↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/143

♰♰♰  伝説のユーチューバーになった男  ♰♰♰


  黒川達は早く丸之内を助けに行こうと階段を駆け登っていた。その後ろを走って着いてきているみきは不満たらたらな文句を途切れる事なく黒川達に向けた。


「もぅ~足が動けな~い!!これ以上みきを走らせないでよねぇ~!!!」

「君、疲れている割にはさっきから口がよく動いているじゃないか。」


上社が階段の下で壁にもたれているみきに反論した時に突然、悲鳴がした。


「ギャアアアアアアア!!!!!!!!」


先頭を走っていた神宮西が立ち止まり、後ろを振り返って背後にいる黒川とお互いに顔を見合わせた。今まであまり話た事がないが、今のおぞましい世界にいるという共通点だけで口に出さなくても意思を疎通させた。恐ろしい想像が黒川の脳裏によぎった。


「あ、これはもう手遅れよね。じゃあお友達を救うのを諦めてさっさとみきを理科室に案内して。」


みきの常識はずれの腹が立つ空気の読めなさのおかげで最悪な事態を予想していたのがみきを否定したい気持ちがどっと押し寄せてきた。


「悲鳴が聴こえたからと言った手遅れだとは限らん。ゾンビと遭遇しただけかも。」


上社の言葉に黒川と神宮西が自分が今、何を最優先するべきなのか思い出させた。


「その通りだ。今すぐにでもいけば間に合うかもしれない。」


黒川と神宮西は階段をいっきに登りあげてあっという間に視聴覚室の扉の前まで駆けつけた。みきはせっかく黒川が丸之内を助けに行こうとするのを諦めてくれるのかと思っていたのに上社に横から水を差されたので怒った。


「なんで余計な事を言うの!?」

「余計なのは君の存在だ。」


視聴覚室の扉は引き戸となっており、長方形のガラスが埋め込まれていて視聴覚室の中にある光が廊下へと漏れていた。黒川がさっそく引き戸を引くと視聴覚室の真っ白い四方の壁に光が反射してあふれる眩しい光が黒川に襲いかかった。目を細めながら黒川は友人の名を叫んだ。


「大丈夫かい!コウちゃん!!!!」

「はぁーい!!カットぉ!!!!」


あまりにも緊張感のない返事に黒川と神宮西は拍子抜けした。除々に目が慣れてきた黒川と神宮西の目に入った光景は階段教室となっている視聴覚室の階段の一番後方の高い位置にずらりと横に並んでいるゾンビ達が、一段ずつ下に降りるたびに横一列に並んでいるゾンビが減らされて逆三角形が出来上がり、逆三角形の頂角である先頭の下の位置に何故か上半身裸の上にブレザーを羽織っている荒畑がいて背後に逆三角形に並んでいるゾンビ達と一緒に横を向いて両足をくの文字に曲げ、両手を上にあげてマイケル・ジャクソンのスリラーのダンスのポーズをとっていた。荒畑がいる向かい側のスクリーンの前にスマホを手にもって荒畑やその背後にいるゾンビ達の動画を映している丸之内がいた。


「駄目じゃない~撮影の邪魔をしちゃあ~」

「撮影ッ!?」


黒川と神宮西がいろんな意味で驚いていた。


「僕達は今、マイケル・ジャクソンのスリラーを踊っている動画を撮影している最中だ。本物のスリラーよりもよりリアルでスリリングなスリラー動画を!」


先頭で踊っていたマイケル・ジャクソン役の荒畑がまるで自分は舞台の上にでも立っている主役のように声を大きく張り上げていた。丸之内と荒畑がゾンビ達を警戒せずに普通にエキストラのような扱いをしている為に神宮西と黒川は本気でこれはなにかの映画の撮影かそれともドッキリじゃないのかと疑った。


「あっはは~!何、幽霊でも見たような顔をしている?でもお前らの驚く気持ちもわかる。俺だって最初にこいつらを見た時は驚いたさ!でも、この動画はきっとすごい物になる!」


黒川と神宮西は互いに顔を見合わせてどうやって荒畑にわかるように説明をしたらいいのだろうか?と互いに気まずそうな顔をした。だが後から視聴覚室の出入り口の前にやって来た上社が荒畑や丸之内に素直な感想を言ってしまった。


「荒畑、スリラーよりもスリラーで同然だ。お前の背後にいる奴らは本物のゾンビだからな。」


荒畑と丸之内は一瞬だけ表情が固まったが、その後でどっと笑い声が腹から押し寄せてきた。


「あっはははっ~!上社!今日も相変わらず電波を飛ばしまくっているねぇー!」


荒畑はツバを口から吐き出しながら笑っていた。


「昨日なんて他人に無視されただけで自分が透明人間になったのじゃないかと焦っていたよね!実際は妙なヘルメットを頭に被っている上社を皆が避けているだけなんだけどっ!」


防音設備の視聴覚室でさえ外に笑い声が漏れそうなほど丸之内は腹から笑っていた。


「コウちゃん。上社のくだらない電波も言い続ければいずれ一度は当たる時がある。」


黒川の言葉の続きを神宮西が言った。


「そのたまたま当たった日が今日・・・・。」


荒畑は皆が自分と丸之内を騙しているのだろうと思っているが丸之内は幼馴染でありよく知っている黒川の本気の時の表情を見て本当ではないのだろうか?と疑いを持ち初めた。そういえば今まで話した事もない神宮西がいるのも不自然だ。


「ぎゃっはは!本気にするよ丸之内!きっと黒川達のドッキリだっ!俺達を騙そうとして上社と一緒にグルになっているのだ!」


後から視聴覚室のドアの前に来たみきが上社の背後で荒い息を整えながら呟いた。


「はぁ~ここにも馬鹿だと気付かない馬鹿が二人・・・・」

「誰だよ。あんた。」

「荒畑、俺達の言う事を信じなくても良いからとにかくその化物達から離れてくれ!」


黒川も初めてゾンビを見た時は半信半疑だったから自分達の言う事が信じられないと思う荒畑や丸之内の気持ちは理解できた。だが、今は一刻も早く二人を非難させなければならない。なのに荒畑の高笑いは尚も続いた。


「やめてくれ~俺は騙されないぞ。」


荒畑は黒川達の冗談に騙されないぞと示す為に背後にいるゾンビと肩を組んだ。黒川達は心臓が飛び跳ねそうな程に驚いた。


「それともお前らの頭がついにイカれちまってこいつらが本物のゾンビにでも見えちゃったの???おいおい、勘弁してくれよ~お前ら病院に行った方がいいのじゃない??俺らは今日がお互いに初対面同士だったけど、一緒にふざけあった仲だし、良い奴らだよ!もうすでに俺たちは親友だ!だよなっ!?」


荒畑が同意を求めるように自分と一緒に肩を組んでいる男子生徒ゾンビの横顔を見た。すると男子生徒ゾンビの肩がずれ落ちて下にぽとりと片腕が落ちた。荒畑は唖然として床に落ちた片腕を見たら荒畑に肩を組まれていたゾンビは失った片腕を取り戻したいかのごとく隣にいる荒畑の片腕に噛み付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。