10 新しい拠点と新スキル
「お、広い」
探索組が見つけてくれたそこは、前より広い空洞。
これなら半藤さんもたっぷり空の絵が描ける。
「こっちの分岐している道から、モンスターがやってきます」
「じゃあふさいだ方がいいね。それから見張りを置くか」
園芸部の土魔法使いに盛り土してもらって、胸の高さまでのバリケードを築く。
虫はわらじサイズのワラジムシや草履サイズのゾウリムシがワサワサいたから踏みつぶして集め、燃やす。
ところで魔法で作り出した炎は温度が低いらしく中々着火しなかった。
暁家から古新聞と着火装置を持ってきた方が早い。
(ゲームの世界で炎使いの魔物がいても火事にならないのは、そのためなのかな)
その新しい空間に暁君と矢島さんが扉を出し、半藤さんが窓の絵を描く。
窓から明かりがあふれ、不要になったステータス画面を消そうとして新しい表記に気がついた。
新しい場所に緊張して気がついていなかったようだ。
「出張手当がレベルアップして新しいスキルが生まれましただと?」
現れた文字に目が釘付け。
新スキルは『宿』と書いてある。待望のホテルじゃん!
さっそく「スキル、宿」と叫ぶ。
私の前に扉が現れた。
「やったあ!」
扉を開くと、その場所は1度だけ泊ったことのある1泊3千5百円の格安ビジネスホテルだった。
それでも上々である。ユニットバスはついているしアメニティも手に入る。
しかも説明には続きがあった。
『硬貨投入でグレードがアップします』
おお!
出張手当として1日数枚支給されていたコインを画面に近づけると、コインが消える。画面には『2人部屋』と表示された。
(これって金額によって収容人数が変わるんじゃ)
もう3枚近づけると今度は表示が『6人部屋』になる。
それ以上コインは消えなかったので、決定マークを押した。
私がいるのは修学旅行の引率で泊まった和室に変わる。
「おお、上々だね」
ここならバストイレが別なのだ。
そして矢島さんの保健室と合わせれば、女子全員の収容が可能になる。まあベッドや布団に2人が詰めて寝ればだけど。
生徒をちゃんと男女分けできるじゃん。
思春期集団を1人で引率するのは怖かったんだよ。
見張りを数人残し久しぶりの布団へダイブ。ぎゅうぎゅうづめだが、意識はすぐになくなった。
おきた時には生徒全員騒いでいる。
「ゴメン、寝坊しちゃった」
「先生ずっと野宿だったんですからしょうがないですよ」
生徒の優しさに涙がこぼれるよ。
後、私が休んでいても大きな混乱がおこらないことにホッとした。
そこからは探索組と待機組に分かれる。
夜中に見張りを担当してくれた子はもちろん全員待機組だ。
まあ待機組も拠点を快適に保つため地面をならしたり、キャンプセットを設置したり食事を作ったりでそれなりに忙しい。あ、見張りを頼んだ子たちはさすがに睡眠をとらせたよ。
「泊まれる場所も増えたし、休み時間がもっと欲しいんですが」
矢島さんがぐったりしながら訴えてきた。
「周りの様子が分かったらそれもいいね」
今までの報告では、そこまで強い獣はいないようだ。
そして冒険者鈴木がとうとうスキル『探索』を覚えた!
「これで周りに危険な敵がいるかどうか分かるのね、すっごい役に立つじゃん!」
私がちょっとオーバーに褒めたら泣いていた。
「やっとオレ役に立てた‥」
みんな役に立っているよ。
いらない子なんていないのだから。
探索組が獲物を持って来た。鈴木君と後藤君は獲物を解体しに行く。
2人とも解体スキルは手に入れていたが、呪文を唱えて、はいできたではない。
解体スキルはナイフを入れた時に皮をはぎやすくしたり骨を断ち切りやすくする技だ。
(お弁当とか扉とか、物質を出すスキルはどう見てもチートだけど、解体や物理攻撃のスキルはなぜか現実的なんだよね)
魔法スキルはともかく、剣や槍のスキルは攻撃が当たりやすくなるとか威力が多少増すくらい。
おとぎ話じみた力と、実際に手に入れられそうな力の違いはなんなのだろう。
後藤君は調理スキルも覚えたから、肉を洗うと塩を振って下ごしらえまでしている。
彼のジョブは『餓鬼』から『大食い』に変化していた。




