♰♰♰ 理科室へ向かう者たち ♰♰♰
中村みきは図書館で危機を脱出したのはいいが黒川がアナウンスで待ち合わせ場所に指定した理科室の場所がわからないので職員室に行って先生に理科室の場所を教えてもらおうと第1校舎の3階から一番下の職員室へと向かって階段を降りていた。
「人っ子一人もいないなんて、今日はやけにお葬式みたいに静かよね~誰か死んだの?」
葬式はとっくに始まっていた。死人が大人しく棺桶に収まってくれないのが問題だが。今はちょうど葬式のレクイエムが流れている時間だ。みきが一段ずつ階段を降りるのに合わせて演奏はクレッシェンドする。そしてもっとも盛り上がる音が出る瞬間。みきが2階の階段を降りて左に曲がって1階へと向かう階段を降りようとしたその時、階段の下でみきを待っていたのは先ほどみきを襲ったゾンビと化した生徒とそっくりな見た目をしている3匹のゾンビだった。
「えぇーーまたぁぁぁー!!!?」
みきは来た道を引き返そうと慌てて階段を3階まで駆け上がったのだが、4階に向かう階段の上にもゾンビが2匹いたのだ。
「もぅー!どこへ行ってもみきを襲おうとするレイプ魔ばっか!」
上の階にも下の階にもゾンビに挟まれたみきは仕方がなく職員室に行くよりも3階のゾンビがいない第2校舎へと渡れる渡り廊下へと向かうべきだと考えた。
「どうしてこうもピンチの連続なの??いったい何時になったら現れるのよ~!みきの王子様はぁぁ~!!!って、アイタっ!!!」
みきが第1校舎の階段から3階の廊下へと着いた時、隣の曲がり角の廊下から突然現れて来た何者かとぶつかってみきは床へと尻餅をついてしまった。
「・・・・ごめん。君、大丈夫かい?」
みきとぶつかった相手はさっそくみきにあやまってきた。声からすると男性のようだ。
「まさかっ!やっとみきを救いに来てくれた王子様が現れてくれたの???」
みきは痛めたお尻をさすりながらやっと自分を救ってくれる王子様が現れたと期待して顔をあげた。だが、ぶつかってきた相手がみきの顔を見た途端、叫び声をあげられた。
「ぎゃぁああ!またっゾンビかぁあああ!!!!!!!!!!」
「ちょっとぉ!!!!!!だぁっれがゾンビよっ!」
みきとぶつかった相手は先ほど保健室で一難を逃れた池下恭一であった。恭一は先ほどみきとぶつかった衝撃でずれたメガネをかけ直した後でみきの顔をよーく見た。
「あ、あれ?人間なの??君?」
「こんなかわいい女の子のいったい何処をゾンビと間違えるのよっ!あんた失礼じゃない!?」
「わっーー!ゾンビだぁあああああ!!!!!」
「またみきの事をゾンビと間違えてぇー!!なんて失礼な奴ッ!!」
「違うっ!今度は本物のゾンビだっ!!」
「えっ!?本物????」
みきは恭一が指を差した自分の背後を振替った。すると、先ほどみきを追いかけてきた数人のゾンビ達は餌があるみきと恭一の方へと向かって階段を降りているではないか。
「きゃああああああああああ!!!!!」
「うわああああああああああ!!!!!」
みきと恭一はまだ出会ったばかりなにも関わらず、仲良く同時に叫び声をあげながら第1校舎から第2校舎へと渡る渡り廊下を走ってゾンビから逃げて行った。
一方、その頃、上に登る階段を駆け登っている黒川を先頭に上社と神宮西が後について行きながら丸之内がいる視聴覚室へと向かっていた。黒川は後ろを振りかえり上社と神宮西に向かって言った。
「別に俺に付き合わなくってもよかったのにさ!」
そう言いつつも黒川の顔はなんだか嬉しそうだ。
「仕方がないだろう。君じゃあ頼りない。」
上社が正直に言った。
「むしろ足手まとい。」
神宮西も正直に言った。
「傷つくじゃんか・・・。」
黒川は後ろを向いたまま3階へと階段を登っていた。だが、3階にあがった時に突如三階の渡り廊下から第2校舎へと渡った何者か達と黒川は接触した。黒川はゾンビと遭遇したかと思い雄叫びをあげた。
「また、ゾンビかぁあああ!!!!!!!!!!!」
神宮西は咄嗟にゾンビだと思われる者に消火器の煙を放った。だが、煙の奥から聴こえてきた声はゾンビではなく人の声だった。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!ちょっとぉぉおお!!だぁっれがゾンビよっ!」
黒川が目を凝らして煙の奥をよく見た。
「あれ?ゾンビじゃないぞ?」
「当たり前じゃんっ!」
いきなり渡り廊下から現れて来たのは中村みきと池下恭一だった。
恭一だけは神宮西にゾンビだと思われずに消火器の煙に巻き込まれずに無難であったか、自分だけゾンビと間違えられて消火器の煙をかけられた中村みきは全身を白い泡だらけにさせられてまるで口から泡を吹くカニのように口から泡をはき出して黒川達に文句を言った。
「どいつもこいつもどーしてこんなかわいい子のいったいどこをゾンビと見間違えるのっ!?どう考えたってみきより宇宙人みたいなこいつの方が怪しい!!」
中村みきは妙なヘルメットをかぶっている上社の事を指さした。上社は宇宙人のでかい目の瞳孔を大きく見開くと、みきの方へと指を指した。
「ゾンビだっーーー!」
「またみきの事をゾンビと間違えて!もう、いい加減にしてっ!その手には乗らない!」
「頭を下げてっ!」
神宮西が叫ぶと再びみきと恭一に消火器のホースを向けてきたから、みきと恭一はまた自分達に煙を向けるのかと咄嗟に床にしやがみ込んだ。頭上からしゅわわわわ!と消火器の煙が放出される音がした。だが、一向に自分達に消火器の煙がかかってこない。みきと恭一は背後を振り向くと先ほど自分達を襲いに渡り廊下からやって来たゾンビ達が白い泡をかけられてもがき苦しんでいた。恭一がメガネを掛け直した。
「た、助かった・・・」
「実は安心するのはまだ早いのだ。」
上社が親指を突き出して背後にある自分達が来た道である階段の下を指した。
「実は俺達もゾンビに追いかけられている。」




