16 ダンジョンでの日常 2
そしてまず精鋭だけのチームをさらなる上層の探索に行かせる。
自称女神が選んだ1軍は強敵にも徐々に適応し、本隊に情報をもたらしてくれた。
「ただいま~うわ、いい匂い!」
「お疲れ様! 今日はごちそうを用意したよ!」
材料は巨大ミミズ肉。大食い後藤君の鑑定スキルがレベルアップして、今では食べられるかどうかだけでなくおいしいさまで教えてくれる。
このミミズには『揚げ物に合う』なんて注釈まであったとか。
ミミズはぶつ切りにして内臓を取り出し洗い、獲物には必ずある臭みを自家製ハーブで消し、醤油に漬けて唐揚げにした。
山盛りの唐揚げの破壊力はどの世界で見ても変わらない。
(あげちゃえば元の姿も分からないし、分からなくなればみんな気にしなくなったし)
生徒たちも強くなったものである。
青空の下へ持って来たテーブルに、ドリンクバーの飲み物やスナック菓子を並べた。
野菜スープは私の力作。
満喫にあったインスタントスープに暁家の調味町を加え、味に深みを出すのだ。
そしてもちろん熱々の白飯。
個室で食べる食事も悪くないが、みんなでワイワイ食べるとおいしいよね。
揚げたての唐揚げは絶品だったし。
ああそれと娯楽も増えた。パソコンでネットが使えるようになったのだよ。
江崎さんのスキルだけじゃ無理だった。
ゲーマーで映像配信者だった加藤君のスキルに『インターネット』が現れたのだ。
元の世界との交信はさすがに無理だったけど、私たちだけのコミュニティだけで対戦とか協力が可能に。動画も見放題。
「スキルの複合が可能なら、できることも増えるんじゃね?」
コミュ強のギャルの間宮さんが女子数人を集めてコソコソ話している。
友人思いの彼女は回復魔法もできる付与術師だ。
何をしているのか気になって見ていたら、手にはスマホを持っている。
「付与せよ、Wi-Fi!」
彼女が呪文を唱えたとたん歓声が上がった。
成功らしい!
私たちの間でだけでだが、スマホの通話とメッセージが可能に。
スマホをポケットに入れていた子しか使えないのが難点だったけど、問題はあっさり解決する。
「出て来て、スマートホン!」
生徒たちが口々に叫ぶ中、九十九さんが、新ジョブ『魔道具店員』を獲得したのだ!
彼女のバイト先が携帯ショップだったらしい。ステータス画面にコインを近づけ投入することで、スマホの購入が可能になったのだ!
九十九さんの元々のジョブは『清め手』で、洗浄魔法と浄化魔法しか覚えていなかった。
浄化魔法は虫ゾンビ? みたいな敵と対峙した時に発動して、いわゆるアンデッド系には有効だ。
しかしそれ以外に使いどころもなく、ジョブランクもあまり上がらなかった。
それでも探索には積極的に参加していた九十九さんだ。経験値がたまりにたまっていたようで、『魔道具店員』はいきなりランクB。
「えっと、ステータス画面に硬貨を投入すると商品が現れますだって」
私はすぐ、出張手当で手に入れた硬貨をつぎこむ。
スマホも充電器もゲットできた。
異世界に召喚されてから半年が経過する。
今では精鋭組だけじゃなく、他のメンバーも上層の探索に慣れて来る。
敵が弱い下層なら個人行動も余裕なくらいに。
「今日は野菜の世話行ってきまーす」
「新しいスキルで遊べるゲームが増えましたよ」
「ねえねえ、こんな素材見つけたんだけど鑑定してよ」
みんなすっかりこの生活に順応してやがる。
アニメや小説のクラス召喚って、こんな気軽だったっけ?
毒魔法使いの中村さんが発酵スキルを駆使してチーズとか甘酒の手作り挑戦してた。ただの趣味で。
(あの子、マンガやアニメも好きだし、たぶん腐女子なんだろうな‥)
温かい目で見守ろう。
「先生、オレのジョブが変化しました」
後藤君のジョブは『大食い』から『グルメ』に変わっていた。
「で、先生の協力が欲しいんですけど‥」
「なになに」
「先生のホテルと技を合わせたら‥ビュッフェとかできないっすかね」
‥できた。
「よおっしゃあ!」
洞窟内に久しぶりの雄たけびだ。
ビジネスホテルの朝食風景がそこに広がっている。
スクランブルエッグにソーセージ、みそ汁とスープ、トーストと白飯にお粥。
焼き魚に佃煮にハンバーグ。
そして極めつけに‥カレー!
「お店のカレーが、こんなにいっぱい」
以前作りに作ったのに全員が満足する量には到底たりなかったのを思い出す。
もうすでに寸胴鍋いっぱいのカレーって、何て神々しいのかしら‥
私も後藤君もMPをほとんど消費してしまったけれど、悔いなどなかった。
カレーを食べ終わった後は寸胴鍋をビュッフェの扉から出しておく。
これは絶対再利用できるに違いない。




