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その漆黒の大剣はまるで主を待っていたかの様にアレースの腕に携えられている
「ミスリちゃん、この子に加護をやってくれ」
その言葉に大剣が光輝くと、格子を破りそこから勢い良く飛び込んでくる影があった、その影はアレースを突き飛ばし、アルテナも巻き込まれ倒れてしまった
「やった!やったぞ!暗黒剣を手に入れた!」
そこにはジャンヌが立っていた
「アレースでないと引き抜けないと言われていた剣!あヤツらの言う通りにしたらあっさりと手に入った!」
「師匠様?」
「アルテナ」
アルテナを見てジャンヌはバツが悪そうにした、その時暗黒剣が光だし、ジャンヌの顔が、身体が溶けてゆく
「やはりお前も転生者か」
アレースの言葉も聞こえない程ジャンヌは戸惑っていた
「な!なんで!こんな事聞いていない!」
その姿はみるみる男性の者へと変わっていった、ジャンヌは転生前は男性だった様だ。その姿を、顔を見てアルテナは悲鳴を上げた
「貴方は…聖騎士団長モリス・クレイ」
「ああ、アルテナ。あの時ぶりに見られてしまったね」
その言葉にアルテナは顔を歪め、己の爪で顔を割いてしまった。そのアルテナの反応を見て、モリスは顔を伏せた
「私の、両親を殺した、モリス・クレイ!一体どんな思いで今まで!」
「ああ、アルテナ、君はそんな表情が出来たんだね」
モリスの言葉にアルテナは固まった、モリスの表情はジャンヌの時には想像も付かなかった光悦とした表情をして髪をかきあげている
「この気持ち、なんと表現したら良いのか」
モリスは黒剣を肩に担ぎアルテナの元へ歩いてゆく。そこへアレースが立ち塞がった
「おいおい変態さん、未成年への接近は違法ですよ」
「罪人が神のつもりか」
モリスはアレースを睨みつけた
「今や君も立派な犯罪者だけどね」
ルクトがモリスの背後に回る
「聖騎士の命令とは言え、獣人やそれと共に暮らす人間達を殺し回った上に聖騎士団を逃亡した大悪党と名高いそうじゃないか君は」
そう言ってルクトが黒剣を取り返そうと手を伸ばすと、黒剣に弾かれてしまった。その状況にその場に居た全員が驚いた
「ミスリちゃん」
アレースも手を伸ばすが、同じ様に弾かれた。モリスも同様に驚いていて、どうしていいか迷っている様だ。そこに異変を嗅ぎつけたのか天使達が破れた格子から次々入ってきた
「アルテナ!必ず君を迎えにくる!」
モリスはそう言うと天使達をかき分け飛び出して行った、天使達もタダでは帰すまいと槍を突き立てるが、どうした事かモリスに届く事は無かった
アルテナはその光景を呆然と眺め、過去の事を思い出していた。
◈
アルテナの暮らす村は女達は踊り子をし、男達はクローを愛用し旅人の護衛をする商いをして暮らしていた。アルテナの母親は人間で、父親は猫の獣人だった。母親に教えて貰いながら踊りの練習をするのがアルテナの日々だった、その日々はある日突然壊れ、モリス達の奇襲により全滅してしまっていた。倒れた家屋にアルテナを隠した両親は襲いかかってくるモリスに立ち向かったが呆気なく切り捨てられ、アルテナもその光景を見ていた
◈
「いつか、いつかこの手で殺してやろうと思って、日々鍛錬を詰んだのは…」
そこでアルテナは床に伏せった
「お師匠を殺す為では無かった、でも、今はもう」
アルテナは声にならない声で泣いている、もはや泣いて良いのか叫んだら良いのか分からないのだ
◇
その時外でモリスはアルテナのいる方を見ていた、森の中から信者達が現れほぼ裸になっているモリスに服を着せている
「アルテナ、君を迎えに行くよ、無理強いはするつもり無かったが、状況が変わってしまった」
その時あの絶望に打ちひしがれているアルテナの表情を思い出し、また光悦としていた
「モリス様、1度団体本部に戻りましょう」
信者に促され、モリスは表情が戻った
「ああ、そうだね、僕の姿が戻るのも君たちにとっては想定内だったのかい?」
その言葉に信者達は押し黙り、ただ道案内へと手を差し伸べるだけだった
「まあいい」
そう言ってモリスは森の中へ歩き出した
◇
アレースは絶望していた、大事にしていた黒剣を奪われてしまったのだ
「ああ、ミスリちゃん、なんてお詫びしたら良いのか」
「だが不思議だな、ミスリの方から拒んでいる様だった」
アレースとルクトが首を傾げている隣で、アルテナは天使達に回復魔法を掛けてもらっていた
「お師匠…」
その時アレースの手枷が粉々に壊れた
「おや、罪人の証である手枷が無くなってしまった」
「ミスリちゃんが居なくなったから?それともなにか理由があるのか?」
「どちらにせよお主ら到底神と思えぬポンコツぶりだったな」
女王の言葉に二人は白い目で女王を見た
「いやそもそも何故破られる様な結界を張っていたのか」
「おそらくこの国の出身者がいる」
「スパイって事?」
「ああ、しかも元私の側近だろうな」




