17 ダンジョンの日常 3
冒険者鈴木の出すキャンプセットも本格的な物に変わっていく。
「あああ、たき火したい!」
ここの生活ではガスがあるのでたき火をする必要はない。やりたくても燃料となる枯れ木がない。
動物の死骸は燃やすと臭いから、埋めるか放置だ。小型であれば放置しても虫や小型の獣がきれいにしてくれる。たった数日で。
焼却処分するにも拠点から離れた場所でしかやらない。
しかし鈴木君はどうしてもたき火をやりたいらしく、スキルで木炭を出した。
なのでその気になればキャンプファイアも可能。
「と~おき~や~まに~日~はお~ちて~♪」
夜ゾーンでたき火を取り囲み、歌を歌うのは確かに楽しい。
それに直火で焼くパンや肉がおいしいのよ。
スライスチーズをのっけたカリカリトーストを頬張るのって、幸せ~。
魚(暁家の冷蔵庫から拝借)に枝をさしてあぶっているとサバイバルしてる感も出る。
下層の畑ではナスにトマトにキュウリも育って来た。野菜不足はそろそろ解決だろう。
天井がふさがっているのはどうしても気になるが、私以外の生徒には定期的に洗脳をかけストレスを軽減しているから問題ない。
私のストレスだけどうしようもないが、虚弱の矢島さんがギャバサプリとか睡眠導入剤を時々出してくれる。
『吟遊詩人』のジョブを持つ鈴木さんが時々リラックスのための歌を演奏してくれたのは助かった。
彼女のスマホに音楽系アプリができたのは他のメンバーと協力したらしい。
『職人』ジョブの野上君も、骨から原始的な楽器も作ってくれる。
鈴木さんメインの演奏会やスマホの音源でカラオケもどきもできた。
拠点を移動したことから、下層は徐々に虫や小型の獣が戻っている。
それでも上層よりは安全だから、戦闘に不向きな子たちが畑の世話や壁の落描きや大声で歌を歌うため、ちょいちょい降りていた。
「先生、下層へ続く絶壁も発見しました」
「お、畑までショートカットできるかな」
以前大蜘蛛を呼びよせた崖を、上から発見できたようだ。
探索組は今、私の洗脳なしでも大蜘蛛を倒せる。
「今なら土魔法で階段ができそうだね」
上からも魔法をかけてもらえば以前下から造った階段とどうにかつながり、畑へも行きやすくなった。
「他にもつながりやすそうな場所があるかもね」
地図を見ながらショートカット可能な場所を探す。
「渡里先生、探索もいいですけど、またビュッフェ出してくださいよ」
子どもたちにはせがまれるが、大体断る。
「ビュッフェはMPを大量消費するからいつもは使えないでしょ」
まあもっとレベルを上げればいいだけなんだけどさ。
「うう、ワタセンも強敵たおしてサクサクレベルアップして下さい!」
後藤君にまで頼まれるけど、レベルを上げなくちゃいけないのは彼も同じだ。
「後藤君が討伐に向かう時は一緒に行こうね!」
嫌味をこめたら「先生、そりゃないっすよ」とぼやいていた。
まー正直もっと後藤君にはレベルを上げて欲しい。
と言うか、うちの追放組四天王は全員戦闘レベルが低い。
経験値は戦闘への貢献度によって決まるらしく、強敵の止めを刺すだけじゃあんまり増えないのだ。
「なので、この階の獲物は各々1人で倒せるように特訓です」
「ええ~」
四天王全員からブーイング。
「言い訳は聞きません。ちゃんと護衛もつけて、いざって時に備えるから、できるだけ自力で倒せるようにね」
矢島さんには探索の時間を1時間と指定したが、他の3人は2時間にする。
「に、2時間も歩くんですか?」
「君たちの能力から考えたらそれくらいできる。頑張って行っておいで」
4人まとめては怖いので、1人ずつ順番に送り出す。
初日にしっかりレベル上げできたのは後藤君だけだった。
矢島さんはそれなりに戦えるがすぐ疲労してしまう。引きこもりの暁君と遊び人の江崎さんは攻撃力が低い。ま、後藤君も含めて4人ともボロボロになりながら戻っていた。
「1人で3匹も取ったんですよ、ほめて下さい」
帰還するたび彼らの頭をなでる。
「よくやったね」
大げさにいたわる様子を、護衛陣は冷ややかな目で見ていた。
うん、これくらい他の子はもう普通になったんだよね。
江崎さんのレベルが上がったので漫喫スキルは12時間持つように。ついでにメニューにカレーが加わわった。
冒険者の鈴木君が新スキル『キャンプカレー』を覚えた直後だったことは、まあ言わなくてもいいことかな?
「く、いつもオレばっかり」
鈴木は男女2人いる設定です。苗字の被りって絶対クラスにありますよね。
クラスの仲を保つため、生徒は全員定期的に洗脳をかけています。
「みんなぁ、仲良くね♪」「ハーイ‥」




