27 特訓 2
「嫌に決まってるじゃないですかぁ!」
本人は嫌がりまくっているが、江崎さんの走力を強化する計画が開始だ。
「いやいや、浮かせた後はすぐ逃げられるし」
「つまり走らなきゃいけないじゃないですか!」
私はにっこりと彼女に洗脳をかける。
「走る練習、しようね」
彼女だけにつらい思いをさせられない。私も一緒に走った。
暁君も巻きぞえに。
「僕はいらなくないですか?」
「君は絶対必要でしょう」
泣きそうな彼にも心を鬼にして特訓させる。
もし地竜に襲われた場合、彼さえいてくれれば籠城が可能になるのだから。
まずは平らなでまっすぐな道で練習し、その後は洞窟内のごつごつした岩肌をできるだけハイペースで走るのだ。全力疾走なんて、いつぶりだろう。
「も、もう無理。さすがに辛すぎ」
踏みつけた虫に足を取られて転んだり、筋肉痛で死にそうになったり。
「先生、アミノ酸飲料です」
「回復魔法は終わりました。また走れますよ!」
魔法のおかげでケガをしても休めるのはその日だけ。
「タ、タイムどう?」
「少しマシになりましたよ」
江崎さんも暁君も私も、400メートルくらいなら安定した速さで走れるようになる。
「次は安定して長距離を走る練習か」
竜を相手に逃げるのだ。どこまで走れば大丈夫なのかはさっぱり分からない。
「とりあえず、1kmから1.5kmは必要かな」
運動部と話し合って結論づける。あんまり根拠はないが、とりあえずの目標として数値があると落ち着くのだよね。
「高校生女子の平均は1kmで5分くらいか」
ネットで調べるが、それは平たんな道を走った場合。
「危険だけど、リスクを減らそう」
私は生徒数名を連れ、転送陣をくぐる。
地竜に襲われる危険性はあるから、危険察知用に探索持ちの鈴木君は一緒だ。
「ここの地面をならして欲しいんだ。逃げやすいようにね」
幅は1mとせまくていい。
全力ダッシュができさえすれば。
土魔法の園村さんと全属性魔法持ちの和田さんがメインで、転送陣から前後100メートルずつ道を造成してもらう。
私は戦闘メンバーと一緒に、襲って来る魔物の撃退と、ルートチェック。
「竜は動いていません。でも大型の獣が近づいています」
鈴木君はマップを常に気にしながら、通常敵の対処も行っていた。
「これで、逃げやすくはなったね。次は、」
間宮さんに頼んで転送陣の出口位置を変えてもらう。
「500mほど後退して、そのあたりまで舗装するんだ」
本当は拠点まで全部平らにしたいが、土魔法ができるのは2人だけ。
敵が強すぎるから人員をさくこともできない。人力での舗装はあきらめた。
とにかく逃げるために最低必要な1kmを整備しなければ。
「はい、じゃあ200メートル走を5本ね」
全力で走れる距離を増やすため、私は生徒を走らせる。
運動部じゃない勢もそれなりに走れるようになってきた。
成績最下位にいるのが江崎さんと、私。
「先生―頑張れー」
運動神経バッチリ組がのんきに私をからかってくる。
「うるさい、ハアハアハア」
食事もタンパク質多めを心がけた。
具体的にはスキルで出したお弁当の肉をおかずに、狩りで獲ってきた肉を食べること。
「ご飯を、米の飯を、もっと」
「ダメです」
私が出したお弁当なのに、すぐ取り上げられご飯が半分に減らされるのだ。
「こっちはオレたちスタッフがおいしくいただくんで、気にしないで下さいっす」
くそ、後藤君め。地竜と対峙しなくてすむから他人事だな。
いつか復讐してやる。宿題を多めに出すとか。
しかしまあ我慢生活のおかげだろう、私の大腿筋とハムストリング筋はパンパンになった。
なんとかギリギリ、1kmを5分ちょいで走れるようになる。
30手前の体にしては頑張ったと思うぞ。自分で自分をほめてあげよう‥ご褒美は甘い物で‥
お腹周りの余分なお肉が、そこまで減らないのは解せんがな。




