3 情報収集
「とにかく君たち3人はスキルを使って色々試すように」
外れスキルは絶対役に立つはずなんだよ。
そして1軍の強キャラを半分に分け、2軍から回復魔法や補助魔法の使い手を混ぜる。
「こっちはA班、付近の探索をすること。こっちのB班は残ってみんなを守って」
「先生は?」
「私は残る組」
「ずりい」
「これは必要なことなの」
私はこのクラスのリーダーだ。指揮官は本隊から離れてはいけない。
斥候は2番手に任せる仕事だと『ツバメ号とアマゾン号』に書いてあった。
「探索組が迷わないように、高橋さんは定期的に風魔法を送って。A班は風が吹いてくる方に戻ること」
そうすれば帰る方向も分かりやすいだろう。
探索組は出発したが、残った全員は不安を隠せていない。
「こっちが正解って、本当なんですか?」
「先生のせいですからね、こんなところに落とされるなんて」
生徒からは恨みがましくにらまれてしまった。
(はあ、私だって異世界に召喚されてすぐ最適解は分からないよ。こんなに大変なのに無給だなんて。せめて出してよ出張手当!)
手の甲の文様が光った。
不審に思ってステータス画面を起動させれば『新スキルを獲得しました』と表示されている。
新しく手に入れたスキルは『出張手当』だった。
さっそく唱えたら、手の中に硬貨が数枚出現する。
「それってこの世界のお金ですよね」
「今出せても使えないじゃん」
うん。町に出られさえすれば役に立つのにね。
それでも収穫は大きい。
「ねえ聞いて」
スキル『能弁』を意識しながら生徒に疑問を投げかけた。
「もしかして、欲しいって願ったスキルが手に入るかもしれない」
生徒たちはそこらへんでアロハロ波とかガムガムのとか叫ぶが、何も起きない。
他にも発動条件があるのだろうか?
私は考えながらウロウロ歩き回る。
プチ。足裏で嫌な音が。恐る恐る足元を照らすと虫がつぶれていた。
ダンゴムシやグソクムシみたいなやつ。
「うげ」
後ろに下がったらまたプチプチ音が‥
最悪な気分になったが、同時に目はステータス画面の変化をとらえた。
経験値が増えているのだ!
(もしかして‥)
足元を確認して虫をつぶすと、画面の経験値が1増えていた。
「うお、虫殺しただけで経験値が上がった」
この虫、あのゲームに出て来るスライム的な存在だ。
「嫌ァ、そんなんで経験値なんて欲しくない!」
女子が騒いでいるが、私は無視してスキル洗脳を発動させたった。
「みんなー、経験値稼ごうね!」
斥候組が帰ってくるまでチマチマと経験値を貯める。
「先生、僕のスキルがレベルアップしました」
暁君が扉から体を出し、スキルを解除し扉を消す。
「一回解除しないといけないらしくて」
もう一度彼がスキルを発動させると、現れた扉が2枚に増えている。
「あ、やっぱり」
暁君が新しい扉に入って出て来ると、水の流れる音がした
それはトイレのドアだったのだ!
「1名だけなら自分以外を入れられるらしいです」
暁君がステータス画面を読み取る。
つまり順番であれば全員が使用可能なのだ。
「うおおお、インフラ確保!」
私は歓喜した。
穴を掘っただけのトイレは現代人にはキッツいのだよ。
「スキルを使っていた方がレベルアップしやすいんじゃないですか」
矢島さんが錠剤を作り出しながらつぶやく。
「整腸剤を出してたら胃薬も出せました」
戦闘系のキャラを除いた子たちにMPを使い切るまでスキルを練習させた。
「ああ腹減った」
後藤君がお腹をかかえている。
食料調達は必須課題だ。
「誰か食べ物系のスキルは出せない?」
そこまで都合よくは行かないらしい。
「死ぬかと思った‥」
1時間ほどして斥候組のA班が戻って来た。
「モンスターには遭遇するわ、道に迷うわ、散々でしたよ~」
「ステータス画面でマッピングできるようになって、やっと戻れました」
おおゲームっぽい。
「食べられそうな物あった?」
私の質問に勇者の坂本君は目をそらしている。
「え‥モンスターは倒したんですけど、その‥」
「死体が気持ち悪くて‥」
賢者の和田さんと剣士の日暮君がぼそぼそ教えてくれた。
(そりゃ一介の高校生が死骸さばいて肉にするとか無理じゃん)
倒して即素材に変換はしてくれない世界らしい。
「じゃあ、新しいスキルがあったら教えて」
私はみんなの情報をノートに書きとる。
文房具は暁君の部屋から持ってきてもらった。
みんながそろったら食事だ。
食べるのは固いパンと水だけ。
渡されたパンはボソボソしていてひたすらマズかった。
大した量を食べていないのにあごが疲れる。
(トイレがあるのは助かるけれど、寝る場所がないのもキツイね)
みんな体育すわりをして数人ずつ固まって寝た。
暁君だけは自室のベッドだ。うらやましい。
見つけてくれた20人ほどの読者様、ありがとうございます。




