大きな体を寄せられるのはちょっと怖いけど、彼の言葉はもっともだ。
「情報が悪党に知られたら、1人1人個別に誘拐されて売り払われるだろう」
「う‥そうなんですね」
なんとなく危険性を感じていたが、私が思っていたより大事になりそうだ。
「ジェイクたちはあんたの生徒たちの顔を覚えていない。時々交代してもいいかもな」
「ああ、確かにそうですね」
いきなり同じ格好の外国人が集団でいたら、顔を覚えるまでに時間はかかるだろう。
「それで、だな。秘密にするため夜は2人で話し合った方がいいと思うんだが、どうだ?」
「そうですね。了解です」
「なんだよ、2人でよろしくやっていたのかよ」
テントに戻ったら冷やかされてしまった。
訂正しようとしかけて言いよどむ。
(その設定にしていた方が2人きりになりやすいか)
「先生、もう大丈夫です」
鈴木君に合図されたので男子テントの外側から転送陣の出口を解除する。
女子テントに戻ると、また転送陣を張り直し、中村さんと園村さんを交代させた。
朝が来る。メンバーが入れ替わっていることには気づかれていない。
大空洞は傾斜が急だし所々崩れているので、その周囲のトンネルを抜けるらしい。
トンネルも狭くなっているので、背の高い冒険者たちは時々誰かが頭をぶつける。
「く、あとちょっとなんだよ」
そう、しばらく上り坂を歩いていくと、地面が歩きやすくなってきた。天井も高く、前より格段に歩きやすい。
そして壁も天井も、ボロボロだが木材で補強してある。
「ここには人の手が入っているんですね」
ロヴェンテさんに話しかけると軽くうなずかれた。
「ああ、ここは昔の廃坑だ。はるか昔は囚人が集められ、採掘を強制されたとか」
「今でも冒険者には見えねえ白骨が見つかるよな」
「あーだから地下牢って呼ばれるのか」
納得した。
「なになに? ダンジョンの意味?」
鈴木君が食いついて来た。
「ダンジョンって、直訳すると土牢とか地下牢って意味なのよ」
「へー、ワタセン物知りじゃん」
オタクワードは時々調べるからね。
鉱山の一部が、竜の巣とつながってしまったのだろう。
「いまだに魔晶石なら採掘が可能だから、俺たち冒険者を呼びよせるって訳だ」
どうやら冒険者のお仕事は、魔物討伐より採掘の方が人気らしかった。
「命をかけて戦うなんて、誰もやりたがらねえさ」
ジェイクさんがつぶやく。
足元は歩きやすくなったが、出発から2時間も歩けばバテル子も出てきた。
ずっと上り坂なのだ。
「せ、先生、ここら辺に拠点作って、今日はもう休みませんか? 歩きっぱなしじゃないですか」
園村さんが泣き言を言っている。
「そうだよね」
以前より坂の傾斜が急である。山登りを2時間もやっていたら疲れるのだ。
「あと1時間は無理かな‥それと、食事の時はみんなにまぎれて目立たないようにしてね」
「ふあい」
泣きそうな園村さんに無理を言った。
夜はお弁当スキルを発動させる。
「うんめえ、あんた、俺たちとずっと冒険しねえか?」
メニューは変えてみた。出せるのはランダムってことにして。
しかしそんなことはささいなようで、めっちゃ勧誘してくる。
「仲間がしつこくてすまない」
生徒をこっそり風呂に入れ、メンバーを男女1人ずつ交代させた後、ロヴェンテさんに誘われ2人きりに。
「気にしていませんよ」
「それだけじゃない。その、俺とつき合っているような誤解もさせてしまったろ?」
私は笑った。
「それも全然気にしていませんって。ロヴェンテさんみたいなイケメンと噂になるなんて光栄なくらいですよ」
イケメンは言い過ぎかもしれないが、きりっと引きしまった表情はカッコいいのだよ。
「いけ? まあ俺も、ずっとワタリといたい気持ちはある‥」
「あははは、食事目当てなのがバレバレですよ~」
みんなの所に戻ったが、ロヴェンテさんが気落ちして見えるのは‥気のせいかもね☆
ダンジョンの語源は塔らしいですね。
古い塔が牢として使われたことから、牢屋の意味になったそうです。




