♰♰♰ 理科室へ・・・ ♰♰♰
黒川達は視聴覚室から廊下へと出た第2校舎の4階の廊下を走っていた。丸之内はまるでサウナにいるみたいに大量の汗を流し、ぜいぜいと息を切らしていた。
「ねぇ~亮ちゃ~ん!そろそろ休憩しようよ~」
「何言っていんだコウちゃん!視聴覚室を出てからまだ5秒もたってないじゃんか!」
「後は廊下をまっすぐ進むだけで理科室につくのだ。我慢したまえ。」
上社が両手で丸之内の背中を押して走りながら言った。
「でもいったいどうして学校中にゾンビがうろついているの???」
ずっと視聴覚室に籠っていた丸之内は外に出た途端に自分がまるで浦島太郎にでもなったみたいに学校が変わり果てた事に驚いた。生き延びた者にだけ与えられた宿題だ。
「さぁ、どうしてだろうな?とにかく今はその謎を解く事よりも・・・」
黒川がの目の前に一匹の女子生徒ゾンビが教室の中から廊下へと現れて黒川達の行く手を妨害してきた。ここは学校なのに今は宿題の答えを教えてくれない。神宮西が走る速度を加速して黒川の前に出て黒川の言葉の続きを言った。
「安全な場所に逃げる事。」
神宮西は顔色を崩さずに女子生徒ゾンビを消火器で殴り飛ばし、ゾンビは横にある窓ガラスの向こう側にある教室までぶっ飛んだ。黒川と丸之内は神宮西にぶっ飛ばされて教室の床にうずくまるゾンビを恐縮しながら見た。顔を前に戻すと神宮西はすでに倒した相手の事なんて忘れてしまったように後ろを振り返る事もなかく走っていった。
「大丈夫だ、コウちゃん。どうやらうちにはセガールがいる。それにきっと理科室に行けば本山と東山が居るハズだ!岩塚さんも。」
「そうか!あの迷惑コンビの姿を見ればゾンビだって逃げ出すさ!あと、うちの学校の中では一番賢い高畑くんがいたらなぁ~」
黒川と上社と神宮西の間に気まずい沈黙が流れた。
「コウちゃん。高畑は・・・・・」
黒川が高畑の事を丸之内に告げようとした途端、背後から何か物が壊れたような激しい音がした。黒川達は立ち止まり、後ろを振り向いた。すると視聴覚室の扉を中から開かないようにしていたつっかい棒がついに壊れ、ゾンビ達が視聴覚室の中からぞろぞろと廊下に出て来た。みきがさわぎだした。
「どーするのっ!視聴覚室から化物ちゃんがまたみきの事を襲いに来たじゃない!?」
「奴らはのろのろとした足取りだから僕達には到底追いつかない。だが、数の方では圧倒的に奴らが上回る。」
上社の予告通りに突き当たりの理科室の前にある左側の渡り廊下と右側に下の階へと降りる階段がある交差点から数匹のゾンビ達が現れてきた。しかし神宮西がゾンビ達に消火器の煙を撒き散らしてゾンビ達が煙で目が見えていないその隙に黒川達はまんまとゾンビ達の横を通り抜けてついに突き当たりにある理科室の扉の前までやって来た。神宮西は扉を開けようとしている黒川達に背を向け煙が晴れた後で再び消火器の煙をゾンビ達にかけながら後ずさりをして理科室へと近付いて行った。真っ先に理科室の扉についた丸之内が理科室のドアを開けようとした。
「あれれ?おかしいな?ドアが開かない???」
丸之内は何度も引き戸を引っ張ってみたが、ガチャガチャと鍵が開かない音を立てるだけでまるで黒川達を避けているようにドアは開こうとしなかった。みきがなかなか理科室の扉を開けられない丸之内をじれったく感じて不満をぶち撒けた。
「もう~早くしないとゾンビ達がみきの事をレイプしに来ちゃうじゃない~!」
上社は丸之内が何度引いても一向にびくともしない扉を如何わしく感じた。
「ひょっとすると・・・理科室の中からドアに鍵が閉まっているのじゃないのか?」
皆の視線がまだ見えぬ理科室の扉の奥へと向いた。
「鍵が閉まっているのは解るけど、中から鍵がかかっていると言うのはどういう意味?」
丸之内がメガネをクイッと上にかけなおして尋ねると上社よりも先に黒川が答えた。
「放課後は科学部が理科室を利用しているから外からカギは閉めていないはずだ。コウちゃんは校内放送を止めている視聴覚室にいたから知らないだろうけど、俺達が視聴覚室に来る前に放送室に行って生き残った生徒がいるなら理科室に集まろうと全校生徒を校内放送で誘った・・・。」
「なになに?つまりど言うことなのよ???みきにもわかるように言って!」
黒川と上社と丸之内が言わなくてもわかるだろ・・・と内心は思いつつもみきを相手に反論するのはゾンビを相手にするよりも疲れるから仕方がなく上社が黒川の回りくどい説明をみきにもわかりやすい一言で説明をした。
「理科室の中から誰かがカギを閉めた人がいると言う事だ。」
「つまり中にいる人がみきを理科室へと入れてくれるのよね!そうなのよね!」
丸之内はメガネを外してレンズの曇りをハンカチで拭き終えるとメガネを掛け直した。
「無理だ。この子は希望的観測メガネでこの世を見ているからど直球でいかないと。」
「丸之内の言う通りだ。直球で言おう。理科室の中にいる人が外に僕たちがいる事に気付いているハズなのに鍵を開けて僕達を理科室に入れてくれないのはおかしい。」
「嘘!?嘘よねっ!?嘘だと言ってっ!お願いだから早くドアを開けてよぉぉー!!」
みきは両手でドアを激しく叩いて中にいる人に訴えた。黒川は後ろを振り向いて背後にいるゾンビ達が自分達に辿り着くまでのタイムリミットが後どれくらいまで残っているのかを確かめた。神宮西が消火器の煙をゾンビ達に撒き散らしているが妙だ。消火器の音が徐々に小さくなってきている。消火器から吐き出される煙も次第に小さくなってないか?と黒川は嫌な予感がしたのをすぐに拭い去ろうとしたのだだが、消火器のホースの先から出る煙がさらに小さくなっていき、ついに煙がホースの先から出なくなった。
「ア、アレ?」
神宮西の口から初めてまぬけた声を聴いた。神宮西は何度も何度もレバーを握るが一向に消火器から煙は出てきそうにない。最後の最後にまるで酔っ払いのゲップのような音が出ただけで後は何も出てこなくなってしまった。黒川の顔が青ざめた。
「どうやら僕達の命運もここまでらしい・・・・。」




