12 レベル上げは大変です
命の危険がある道に生徒を進ませる決断はできなかった。
(せめて上層の敵と相まみえても死なないレベルになっていれば)
しかし最近はみんなレベルアップの頻度が落ちている。
もうモグラやミミズやワラジムシだけ倒していても限界である。
(この間の落下敵は強そうだったけど)
作戦を思いついた。
私は精鋭部隊を連れて崩落現場までやって来た。
「出でよ、牛肉弁当」
お弁当を出しフタを開ける。
良い匂いが辺りにただよう。
高橋さんの風魔法で匂いを上に送ってもらった。
待つこと数分。
「グルルル」
うなり声が聞こえた。
お弁当の匂いでモンスターを呼びよせることに成功したようだ。
野生動物にとって人間の食べ物は刺激が強い。
そのまま落っこちてくれれば助かったが、そいつの姿は1メートルはある大蜘蛛。器用にピョンピョン崖を降りて来た。
(さっそく計画の失敗かよ)
でも計画には第2陣がある。
「止まれ」
私はスキル洗脳を発動させて大蜘蛛に命令した。
蜘蛛の体が硬直して崖半ばから転落する。
「今だ」
坂本君が蜘蛛の腹に剣を突き立てた。
しかし大蜘蛛はその衝撃で足をばたつかせる。
「やべ」
「動くな。あ、ごめん」
私は即座にもう一度洗脳をかける。
坂本君まで硬直したのは想定外だったけど、攻撃→洗脳の繰り返しで、やっと強敵を倒せた。
「おお経験値増えてる」
戦闘後はスキルのホテルで休憩。
みんなで揚げ物弁当やサンドイッチを食べながらステータスを確認だ。
「この作戦なら全員でレベル上げできるね」
ドアを開けると土ぼこりにまみれた弁当に小型の蜘蛛が群がっている。
さっきの大蜘蛛と同じ種類だろう。
30センチほどで小さいからサクッと殺せた。
その日から崖そばでひたすらレベル上げ。
蜘蛛の他に巨大芋虫や巨大ピンクダンゴムシも落ちて来る。
「巨大蜘蛛にさえ注意すればあとは楽勝だね」
戦闘には補助スキル生徒もまぜ、全体のレベルアップを図る。
しかし私は油断していた。
大蜘蛛が2匹同時に降りて来たのだ。
「蜘蛛の動き止まれ!」
しかし止まるのは1匹だけ。
「ファイヤーボール!」
「サンダー!」
魔法で動きをけん制するが、鈴木君が大けがを負ってしまった。
彼に敵が迫る。
今動きを止めても鈴木君を巻きこんでしまう。
パニックにおちいった私を誰かが追いこした。
暁君だ。
「引きこもり!」
彼の叫びと共に現れる扉。暁君はケガ人の腕をつかみドアの中へ引きずりこんだ。
(なるほど)
彼の出す扉は絶対防御の特性がある。あの中なら安全だろう。
「動くな」
私はまず手近な方を洗脳し、もう1匹もねらった。
「落ち着いて、一体ずつ倒そう」
周りに声をかけながら強敵を倒す。
「敵は倒した。そっちは大丈夫⁈」
ドアをたたくと鍵が開いた。
「先生、どうしよう」
家の中ではバスタオルで腹をグルグルまきにされた鈴木君が転がっている。
「西川君、お願い」
寺の息子ってだけで僧侶の職業を与えられた彼は回復魔法が使える。
「治れ、治って」
西川君の手からこぼれる光が、鈴木君を包みこんだ。
鈴木君の呼吸が落ち着く。
「これメチャクチャ使えるじゃん」
私はおびえる暁君へ、わざとのん気に話しかけた。
「これ?」
「引きこもりスキルだよ。どんな強敵に出会っても、一時的に避難できるじゃない」
みんなの顔が「ああ」と納得する。
やっぱり暁君のスキルは最強だ。
その後は鈴木君に無理をさせないよう、ゆっくり拠点に戻った。
「矢島さん、頼める?」
虚弱な矢島さんのスキル『体調管理』は体の状態を鑑定し、ふさわしい薬を出せるまでになっていた。
「傷口はアルコールで消毒しました。感染症が心配なので抗生物質を飲んで下さい。えっと12時間に1回ですね」
もはや1人病院。
大ケガの後の感染症対策は適当に書いています。抗生物質を使うパーターンもあるらしいので。




