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外れスキルなどない! オタク担任は洗脳してでも生徒全員生還を目指す  作者: ノーネアユミ


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2/7

2 深淵に落とされたようです

「なんでオレが」

「せめて水と食料は下さい!」

「悪いけれど、あなたたちはいらないのよね。ゴミにあげる物は何もないの」


 女は泣きそうな彼らの体を浮かし、1番はじっこの魔法陣にぶん投げる。



「待ってください。私が面倒を見ますので、一緒にいさせて下さい」


 私は大声を上げた。

 もしここが異世界でも私には生徒を守る責任がある。


「この子らを助けたいのなら、あなたも一緒に行って構わなくてよ」

「人数制限はないんですか?」


 私は問い続ける。この子たちを助けるため、そして自分が生き延びるため、情報が欲しい。


「そうね、他に助けたい方は何名でも深淵に送って差し上げるわ」



 よし、何人でも行けるんだな。

 私は生徒たちに向かってスキル洗脳を発動させた。


「みんな、あの魔法陣にのりなさい」


 初めてだったけど成功したようだ。1軍の子3人を除き、ほとんどが従ったから。

 私も同じ魔法陣に乗る。



「は、そんなゴミを助けるため、その他大勢を犠牲にするとは。何て愚かな。導く者として失格ですよ」


 自称女神はあざ笑っている。

 本当に分かっていない奴。

 私がどれだけ異世界小説・マンガ・アニメを漁ってきたと思う?



「犠牲? このパターンでは外れスキルが一番の当たりなんだよ! みんな一緒に行こうぜ、このルートが実は正解だぁ!」


 私の言葉に残った数人もこちらに向かう。



「おやめなさい! 死ぬ気ですか」


 女は美しい顔をゆがめて騒いだ。



(今の子供は正解って言葉に弱いんだよ、馬鹿め)


 ついでに日本人はみんなと外れることを極端に嫌う。

 たとえどんなに優秀でもまだ高校生なのだ。知らない世界で心細い状態だったら、少数派として残されたくはないだろう。


 私は自称女神に向かい合った。


「このままどこにでも送れよ。序盤だけハードモードで後はヌルゲーにしてやるから」


 女は「ちっ」と舌打ちして手をかざす。


 魔法陣が光った。




 気がつくと真っ暗で何も見えない。息も苦しい。


「先生、ここどこなんですか?」


 周りに生徒たちがいることは声で分かる。


「ステータスオープン」


 とりあえず唱えてみた。

 ボワンとした画面に照らされ、みんなの顔が見える。


「やっぱり。これ明かりの代わりになるね」


 MPを確認するが消費する様子はない。


「明かりの魔法を使うより省エネっぽいよ」


 みんな次々とステータス画面を出し、あたりの様子も分かってくる。



 ここは洞窟の中のようだ。空気が重い。


「風魔法が使える子、風通し良くできる?」


 自称女神は深淵と言っていた。おそらくここは地下深くのはず。空気もよどんでいるのだろう。

 高橋さんと和田さんが「風よ」「空気」と叫び、呼吸が楽になる。空調係の確保だ。



「みんなのスキルを確認させて」


 この生きるには全く適さないであろう場所で、全員生存を目指すのだ。

 能力の把握は必須事項。


 私は1軍に選ばれた子からチェックする。


「坂本君は勇者か」


 サッカー部のエースは魔法剣を使えた。能力のパラメーターも全体的に高い。


「和田さんは賢者ね。お、全属性魔法が使えるんだ」


 学年トップの才女は賢者だった。

 分かりやすい。


 他の1軍も文句なく強キャラだが、2軍の子たちだって使いようは絶対あるはず。



「大久保君は水魔法が使えるね。飲料水ゲットだ」


 水泳部だから水魔法なのか? 安直だな。まあ人間が生きるのに水は必須。


「間宮さんは補助魔法か。絶対役に立つじゃん」


 みんなそれぞれ良いスキルを持っている。

 1人として冷遇する気はおきないんだけど。




「さて、次は君たちの番だ」


 私は期待に胸をふくらませながら3軍の子たちに近づいた。

 ラノベとかの定番では外れスキルこそが大当たりである。


 虚弱な矢島さんは職業が『()める者』でスキルが『体調管理』だった。


「治癒魔法が使えるんじゃないの?」

「‥分かりません」


「先生、オレのジョブ読めないんです~」


 成績がクラス最下位な後藤君のジョブは『餓鬼(がき)』で、スキルはまだない。


「読み方はガキ。空腹で死にそうな子供って意味だね」

「そっか、オレ、すぐ腹がすくんで」


 なるほど。


 コミュ障ボッチオタクの江崎さんはジョブが『遊び人』だった。スキルは『マンガ』と分かりやすい。


「スキル発動、マンガ」


 1人で試している。単行本が1冊現れた。


「退屈しのぎには最適だね」



 ‥まだロクなスキルがない。



 暁君はジョブが『持たざる者』でスキルは『ひきこもり』だった。

 自称女神に(あなど)られるわけだ。


 それでも何もないはずがないだろう。



「ちょっと唱えてみてよ」


 頼んだらいやいややってくれる。


「スキル、引きこもり」


 空洞に扉が現れた。


「おお!」


 暁君は恐る恐る扉を開き中を確認する。


「やっぱり‥僕の部屋です」


 つまりスキル『ひきこもり』は隠れる場所を提供してくれるのかな?


「私も入れる?」

「えっと‥ダメっぽいです。ステータス画面に1人用って書いてあるんで」



「お前以外に使えねーじゃん」


 周りは落胆しているが、確実にこの3人こそ私たちが生存できるかどうかを分けるのだ。


「渡里先生はなんのスキルですか?」


 九十九(つくも)さんにたずねられて、私はドヤ顔で答える。


「洗脳」

「うわ、それっぽい」


 そこで騒いだ鈴木君、聞こえているからね。



 暁君の出す扉は某どこでも行けるドアみたいな感じで現れます。

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