29 明日できることは今日しない
「やっと安全圏だよ」
見慣れた場所に戻れたのは結局10日後。
予想はしていたが、味方に強キャラが少ないからか予想より時間がかかってしまった。
戦闘がスムーズに行けば一週間で帰れると思っていたのだが。
大体、地図があるからって、薄暗い洞窟内を移動するのは時間がかかる。
足元が不安定な場所もあるのだ。待機組と合流した時には、私たちはもうボロボロになっていた
「ただいま~」
拠点に戻ったら、すぐ探索の続き‥ではなくダラダラしまくる。
え、だって強敵ゾーンを突破したんだよ。集中力なんて切れたよ。すっからかんだよ。
間宮さんが設置してくれた転送陣があるので、上層へ向かうことなら簡単になっていた。それでも次のことはきちんと態勢を整えてから考えたいわ。
探索を急ぐ理由はない。頑張るのは明日からでいいのだ。
明日から、と言いながら一週間はしっかり休んだ。
いつも厳しいロヴェンテさんだって訓練を強いない。
後藤君の調理スキルも上がっていて、手作りのシチューをごちそうしてくれた。
ロヴェンテさんと間宮さんを含む数人が探索の続きをやってくれているから、危険地帯からの脱出も時間の問題らしい。
後、ダラダラしながらステータス画面の確認をしたら、私のスキルに転送陣が加わっていた。
(今さらかい!)
「地竜から逃げる時使えたら便利だったのに」
ついグチが出ちゃうよ。
まあ‥複数個所に設置できると思えばいいか。
物事はポジティブにとらえよう。
体調を万全にしてから、探索の再開だ。
「さ、行こうか」
転送陣が光る。
たどり着いた先の洞窟は土の色とかが見慣れない。
(地層が変わったんだ。新しいゾーンに出発よ)
それだけの違いなのに気分が浮き立つ。
ロヴェンテさんと他の生徒がそれなりに探検ずみの場所には以前付けたマークがある。地図を見ながらそれをたどり、新しい通路を探した。
怪物はまだ強いがチームに10人もいれば撃退できる。
ステータス画面のマップを紙に写し取り、この階層の知見を深めた。
「ここの魔晶石が高く売れる」
ロヴェンテさんが教えてくれたから、光る鉱石を土壁から掘り出す。ずっしり重いリュックをしょって帰っては、収納魔法が使える根本さんにしまってもらった。
洞窟内を探索し、地図を作り、鉱石を集める冒険生活。
獲物を狩り、解体し、肉を調理し、皮をなめす狩猟生活。
畑を耕し、水をまき、虫を駆除し、収穫する農耕生活。
スローライフはのんびりなどできない。忙しく時は過ぎて行った。
「ここより上に行けば魔物も小型化するはずだ」
ロヴェンテさんはホッとした顔で教えてくれた。
「俺が落ちた崖がこっちにある。浮遊魔法がなければ死ぬからな、気をつけろ」
「ショートカットとして使うには深すぎますね」
下から見た時はビル10階分以上の高さがあると思った。上から見下ろすと、まっ暗で底が見えない。
「ここが通れれば、地竜ゾーンをスルーできるんですけどね」
「そううまい話はないだろう」
しょうがない。
「ここから先なら、なんとか土地勘もある。脱出が簡単になるぞ」
お弁当を食べながらロヴェンテさんが喜んでいた。
私はちょっとウキウキして、気を引きしめる。
(つまり、なじんだ生活とももうすぐさよならなんだよね。地上なんて、ほぼ新しい世界だ。どんな風なんだろう?)
聖剣を探すゲームやアトリエで薬を作るゲームを思いうかべた。
(まあ現実はそこまで気楽じゃないんだから。でも楽しみっちゃ楽しみなんだよね。ま、まだ登り続けるのが大変だろうけど)
いつものような探索がしばらくは続くと、私は予想していた。
まさかその道の途中で何かあるなんて、思ってもいなかったんだ。
体調不良ですので、更新が安定しません。
嵐で頭痛が悪化し、漢方薬の副作用でお腹を壊し、ちょこっと涼しくなったので風邪を引いて不眠に陥っているだけなのですよ。
それでも読み続けて下さる方に、感謝!




