24 BBQセット
毎朝、顔を洗って扉から出ると、他の生徒と顔を合わせる。一緒に漫喫へ向かって朝食だ。
「スキルお弁当」
私はおにぎりとサンドイッチをたくさん出し、みんなに手渡す。
ドリンクバーでココアとコンポタをゲットし、ソフトクリームも一皿一緒にお盆に乗せた。
ソファで優雅な朝食を堪能していると、後藤君はカップラーメンまで作っている。
お腹がいっぱいになったら、30分ほどゲームを楽しみ下層の畑へ向かった。
(こっちの小松菜は収穫可能だね。ナスは花が咲き出したか)
水をまき、畑をねらいに来る虫や動物を駆除し、おいしそうな獲物だけ解体する。
冒険者鈴木君にスキルで出してもらったリュックに野菜と獲物をつめ、上層へ。
崖の階段はきついけど、そこさえ登れば拠点へは10分くらいでたどり着ける。
(片道30分‥運動量はちょうどいいか)
肉は夕飯用に下ごしらえをすませてホテルの冷蔵庫に放置。
ホテルの扉は出したまま、昼ご飯を食べに満喫へ。
カウンターに座っている江崎さんにステータス画面を起動させてもらう。彼女のスキル一覧をクリックすると、マンガの他に注文のタブが現れるのだ。
注文を押せばメニューが表示され、料理が選べる。料金は魔力でも良いが、出張手当で出すコインも使えた。
「今日は‥オムライスにしようっと」
カウンターに出現したオムライスを、ソファーでほおばるのは幸せ。
「食べ終わったら、一回魔法を解除するので出ていって下さいね」
江崎さんに向けうなずく。
(片付けもしなくていいなんて天国じゃん?)
このマンガ喫茶はどれだけ散らかしても、1度魔法を解除するときれいに初期状態に戻るのだ。ただし食器は返却口に戻さないといけないし、ゴミは分別して捨てなくてはいけないけれど。
「みんな1回出てねー」
館内放送で呼びかけると個室の全員がゾロゾロ出てきた。もし聞きそびれると解除と同時に放り出されるから、これだけは絶対言うことを聞くんだよね。
夕飯の時間になって、やっと転送陣が光った。
「おかえりなさい」
ボロボロの戦士たちのため、今日の夕食はバーベキューだ。
BBQセットはもちろん冒険者鈴木による魔力の結晶。
「オレにしかできないことが絶対ある!」
そう叫びながら欲しいスキルを連呼した鈴木君。そのかいあり、解体に探索に野宿に必須のスキルをたくさん手に入れている。今では冒険に必須のキャラだ。
BBQセットは初めて出した時は簡素なコンロだけだったが、何度もスキルを使っている内にしっかりしたグリルに変わり、備品も増えた。折り畳みの椅子や焼き串・焼き網に加えて食材までついて来るようになった。
まあ食材のみを出せるようになるまでが大変だったのだけど。
鈴木君がセットを出し続けるのは止めれば良かったかもしれない。
「先生、あと一回だけ試していいですか」
真剣に自分の力をのばそうとする生徒を‥私は止められなかったのだ。
で、大量に出しまくったコンロやグリルだが、一部は皮を広げて干すのに使っている。
いらないのを分解して鉄棒にし、武器にしたり塊肉を焼いたり。
それ以外は‥適当に洞窟に放ってあるのよね。ちょっと邪魔かもしれないけど、いつか使えるかもしれないじゃん?
(なんの役にも立たねえよ、と言う心の声は無視)
まあ彼の努力のおかげで、カルビもトウモロコシもエビもマシュマロも食べられるんだから結果オーライだよね!
「うまい!」
「くう、魔物の肉ばっかり食べてたから牛とか豚がおいしい」
「肉がやわらかいよ~野菜が甘いよ~」
「‥生き返る」
肉・野菜・パンと白飯の栄養バランス満点の食事で、疲れ切ったメンバーの表情も和らいだ。
「遅かったのは何かあったの」
「それが、帰るための転送陣をどこに設置するかで迷いまして」
どうやら転送陣を分かりやすい場所にしてしまうと、魔物もこちらに来てしまう危険性があるらしい。
ロヴェンテさんが必死になって条件に合う場所を探してくれたようだ。
「明日はビュッフェにしようね」
ぐったりする探索組をねぎらうため、私は後藤君とこっそり打ち合わせた。
遠征中はみんな料理する気力がないようで、冷凍食品やカップ麺ばっかりだったそうだ。
「食材を適当に鍋に入れたスープ? みたいなのは作りましたが、あんまりおいしくできなかったんですよ」
料理初心者は手抜きが下手なようだ。




