30 未知との遭遇
12時間寝るとすっきりしますね。
敵が少し小型になったかも、と認識しだした頃。
「に、人間⁉ お前らどこから来たんだ?」
私たちは甲冑に身を固めた男たちと遭遇したのだ。
4人の男たちは動揺を隠せないが、それはこちらも同じこと。
(動いてしゃべる鎧‥じゃない! うわぁ、知らない人間だぁ!)
挙動不審になってしまうよ。
不安でキョロキョロする私たちの中で、ロアルドさんだけが冷静だった。
「ジェイク、俺だ。ロアルドだ」
どうやら彼の知り合いらしい。
「お、お前生きていたのか!」
ガっと肩をつかみ合うロアルドさんと知り合いの男。
「こちらの方々が俺を助けてくれた。彼らは女神によって召喚された異世界人らしい」
「イセカイジン? 良く分からんが、感謝するぜ。俺はジェイクだ。こっちは仲間のドン、ミック、ガイ」
「よろしく」
「ロヴェンテを助けてくれたんだな、ありがたい」
いきなり4人も情報が増えると混乱する。
地下に引きこもっていたせいでコミュ力が落ちているな、自分。
「お前たち、どうしてここに?」
「救助ため探しに来たんだよ」
男たちは気楽に話しているが、こっちはそうも行かない。
「初めまして、私は渡里と申します。こっちは私の生徒でして、この世界のことは良く分からないのでよろしくお願いします」
外面フル稼働であいさつをすませた。
「ずいぶん変な格好だなあ」
ジロジロ見られたのは、全員がジャージに革防具だからか?
「おい、失礼だろ。帰還のための転送陣はあるか?」
「あるが、この人数では使えんぞ」
使用制限があるのか。
「私たちはこのまま上層へ向かいます。地下には慣れていますし、敵もこれから弱くなるのでしょう?」
『宿』スキルがあれば宿泊は可能だが、時々は拠点に戻りたい。
しかし迷う。
(ロヴェンテさんはともかく、他の人に拠点のこと知られたくないな)
「みなさんは、先に帰ってよろしいですよ。私たちだけでも大丈夫ですから」
「そ、それは危ない。道を知らないんだろ? 俺だけでもつき合おう」
ロヴェンテさんは律儀に申し出てくれるが、そうすると他の4人もついて来るのだ。
「ロヴェンテがそう言うなら、俺らもつき合うぜ」
「そうだな女子供をダンジョンに置き去りにはしねえよ」
「転送陣使うのはもったいないし、歩いて戻れるのならそうするか」
どうも、転送陣は高価なのに使い捨てらしい。
全員で歩き出すが、遅れるメンバーは出て来る。
私は後方につき、彼らの様子を見守った。
この大人数では攻撃的な獣はほとんど出なかった。出ても敵ではない。
足場は悪いが、比較的安全に進める。
「先生、もう休みたいです」
中村さんが音を上げた。予想通りだ、私もそろそろ休みたかったから。
「じゃあ休もうか」
「おいおい、まだ先は長いぜ」
「無理はさせたくないの」
ジェイク、と言った男に私は説明する。
「この程度でへばる奴なんて、やっぱりガキだな。なんでダンジョンなんかにいるんだよ」
「まあ女神さまの思し召しですね」
「休み休み行く方が疲れるぞ。置いて行かれたくなかったら無理にでも歩け」
イラっとした。
休みが必要なタイミングは人によって違う。根性論だけでは人は動かない。
「休みながら行くのが嫌でしたら、置いて行って結構ですよ」
別にこっちは時間をかけて探索したっていいのだ。拠点にこっそり戻れるならその方がいい。
「俺は残る。お前たちだけで先に行け」
「‥なら俺たちも休むか」
ロヴェンテさんが説得してくれたから休憩タイムだ。
「スキル発動、お弁当」
「な、何を出した」
私は彼らから見えない角度で弁当を人数分出す。
「好きなのを取ってね。あ、食物アレルギーとかないですよね」
「ど、どこにそんな物しまってあったんだ」
まあ初めて見たら動揺するよね。
私が出した弁当をおそるおそる口にする冒険者たち。
「な、なんだこりゃあ」
「うま、パンが柔らかい」
新メンバーの4人がカツサンドに夢中になっている間、私は鈴木君に小声で話す。
「私たちのスキルはできるだけ隠したいの。物陰でキャンプセットを出してくれない? 魔晶石の袋を空にしておけば、そこに入れて持って来たって思わせられるから」
ちょこっと洗脳も使ったから、鈴木君はとっても素直に動いている。
中学生の遠足で、「そんな距離歩けるわけないじゃん!」と思っていたら予想通り動けなくなりました。
計画って普通レベルの子に合わせるから、虚弱タイプは無理なんですよ。
初めから動けなくなることを想定して欲しいですね。
それでも学校はしょうがないとして、家族旅行で登山に連れ出された時はちょっと死の恐怖を味わいましたよ。
親は子供の体力甘く見過ぎ。




