♰♰♰ 理科室へ・・・③ ♰♰♰
「ねぇねぇねぇえええー!!!早くしないとみきが死んじゃう!」
みきが騒ぎ出して鍵を開けようとしている神宮西の集中力を妨害し続けていた。
「お願いだから焦らせないでくれる!?」
「すぐそばにゾンビが迫って来ているのよ!?どうしてみきばかりを襲いに来るの?仕方がないわね。美人には不幸が付き物。これも美人に生まれた宿命よね・・・・。」
「大丈夫。あんたのそのゾンビメイクならゾンビの仲間入りしてもらえる。」
「まーた、みきの事をゾンビって呼んだぁー!!!」
みきを挑発するのは余計みきをうるさくさせるだけだった。神宮西は奥歯を噛み締めながらイライラが貯まっていた。
「私は本当の事を言っただけ!って、あれ?開いた・・・???」
だが、冷静でいるよりも本能に従ったら中から閉まっていた鍵がようやく開いた。神宮西が手を引くと丸之内がすぐにドアを開けて真っ先に理科室の中へと入った。
「よし!コレで僕達は助かる!」
「ちょっと待ってよー!みきが一番先!!」
「待ち給えっ!中の様子を伺ってから入った方が・・・」
上社の忠告も耳に入れずに丸之内とみきは理科室へと入って行った。
「今は先の心配よりも後ろの心配!」
神宮西が上社に向けて言うと神宮西も先に理科室へと入って行った。上社にはまだ心の中がすっきりとしないもやもや感が残っていたが、目に見えないよりも目に見える恐怖が上回り理科室へと入った。上社と神宮西は廊下に取り残されている黒川に早く理科室へと入るようにと呼びかけた。
「理科室が開いたぞ黒川!さぁ、入り給えっ!」
「早くっ!」
二人の声が耳に届いた黒川は消火器を振り回してゾンビ達を蹴散らし、皆の後に続けと理科室へと向きを変え希望へと一歩踏み出そうとした。
が、背後からいきなり複数の魔の手が伸びてきた。魔の手は黒川の制服の上着やズボンのベルトに唯一の武器の消火器を握っている手や肩を掴まれてしまい黒川は身動きが取れなくなってしまった。視聴覚室から出て来たゾンビ達がついに黒川がいる所まで追いついてしまった。
「・・・・・・ち、ちくしょう・・・・・あと・・・・少しだというのに・・・」
三途の川を渡ろうとしていたその時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。黒川は一度は諦めて閉じた目を開いた。友達がまだ希望の扉を閉ざさずに待っていてくれている。
「俺の事を待ってくれている。」
まだ諦めちゃいけないのだと体の底から勇気が湧いて来た。
黒川は頭を下げた。背後にいる一匹のゾンビが黒川の首に喰らいつこうと牙を向けてかかってきた。黒川は息を大きく吸うと息を吐き出したのと同時におもいっきし自分の頭を後ろに反り、後ろにいるゾンビの鼻をめがけて頭突きをくらわした。
後ろにいたゾンビがよろけると黒川は開いている右足で黒川の右腕を掴んでいる隣のゾンビの膝をめがけて蹴りを一発くらわし、ゾンビが黒川の右腕を手放した。
黒川は自由になった右腕で拳を作り、左側の隣にいるゾンビの顔面をめがけてパンチをくらわし、左腕を掴んでいたゾンビは黒川の左腕を手離した。
これでようやく左腕に掴んでいた武器を使える。黒川は消火器を振り回してゾンビ達の群れに向けて消化器を投げつけた。
先頭のゾンビに消火器が当たり後ろに倒れるとその隙に黒川は野球選手のようにスライディングをしていっきに理科室へとすべり入った。その直後、背後で「ガシャン!」と勢い良く扉が閉まる音がしたと同時に「ドスン」と何か物が廊下の外から扉にぶつかる鈍い音がした。黒川はあと寸前の所で地獄へと引きずりこまらされる所だった。
ぜいぜいと苦しい息を整えるのを待たずに後ろを振り向いた。神宮西が扉を閉じたのと同時に上社が鍵を閉めた。視聴覚室を出た時のようにはならないようにと黒川と神宮西と上社は扉から離れた。割れた窓ガラスから外の廊下にいるゾンビ達の無数の手が伸びて来た。
何十年も使われた古臭い木製の扉はまるで生き者のように不気味に蠢き、板と壁がこすれてまるでゾンビのうめき声を発しているかのようだ。だが、なぜかゾンビ達は次々とガラスから手を引っ込めて扉を押す音が静かになり、理科室から背を向けて立ち去っていった。ゾンビ達はまるで理科室側の地獄に気付いたのかのように理科室から立ち去った。上社が後ろを振り向き、こっちを見ると、ヘルメットをグイッと持ち上げて黒川が聞きたかった言葉を言ってくれた。
「どうやら、ゾンビ達はあきらめたらしい。」
「本当か!?その言葉はもう信用できねーなっ!」
「なら、自分で確かめて見給え。」
黒川は割れた窓ガラスの穴から外を眺めてみると先程まで理科室の扉の前まで来ていたゾンビがまるでもっと恐ろしい者がいる理科室を遠ざけたいかのように離れて行くではないか。
「やった!ははっ!ついに俺らはあいつらに勝ったんだっ!」
「長かったけどね・・・・・。」
神宮西の皮肉の言葉にも顔には笑顔があった。理科室の窓を向いていた黒川は後ろを振り向いて理科室の中を見渡して東山と本山や岩塚由里の姿を探した。
「あれれ???本山と東山がいないぞ?岩塚さんの姿も見えない。」
その時、横からいきなりゴンっ!となにか硬い物が頭にぶつかった激しい音と共に黒川の視界が暗闇へと閉じた。世界が暗闇に閉ざされた中で悪魔の声を聴いた。
「よくも、人の許可もなしに部屋に入ってきやがって、クズ野郎にはお仕置きが必要だ。」




