♰♰♰ 悪魔が立ち去った後の理科室 ♰♰♰
天井のスプリンクラーから出る水もすべて出し切ると神宮西がすぐに理科室の扉の前にかけより、横に置いてあった薬品棚を理科室の扉の前まで押し始めた。だが、神宮西ひとりだけでは薬品棚は動かなかった。すると男子バスケ部員と野球部員が神宮西の元へとかけよって神宮西を手伝って3人の力をあわせて薬品棚を理科室の扉の前まで押してバリケードを完成させた。
この薄い2枚の扉が生存者達と化け者を区別する境界となっていた。生き残った者達の安堵した声が広がっていく中、丸之内は顔に不安を消し去る事ができない黒川に気付くと黒川の隣に寄って声をかけた。
「金山先生の事は放って置いても大丈夫だと思うよ。」
「あぁ、でも妙に不安が消え去らないのはなんでだ?・・・」
「オイ。」
突如、声がして黒川と丸之内は後ろを振り向いた。
「んげっ!名城っ!!!」
名城は今まで何があったのか?と聞く間でもなくてもそのおぞましい容姿がすべてを語っていた。
服はあちこちがボロボロに破けていて、所々にボタンが取れ、糸が解けていて黒川達より悲惨な状態なのは明らかだ。だが、それ以上に黒川達の目線を注目させたのはその白いシャツに深く染みこんだ紅いシミだった。
服だけではない、顔や腕にも拭ききれていない紅いモノがあちらこちらと染み付いていた。スプリンクラーから出る水を浴びようがその血は消えずにまるで体の一部のように染み込んでいた。その血が名城の血なのか、それともゾンビの血なのかは定かではない。きっと両方の血なのだろう。
だが、そのおぞましい姿とは対象的に前髪をおろした名城の顔はかっこいいと言われないと気づけなそうな教室の隅にいる根暗な生徒のように見えた。黒川は思わず笑い出しそうになったが、名城を怒らせたくないから必死に堪えた。
「かえせ。」
「かえせ???何を??」
「ソレだよっ!ソレっ!お前が手に持っているソレだ!」
黒川はまだ自分の手にトイレのスッポンを握ったままであった。
「ああっ!名城には必要な物なのか、ゴメン。これを返すよ。」
名城はスッポンを大切な物のように黒川からすぐに取り返すと黒川と上社から背を向けて離れて行き、人が群れてなさそうな理科室の扉の一番近くにある先程スプリンクラーを起動させた時の乗った机の上に座って手に持ったスッポンを机の上に置くとズボンのポケットを探った。
普段ならそこにはタバコがあったのに探ってもタバコの感触がなかった。どうやらゾンビから逃げている最中にタバコをポケットから落としてしまったらしい。名城は指を小刻みに震わしてイライラしだした。さらに追い打ちをかけるように堀田が名城にかけよってきた。
「名城さぁ~んっ!!さすが名城さんですぅぅぅぅ~!ぼくは名城さんならゾンビだらけの世界でも生きて来られると勿論信じていましたっ!だから名城さんをトイレに置いて出て行ったのです!名城さんなら必ずわかって貰えると思いますけど、僕は端から名城さんの味方でしたよねっっ!?ね?ね?ね?」
「堀田・・・」
「はいっ?」
「お前、顔が汚れているぞ。汚れを拭き取ってやろうか?」
名城が唇の片端を持ち上げてニヤッと笑って白い歯を見せびらかしたのが堀田には嫌な予感を感じさせて激しい歯ぎしりを始めた。名城の笑う時でもないのに笑みを浮かべている不自然な笑顔にはまだ拭ききれていない血がこびりついていた。
名城は机の上に置いたトイレのすっぽんを手に取ると高く持ち上げ、そしてぽんっ!と心地よい音と共に堀田の顔には見事と言ってもいい程にトイレのスッポンが顔にはまった。みきがすかさずスマホを片手に持ってスッポンが顔にはまった堀田の姿をカシャッとカメラに写した。名
城はその場で顔に張り付いたスッポンを剥がそうとしている堀田の胸ポケットから勝手にタバコの箱を取り出すとタバコを一本頂いて口に加えると机の中にある引き出しの中からマッチ箱を取り出しマッチ棒を一本取りだして机の隅でマッチの先をすらせてマッチの棒の先に火を灯らせると灯火を口に加えているタバコの先に火を灯らせ、手を振ってマッチの先に着いている火を消し、洗面台の中にマッチの棒を放り投げた。
タバコの煙を深く吐き出し名城はようやく長かった暗いトンネルから出て一息つけた。




