↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/143

♰♰♰ 救世主はいた!!② ♰♰♰

ゾンビ達は「やられるっ!」と思い咄嗟に両腕で身構えて後ずさりをした。が、椅子はまったくこっちに来る気配はない。ゾンビ達は本山と東山の方を見た。すると本山が持っていた椅子は後ろの窓の前に置かれていて本山が椅子の上に両足を載せていた。椅子はゾンビ達を攻撃するのに使うのではなくて窓から逃げる為の踏み台に使われていただけであった。本山は窓枠に両足を乗せて真由達がいる外へと降りようとした。


「おっせぇよ、デブ。」


東山が後ろから本山の背中を蹴った。本山は背中を蹴られた衝動で外の足踏みに使われたサッカー部ゾンビの背中の上へと落っこちた。東山も先に降りた本山に続けと椅子の上に乗り、窓枠に両足を載せて、外へとジャンプした。着地した場所にはうつ伏せになって倒れている本山が東山の着地台になった。


「本山、お前いつまでそこで寝ている?」

「お前、ぜぇェェェっっってぇーわざとだろ!」

「いいからさっさとここから逃げようぜ。」


東山は窓から降りた場所から左へと走って行った。夏樹と麻子と真由も東山の後に着いて走って行き、ようやく立ち上がった本山が慌てて4人を追って行った。職員室のゾンビ達は本山達の後を追っかけようと窓枠に指を乗せた。だが、その時。


「おっと、戸締まりはちゃんとしないと。」


戻って来た本山が外から窓を閉めた為に窓枠に指を乗せていたゾンビ達の指は窓に挟まれて切断されて外にぼろぼろと指が取れてしまった。東山が向かっている先の突き当りを左に曲がれば校舎の玄関へと辿り着く。


だが、かつて人間だった頃の習性で毎日、学校に入る為に利用していた玄関にはゾンビ達がうろついていた。玄関前に数匹たむろっているゾンビを見た東山は玄関に入るのを断念し、玄関から隣にある男子トイレの壁の前で立ち止まると真由達も男子トイレの前に立ち止まった。東山はなぜか地面を見渡して何か探し物でもしているようだ。後から本山が追いついて来たタイミングで東山が探していた物が見つかった。


「あった。」


それは握りこぶし程の硬い石だった。東山は硬い石を手に持つと男子トイレの扉の前までやって来た。本山が真由達に忠告した。


「離れた方がいい。」


真由達はわけもわからないままただ忠告に従って後ろに引き下がった。それを確認し終えた東山がいきなり男子トイレのガラス窓を石で割った。バリーンッ!と激しくガラスが割れる音がした。東山が割れたガラス窓の穴から腕を突っ込んで外から窓の鍵を開けさせると窓を引いて真由達に向かってトイレに入るように手で先導した。


真由達は支持された通りにトイレのドアの隣にあるパイプを掴み、本山と東山に窓からトイレの中へ入るのを助けて貰いながら3人は男子トイレの中へと入った。こんな事態が起きなければ3人は男子トイレの中へ入る機会なんてなかっただろう。トイレの外から東山がおだやかな口調で言った。


「トイレの隣にある階段を登って4階の突き当りの教室に黒川って奴がいる。そいつに助けを求めばいい。」

「でも、あなた達はどうするの?」


夏樹が訪ねた。


「そうだよ。一緒着いてきて。」


真由が懇願すると東山は自分達が来た道をちらっと見た後で言った。


「まだやり残した事がある。」

「大丈夫だ。黒川はいつも俺達の期待を裏切らないからさ。」


本山の穏やかな表情を見たら今が非常事態だなんて到底思えないくらいだ。本山と東山に言われると不思議と安堵していき夏樹と真由は生まれ変わったかのような顔をして男子トイレの出入り口へと向かった。残された麻子がトイレの窓から顔を覗かせて本山と東山に言った。


「あのぅ・・・さっきは助けてくれてありがとう。」





東山と本山がお互いに顔を見合わせて二人共驚いた表情をすると麻子に顔を向き直し満面の笑顔を向けて手を振った。麻子は口の両端を軽く上げて微笑み返すと真由達の後を追っかけて行った。麻子がいなくなった後で本山が隣にいる東山に話しかけた。


「お前もなのか?」


東山は首の襟を引っ張って噛まれた傷跡を本山に見せた。すると本山も肩腕の制服が破けている所を東山に見せた。破けた制服から覗いている皮膚にゾンビに噛まれた傷跡があった。二人は顔を見合わすとお互いにマヌケっぷりを笑いあった。東山が下品な大声で笑いながら本山の背中を押した。


「はははっ!ほら、見たか?お前が現れてきた時のあの子達の顔!お前の顔を見てゾンビを見た時のようにびびっていたじゃないか!」

「俺は東洋のベッカムと言われているのだぞ!」

「ブタ界のベッカムだろ?」


本山はまるで怒ったブタのように鼻息が荒くなった。東山は本山の顔を見てしばらくは途切れない程に笑っていたのだが、突然の風が吹いてろうそくの火がふと消えたように東山のふざけた顔から笑顔が消えると、自分達が来た道である背後を振り返った。


そこには職員室の窓から外へと飛び出してきたゾンビ達が逃げ出した餌を追いかけに来て本山と東山に追いつけそうな程まで近付いていた。それだけではない。先程、東山が窓ガラスを割った為に玄関や近くの運動場から騒ぎを聴きつけた50匹程いると思われるゾンビ達の群れが暗闇の奥からぞろぞろと本山と東山に向かって来ていた。


「俺らってほんとモテるな。」


本山が自分達の周りに集まったゾンビ達を見渡しながら言った。


「なぁ」東山の顔にはどこか自虐じみた笑みを浮かべ哀愁がただよう声がしていた。

「俺達、来年はきっとチョコをいっぱい貰えるよな?」


本山がいつものようにふざけた事を言い返した。


「当たり前だ!高畑よりいっぱい貰えるぞ!さぁ、いくぞ!」


本山が東山の背中を叩くと東山の表情に活気を取り戻していき自分達に向かってくるゾンビがいる方へと向かって行った。それは彼らが高校生活最後のラグビー部の引退試合の時によりによって全国大会の常連である強豪とぶつかってしまった時に負けるとわかっていたのに全力でぶつかって行った時のようだった。


 真由達はゾンビ達と遭遇する事もなく無事に階段を駆け登って4階へと向かっていた。その時に突然の校内アナウンスが流れて来て3人は途中で立ち止まった。


『生き残っている諸君!理科室で会おう!!』

「ねぇ、今の聴いた?」麻子が訪ねた。

「理科室で会おうって言った所?」真由が言った。

「違うっ!アナウンスをしている人が自分の名前を言った所!」

「ああ!確か俺は黒川とか言っていたね。」


夏樹が言うと真由がようやく麻子の言っている意味に気がついた。


「そうかっー!さっき私達を助けてくれた人が『黒川はいつも俺達の期待を裏切らないからさ』とか言っていたね!黒川ってきっとアナウンスをしていた人の事だよねっ!」

「多分そうだと思う。だから黒川って人がアナウンスで言っていた理科室へ行こ!」


夏樹が言い終えると3人は駆け足で階段をかけ登って行った。職員室で絶望に向かっていた時とは違い、今は希望へと向かって上へと昇って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。