♰♰♰ 孤独なゾンビ ♰♰♰
みきが口を大きく開けてクロワッサンを口に含み、口からクロワッサンのカスをぼろぼろとこぼして片手でスマホの画面に映る自分にうっとりとした顔で見ながら歩いていたら、床の上に足を折りたたみながら並んで窓の外を見つめている麻子と真由と夏樹が目に入った。窓の外に面白い光景でもあるのじゃないかと気になってみきは3人に何をしているのか尋ねてみた。
「あんた達、何で熱心に外を見ているの?」
「あれを見て。」
みきは真由が指した先を見た。向こう側の校舎の廊下に男か女かの違いだけで見た目は全員似たような顔をしている大勢のゾンビがあちこちと迷子になった魂のように廊下を彷徨っていた。
「見たけど似たようなゾンビばかりじゃん。」
「違う。あれよ、あれ。アレを見て。」
今度は夏樹が指した。
「あれじゃあようわからん。」
「ほら、掃除道具入れの横にいるあいつを見て。」
麻子に言われた通りみきは掃除道具入れの横にいるゾンビを見た。そのゾンビは顔を左右に降って周囲をキョロキョロして自分が誰なのかわからず、大勢の他人の後に必死についていこうとしているのが孤独に見えるゾンビだ。そのゾンビは自分と同じ年齢くらいの女の子だった。
「なんだか、昔の自分を見ているよーで。」麻子が言い。
「なんだか、今の自分をみているよーで。」真由が言い。
「なんだか、ワケがわからないけど、胸が痛むのよー!」夏樹が言った。
「はぁっ?どこが??」
みきはくだらないとクロワッサンを口に含み、口の周りにはクロワッサンのカスがついていた。
「あんたみたいな世界が自分中心で回っていると思っている人にはこの気持ちはわからないのよっ!!」
麻子がみきの余計な一言でせっかくセンチメンタルになった気持ちを台無しにされた事を取り戻して欲しいかのように怒った。
「わかるワケないでしょ。だってみきが世界の中心で回っているのは事実だし。」
「この人に何を言っても無駄。たとえ100パー自分の責任だとしても自分は悪くなくて他人のせいにする謎フィルターを持って生きている人間だから。」
夏樹がみきに対して呆れたというよりもみきを相手にした麻子に呆れているようだ。
「そうそう。何を言っているのかみきにはよくわからないけど、とにかくみきは悪くないわ。悪いのはみきのせいにするあんた達の方。」
「ほーらね、私の言った通り。」
夏樹は自分の言った言葉が的を当てたにも関わらず素直に喜べなさい。
「ほんと・・・この罪悪感をまったく抱かずにすむ性格がある意味羨ましい・・・・。」
真由があながち皮肉でもない言葉を言った。




