28 逃走
そしていざ決戦の日。
今日は走りが早いメンバーと、魔力が多めのメンバーを集めてきている。
『また来たのか。こりない奴らだ』
今日も私は巨大な地竜に頭を下げた。
「また魔力を進呈します。ですので、この前と同じだけの猶予をいただけませんか」
『ふむ‥好きにしろ』
私たちは地に手をつき、前回と同じように魔力をそそぐ。
『もう構わぬぞ。鼓動を100、だったな』
竜があくびをしている内に、江崎さんは間宮さんを浮かせる。
ロヴェンテさんが指をさした方の地面を、園村さんができる限りならす。
「ロヴェンテさんたちと走って! 確実な安全圏まで。できるね!」
間宮さんはうなずいた。
「じゃあ、先行よろしく」
ロヴェンテさん・坂本君(勇者)・西村さん(バスケ部)・土井君(陸上部)に守られながら間宮さんが走る。
「じゃあこっちも、退却始め!」
私たちは全速力で元来た道を戻った。
江崎さんも必死だ。
前回は間宮さんが設置した転送陣まで戻れば良いだけだったが、今回は違う。
間宮さんの転送陣はA点とB点をつなげる技だ。
いつもは拠点に入り口を設置して行けるところまで行き出口を設置し、そこから戻っていた。
次の時は入り口を通った後でその転送陣を解除し、探索後にまた出口を設置し戻る、をくり返していたのだ。
今日はここに来るまでは拠点の入り口が使えたが、もう出口は解除してある。
先行組は無事安全圏にまでたどり着ければ出口を設置してすぐ帰れるが、帰還組の私たちは違う。
最短距離で下層に向かうが、直径5メートルの空洞には地竜がやってくることも可能なのだ。
「下りても止まるな。どこまでなら見逃すのか分からないんだから!」
それなりに鍛えてはいるけれど、武器や防具をつけたままの持久走だ。
江崎さんの息はもう切れている。
「江崎さん、自分を浮かせられる?」
彼女には魔法を使わせるため、魔力を温存させていたはず。
浮いた江崎さんは賢者和田さんと手をつながせた。
「引っぱってもらって」
ストップウォッチを確認する。まだ3分くらいだ。
(5分くらいは行けるんだよね。竜の鼓動が本当にゆっくりかは知らないけど‥確か体の大きさに比例して生き物は鼓動もゆっくりになるんだったか)
走りながら思い出す。
上層には全員で走っても行けたかもしれない。でも博打は嫌だ。
私の目的は生徒全員を安全な場所まで連れて行くこと。
怪物にも出会うが、無視して全力で回避した。
必死に走る集団は、何かから逃げているのが明白なので魔物もあまり襲わないっぽい。
どうしても襲いかかる敵はいたが、手作り武器で何とか撃退する。
襲撃を全部はかわせないが、脳内麻薬が働きまくっているせいか、ケガをしても足は止まらない。
「はあはあ、もう無理」
暁君が引きこもりを発動させたので、全員を回収した。
「何分走った?」
「10分くらい」
逃げ切れたかどうかは分からないが、全員ぐったり倒れこんだ。回復呪文をかけるのも早々に。
空腹で目をさます。
汗くさいまま眠ってしまったが、MPは回復していたからお弁当を出した。
手作りなんて気は一切おきない。
みんなで朝食をつめこみ、交代でシャワーをあびる。
万全の状態にしてから扉を開くと、別に地竜も怪物も何もいなかった。私たちは下層に向かって歩き出す。
「転送陣で帰れないのは厄介だよね」
賢者の和田さんがこぼす。
まったくだ、自力で戻らなければならないのは面倒くさい。
数時間ごとに休憩を取らせようと計画を立てていたらスマホが鳴った。
『先生、そっちは無事?』
間宮さんの声だ。
「なんとか無事。そっちは」
『無事っす。昨日は拠点に戻ってすぐ連絡しようとしたんですが、みんな出なくて』
「そっか、良かった。私たちは徒歩で拠点に帰るから、ちょっと時間がかかるわ」
ボロボロになりながら、地上への道は確保できた。
最低限の戦闘とたっぷりの休憩をくり返しながら、少しずつ元の位置へと移動する。
ホテルと暁家にメンバーを分け、休憩は十分に取らせた。
江崎さんがいるので、マンガ喫茶でコンポタとソフトクリームを堪能できるのは嬉しいのよね。




