♰♰♰ スペース・オディティ ♰♰♰
カチッカチッカチッ・・・・・ライターを付けようとする音が何度もした。両方の眉を八の字にしわを寄せてイライラしながら何度も火を灯そうとするのだが、火花を散らすだけで灯火はやどらなかった。
先程堀田からパクったライターはもう使い物にならなくなっていた。名城は口に加えたタバコを制服の胸ポケットにしまうとうつ向いて溜息を吐いた。まだ乾いていない髪の毛から水滴がしたたり落ちてくる。タバコをつけたくてもライターの火がついてくれない。ポケットにしまってあったスキットルに入っているアルコールはすでに切れていた。
17の年齢ですでに立派なアルコールとタバコ中毒者である名城は禁断症状で手が震えた。口に何かを含んでないと落ち着かない。顔から汗が流れ出てきた。名城はなにか他の事でも考えて中毒症状を誤魔化そうと顔を見上げた。すると目の前にある窓ガラスに映った外の星を見ている少年が目に入った。
少年の目の中には満点に輝く星空が映っていた。
「あそこにはこの地獄と化した地上と違って輝いている世界がある。なのに・・・あまりにもここからは遠すぎる・・・」
その時、少年の目の前にある窓ガラスに自分の背後に近づいてくる客人が映った。名城だ。セットしている髪をおろしている為に名城だと気づくのに時間がかかった。名城は星を眺めている少年に訪ねた。
「なんでずっと星空なんか見ている?」
「待っているのだ。」
上社は窓の外の星から目を逸らさずに名城の疑問に答えた。
「誰を?」
「僕と同じ星から生まれて来た仲間がいつか僕を迎えに来てくれるのを。」
「星に帰るのか?」
「ああ。僕は元々この星の住民ではない。100光年も離れた美しい星の住民だった。君たち地球人からしたら100年も先の未来にいる惑星の住民って事になるな。そこは地球に比べたら遥かに文明的で格差も人種問題も年を取る事も病気で死ぬ心配もなくかつ平和に暮らしていた。だが、退屈を伸ばしただけの人生だ。ある日。仲間と共にアンドロメダ銀河を見に行った。美しい光景に見とれていたら隕石の衝突が起こり、仲間たちは隕石の破片から逃げ延びる事が出来たが、僕の宇宙船は隕石の破片に衝突されて壊れてしまった。やも得ず僕は地球のこの学校の人っ子ひとりいない裏の森に不時着をした。僕はさっそく宇宙船の修理を試みようとしたのだが、文明が劣っているこの惑星じゃあぼくの惑星にある修理に必要な部品は手に入らない。やも得ず僕は仲間にSOSを発信しながら仲間がいつか自分を迎えに来る日までこの地球で地球人として姿を変えて暮らしている。だが、この星で宇宙人として居続けるのは孤独だ。僕はずっとサミシイ。だから僕はずっとこうやって星を眺め続けながら僕と同じ星から来た仲間がいつか迎えに来てくれるのを待ち続けている。」
名城は真由と夏樹と麻子が見ている向こう側の校舎にいる孤独なゾンビを見た。
「君も孤独かい?」
「はいっ????」
上社にいきなり尋ねられた言葉に驚いていた。名城にとって孤独とはむしろ好ましいものだ。
「君も同じ星に生まれた仲間がいつか自分の所に迎え来るのを待っているのかね?」
「いや、俺は別に仲間は必要としていない。誰かに合わせて生きるのはゴメンだね。」
「そうだな。僕は宇宙人なのに大勢の人間のフリをする孤独の方が辛い。」
「あひゃあひゃあひゃ!!!!!」
「うきききききききき!!!!!」
宇宙人同士でのコミュニケーションのように笑いだした。それは理科室の周りで奇妙な注目と視線を浴びたのだが、宇宙人同志は人間たちの反応なんていちいち気にしない。やがて妙な笑い方を止めると名城が口を開いた。
「待ち続けるのは進めないね。」
「その通りだな。僕もそろそろ宇宙船スペース・オディティを作って自分の星を探しに行く旅に出かける事にする。」
二人が同時に窓の外に映る夜空を見上げた。
「いつになったら人類は木星に辿り着くのだろうな?」
夜空は地上の地獄が嘘のように何万と輝く星がきらきらと輝いていた。その中の一つに自分の居場所である星が見つかりそうな気がした。




