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♰♰♰ チョコを食べたのは誰か?③ ♰♰♰

「お互いに疑い合うのはもう時間の無駄だ。質問にイエスかノーだけ答えれば充分だ!いいな!?」


黒川の提案に反対する者は誰もいなかった。唯一、体を震わせた堀田だけを覗いて・・・。


「反対はいないようだな。じゃあ始めるぞ・・・」

「やっぱオレは嫌だッ!こんな尋問みたいなマネはッ!!!」


まるでやましい事に心当たりでもあるかのように堀田が早口で黒川の提案を否定した。だが、その発言の直後に堀田の背中に重苦しい重圧がかかった。名城の足が堀田の背中に重圧をかけていた。堀田の背中は汗でびっしょりと濡れていた。


「いっ、いや!何も・・・・ないです。」


堀田の妙な慌てっぷりに周囲に不安の影が襲った。気の所為だと思いたい黒川は今の問題を早く逸らそうとした。


「じゃあ、とりあえず一人ずつ聴いていく事にするか。まず神宮西はチョコを食べたのか?イエスなのか?ノーなのか?」

「答えはノー。私はダイエット中だから。これでわかった?で、あんたはどうなの?」


神宮西が釈明した後に自分に疑いの目を向けさせられた張本人であるみきを指した。みきは人差し指で口の端を引っ張ると皆に口の中を見せびらかすように出した。


「ノォォォ!!!!びぃきわ。むぅしばちゅうなの!」

「虫歯中なのにクリームパンやスナックパンやらずっと食べていたじゃん。」


ずっと腹をすかしている丸之内はみきが食事にありつけるのを妬ましかった。


「チョコじゃないからいいのっ!さあ、みきは正直に話したわよ。次はあんたね、モテ男さん。」


と、みきは次に名城を指した。名城は先程みきに疑われたから逆にみきに疑いの矛先を向けさせたものの名城の口からまだ釈明は出ていない。


「ノー。甘いものは臭いでも無理。」


短い言葉であっさりと釈明された。


「じゃあ残るは・・・・」


みきに疑いの目で見られたような気がしたから黒川がすがさず答えようとした。


「ちなみに俺は・・・・・」

「あんたは答えなくても皆知っている。私はそこにいる変なヘルメットを被っているあの宇宙人に聴いたの!」

「なんで俺よりる宇宙人の上社の方がチョコを貰えるように見える!?」

「僕はノーさ。危険な添加物や人工調味料が色々と入っているチョコは一切口に含めない主義なのだ。それにバレンタインデーは資本家が作ったチョコを買わせようとする陰謀で云々・・・」

「はいはいっ!そこでいいからっ!聴くだけ時間の無駄!で、次はあなたの番よね?」


みきは堀田の隣に座っているザコ二等兵を指した。堀田はザコ二等兵の隣に座っていた為、自分の事を刺したのじゃないかと体をヒヤッとさせていた。


「へっ!?俺?」


ザコ二等兵はまだ答える準備ができてないらしくく戸惑っていた。


「俺はいや・・・その・・・・・・・」


ザコ二等兵は声を詰まらせていきなり言葉が途絶えてしまった。


「なぁにぃ??なんで急に口が止まるのー?コイツいかにも怪しいのですけどー」


みきが煽ったせいでザコ二等兵は目から涙が溢れ出してしまった。周囲はみきにひどく責められて可愛そうだ。と同情する気持ちと可哀そうではあるが自分達の命に関わる事ならば迷惑だから速くここから退散してほしいという二つの気持ちに分かれていた。


「だ、だって!俺は・・・・おれはっ!うっ!・・・・・」


ザコ二等兵は嗚咽でさらに喉をつまらせた。


「だから~俺からが何よ!早くイエスかノーなのか答えてっ!」


みきに怒鳴られたザコ二等兵は手を震わせて上着のポケットからスマホを取り出し画面に映ったザコ二等兵と一緒に映っている可愛いい彼女の写真を名残そうに撫でた。


「俺にチョコを渡してくれる彼女が死んじゃったんだっ!うわあんっっ!!!!」


ザコ二等兵は机にうつ伏せになって今まで隠し耐えてきた苦しみや後悔を嗚咽とともに吐き出していた。先程は疑いの目で見られていたザコ二等兵だったが、彼女思いの男性に弱い女の子達はザコ二等兵に対して深く同情し、哀れんだ。男性諸君も疑った事に罪悪感を抱いた。そして逆にみきが皆から責められるような眼差しを向けられた。


「おい、お前どう責任取る?」


黒川はみきにお前は軽薄だと訴えるかのような目線を送った。


「何よぉ!みきはただ質問しただけっ!ていうか彼女が死んだだけで大げさすぎ!?みきは悪くない!むしろ被害者なのは罪もないのに責任を問わされたみきの方!」

「お前・・・よく、彼女が死んだ奴にさらにムチを打つような事が言えるよな・・・」

「もういいよ、亮ちゃん。亮ちゃんは頑張った。」


丸之内は黒川のみきに対する苦労を理解していると励ますかのように黒川の肩を叩いた。


「さっさと尋問に戻ろ。もうこれで今日、何度めかの話題逸らしが起きたじゃない。まだ、質問に答えていない人がいたわね。そうよ、あんたよ。きょどり屋さん。」


神宮西にきょどり屋さんと言われた堀田が両肩を高く飛び跳ねてさらにきょどった。


上社が心配そうに尋ねても堀田は顔をうつむかせたままで返事がなかった。みきが顔を横に向けて堀田の顔を舐め回すように見た。


「なーんか顔が死んだように青白いわね?まるで外にいるゾンビみたい。」


みきの発言で理科室中がざわめいた。黒川がこの場に漂う濁った排水のような空気を感じ取り強引な取り調べではなく、なるべくやわらかな態度で堀田に訪ねた。


「な、なぁ堀田。イエスかノーで答えるだけでいい。だから頼むからなんか言ってくれ。」


黒川の声も堀田にはまったく届いていないかのように青白い唇を震わせて沈黙を通していた。いつまでも黙ったままの堀田に苛立った神宮西はせかすように言った。


「どうして黙ったままなの?外にいるあいつらと同様に死んだから声が出ないの?」

「おいっ!神宮西!悪い冗談だ!」


黒川は神宮西の言葉が悪い方向へと進んでしまうかもしれない事を恐れて警告した。理科室は今や恐怖という爆弾を抱えている。ゾンビがいると判明したとたん生徒達の緊張の糸が切れて耐えかねた物がいっきに爆発してしまうだろう。


「答えたくない。が、つまりこいつの答えじゃないのか?」


そう言った堀田の後ろの机の上に座っている名城の手には鋭利な物が輝いていた。ポケットナイフだ。

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