23 ダンジョンでの日常 4
そして数日後。
今日はロヴェンテさんが隊を率いて行けるところまで行って、間宮さんに転移陣を設置してもらう予定。
避難用のシェルター係は暁君。
「暁がいればかなり進めるな」
探索組が全員嬉しそうだった。暁君を見る目が以前とは段違い。
私のホテルより、絶対防御の暁家の方が安心できるようで。
(まあ料理もできるし部屋も複数あるし)
私の『宿』スキルだって複数扉を出せるようになったよ。でも複数出すとそれだけ防御のさいMPの消費が激しくなる。
交代で休むより、安全面の心配をしないでぐっすりの方が良いだろう。
かつて引きこもりだった少年は、今やクラスのヒーローである。
居場所が確立した暁君は、最近よく笑うようになっていた。
(しんみりしちゃうよ、先生)
「さて、今日は何をしようかな」
ロヴェンテさんがいないから、集団戦の訓練はお休み。好きなことをダラダラしてもいい日。
私の目に昨日持ち帰った獲物が映った。
「下ごしらえだけでもしとこう」
食べられる獲物は現場である程度解体と血抜きをすませてあり、拠点に戻ってから待機組が皮をはいでいた。
私は肉のかたまりを洗い、塩と胡椒をふる。
(ずいぶん大型の獣も狩れるようになったんだよね)
このまま置いておくはずだったが、ふと手料理の気分になった。
遠征時はお弁当だけだから、手作りの味が食べたくなるのよ。
手伝いはいなくともなんとかなるでしょ。
(今日は暁君がいないからオーブンは使えないね。まあ使えても肉が大きすぎるから入らないだろう)
「と、きたらあれでしょう」
洞窟の空洞には石で作ったかまどもある。
「渡里っち何してるの?」
「あ、ちょうどいい」
漫喫から出てきた子に協力をたのんで大ぶりの骨を持ってきてもらった。
「ここにこう立てて」
「うわ、マンガみたい」
かまどの端っこに骨を立て、肉の塊を支える。
冒険者鈴木君が用意してくれている炭に火をつけてチロチロ焼いた。
「そのうち丸焼きにも挑戦したいねえ」
時々肉の串を回し、ケバブみたいに削り取りながら食べたらめっちゃおいしいじゃん。
やはり肉の調理は塊のままが1番だ。
匂いにつられて他の子たちも顔を出す。
「先生だけずるい!」
みんな一緒の昼ごはんになった。肉の塊は骨だけに変わる。
本当はもっと野菜を食べたいが、暁家のキッチンにあるのと畑で収穫したのを合わせてギリギリ人数分。
(日本人って、米だけじゃなく野菜も必須なんだろうね。ま、もうすぐ解決するか)
スキルのレベルアップが叶えば必要物資は手に入る。
食後は仕事もしなくちゃと、魔獣の皮に向かい合う。
水と洗剤で大体の汚れは落ちているから、今日は皮から余分な脂肪を取り除く。
「ほら、みんな手伝って」
「うう、面倒くさい」
普通の包丁しかないので大変な作業だが、数人がかりできれいにした。
「えっと樟脳とミョウバンと‥」
矢島さんがネットで調べた薬剤を出してくれる。
薬剤を大型の容器(元暁家の衣料品ケース)に入れ水に溶かし、皮をつけた。
「そしてこれを一週間続けた‥のがこちらですね」
料理番組のように別の容器からつけ終わった皮を取り出し、ひっぱって広げ干す。
残った廃液処理はネットで調べた結果、酢と混ぜ中和させた後、適当に地面にまいてしまった。
この革を使って、佐藤さんや野上君が防具を作ってくれるのだ。
「先生、お風呂入りたいから扉出して」
「はいよー」
「せんせー、俺たちにも旅館で寝させて」
「オッケー」
湯船でしっかり温まってお布団で寝る。うむ、幸せだ。




