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♰♰♰ チョコを食べたのは誰か?④ ♰♰♰


「君、大丈夫か?この肌寒い時に汗が酷いじゃなか。」


堀田は恐怖で歯ぎしりをしだした。真由が叫び声をあげた。すでに嫌な事態を想定して目を逸らしている子さえいた。黒川は名城の瞳になんらためらいもないのを見て事態が悪化した事を知り、悪い方向へと進むのを止めさせようとした。


「おい!そんな物騒な物はしまえっ!しまうんだっ!!」

「黒川、もしここに外にいる連中と同じヤツがここにいたらどうする?」


上社は確かに常識から外れたオカルトを信じていはいるが、黒川とは逆に感情で判断するタイプではないし、けして大勢に流されて偏見だけで決めるのではなく、ちゃんと合理的に自分の頭で考えてはいる方だった。


「ゾンビがここにいるのは迷惑だ。でも、ゾンビは殺せてもまだ人間である場合に殺したら単なる人殺しだ。」


黒川の声でも届いていない堀田はまるでいっきに年をとったかのように頬が痩せ痩けた。


「僕が言いたいのはけして黒川が想像しているような事ではない。先程、金山先生を追い出したようにゾンビ化する前に理科室から追い出すべきだと言っている。」

「俺は反対だね。それは敵の数を増やしただけだ。減らした方が後で楽になる。」


名城が垂れ下がった前髪が目にかかって邪魔になっているからナイフを持った手で前髪を追い払った。誰も人間は殺せないが一人だけ人間を平気で殺せる人がいた。


「俺だって堀田がゾンビになった時は反論もなくゾンビとなった堀田を始末する。だが、まだ堀田がチョコを食べたと判明してないし、食べたとしてもさっきテレビで個人差があると言っていただろ?もしかしたらチョコを食べたとしてもゾンビ化しない可能性だってあるのじゃないのか?」

「私は今回だけは黒川に賛成できない。」黒川よりだと思われていた神宮西が今回だけは黒川と意見が分かれた。「確かにチョコを食べたかどうか判明する前に手を出す気にはなれないけどさ、ゾンビになったら金山先生よりも厄介かも。致命傷は免れないだろうし、もしかしたらさらにゾンビ感染者を増やす事になるのかもしれない。そうなる前に手を打った方が簡単だし、被害者は出さずにすむと思う。」

「被害は出ないだって?ここにいるだろ!?」


黒川は自分が理想主義で上社や神宮西は現実主義なのは理解していた。ただ、事態が悪い方向へと進んで行っている気がする。その過ちに誰も気づかず気付いているのは自分だけな気がするのも恐ろしかった。すると机の上に座っていた名城が突然、床に降りた。

名城は早くこのナイフを使いたくてうずうずしているようだ。


「ダメだ。名城。このままだと俺達がいずれ金山先生のような化物になるだけだ。」


すると黒川の声を聴いて動く勇気が出たのか堀田の前にいきなりザコ二等兵が現れた。


「僕からもお願いだ!堀田は恐怖で言葉が出てこないだけだ!だから堀田がちゃんと答えられるようになるまで待ってあげてくれっ!」


そう言った後でザコ二等兵の目にまた涙を浮かべた。


「僕はもう・・・・・・また悲劇を見るなんてもう沢山だ!」


ザコ二等兵の懇願を見て生徒達は友人や仲間を失った哀しみと彼女を失ったザコ二等兵の哀しみを重ね合わせて辛い事を思い出し泣き出す生徒まで現れた。ザコ二等兵の説得でようやく流れが変わりつつあった。黒川は異常事態になっても皆にはまだ少なくとも理性が残っている事にほっと胸を撫で下ろした。だが、この男だけは違った。


「やだね。」


普段から揉め事に関しては対話よりも暴力で解決してきた方が解決するのが早かった名城だけは心を動かされなかった。名城はここにいる皆を助ける気なんてない自分だけ助かる気だと確信した。名城は手に持ったナイフを肩まで上げると堀田に刺さる間合いまで近付こうと一歩前へと動いた。


「ま、待て!何をする気だ?正気なのか???」


黒川は名城を止めさせようとナイフを手に持っている名城に果敢にも向かって行った。


「邪魔だ、どけ。」


黒川はいつも勇気だけはあるが名城にナイフを持ってない手でいとも簡単に黒川の頭を横にどかされてしまった。


「堀田っ!今すぐ逃げろ!」

「うわああああああああっっっ!!!!!殺られるぅぅぅ!!!!!」


堀田は向かってくる名城から逃げようとすぐに椅子から立ち上がろうとしたのだが、恐怖のせいで足が思うように動かず足場がぐらついて堀田はうつ伏せになって倒れてしまった。


倒れた堀田は今すぐに逃げようと顔を持ち上げると眼の前に誰かの足があり、上を見上げて見るとそこには名城がいた。堀田はよりによって名城がいる方へと椅子ごと倒れてしまい、名城にチャンスを与えてしまった。名城は堀田に不気味な笑みを浮かべた。


そして高くあげたナイフを持つ手が下降するジェットコースターのごとく刃が勢い良く振り下ろされた。堀田はぎゅっと目をつぶり、頭を抱えて震えていた。黒川が再び名城を止めに行き、理科室の外へと漏れる程叫んだ。


「やめろぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!!」


どすっ、と鈍く突き刺すような音がした。


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