♰♰♰ ゾンビ放送後。。。 ♰♰♰
その頃、黒川と上社と神宮西は廊下を走って後ろから追ってくる6匹のゾンビ達から逃げつつ理科室へと向かって行った。数ではゾンビが勝るものの逃げる速さでは人間の方が上回る。3人はあっという間に自分達を追ってくるゾンビ達と距離を離していき、安息の地である理科室へと近づいて行った。上社が後ろを振り向きながら言った。
「後ろに化物がいるが、前に化物はいない。このまま順調に理科室に行けるぞ。」
だが黒川の足は重い鎖に縛られていた。果たしてこのままで本当にいいのだろうか?理科室へ近づくたびに鎖がさらに重くなっていた。やがて黒川は迷って何もせずに後悔をするよりも何かをして後悔する方を選んだ。渡り廊下と上の階へと行く階段の間に挟まれた所まで辿りついた時に黒川がいきなりその場に立ち止まった。黒川の前にいた上社は後ろから聴こえてくるハズの黒川の足音が止まって不思議に思い後ろを振り返った。
「いきなりどうして立ち止まったりしたのだ?」
上社の前を走っていた神宮西も上社の言葉を耳にしてその場に立ち止まって後ろを振り返った。黒川は今、足元を見て何やら難しく考え込んでいた。ゾンビの足取りは遅いから今は少しくらい休んでも問題ないだろう。だが、数では圧倒的に向こうが有利だ。逃げても何処にでもゾンビがいる。今は悩んでいるヒマなどない。神宮西は立ち止まっている黒川に近寄った。
「一体どうしたの?」
「・・・・・ゴメン。俺、やっぱ理科室に行けない。」
神宮西と上社は地球が引っくり返されるほど驚いていた。
「いきなりどうして???」
「そうだ、今まで何度も危機を乗り越えて来たという時にまたゾンビがいる荒波に飛び込むのは自殺行為だ?」
「でも俺、行かなきゃ。コウちゃんを助けに。」
神宮西が信じられないと驚いていた。
「放っておきな。どうせ丸之内達だってさっきの放送を聴いているだろうし。」
「・・・実はコウちゃん達がいる視聴覚室に皆でプリンキュアの映画を見ているから、映画に集中する為に校内アナウンスを切ってある。」
「だが教室で丸之内の事などどうでもいいと言ってたではないか。」
上社は後ろを気にしながら反論した。
「丸之内の為に黒川が骨を折る事なんてしなくてもいい。」
「ああ、その通り。コウちゃんは助ける価値なんてない!」
自分でもなぜ腹が立つのかよくわからないが、丸之内の批判事よりも自分が助けに行こうとしているのを止められる方が腹がたっていた。
「今は大勢の人が人間をやめちゃった状態だからこそ俺が人間である為にコウちゃんを助けに行く事に意義がある。コウちゃんはきっと今頃、視聴覚室でゾンビに怯えて泣いて震えているに違いない。」
※※※
その頃、視聴覚室では・・・。丸之内がプリンキュアちゃんの映画を見ていたというのに後ろから何者かが自分の肩に触れてきた。せっかくの楽しみを邪魔されて不機嫌になった丸之内は肩を叩いた奴に一言文句を言ってやろうと後ろを振り向いた。するとそこには見るもおぞましい光景が待っていた。
「い、一体、君たちどうしたのだ?その格好っ!!」
そこには青白い顔をして腐ったような臭いをした奴がうじゃうじゃと丸之内と荒畑の周りを囲んでいた。丸之内はゾッとして背筋が凍り、体中に変な汗が出てきた。
「お、おい!荒畑!!ちょっと見ろよ!やばいぞ、これ・・・」
丸之内はプリンキュアちゃんの映画に夢中になっている荒畑の背中を叩いた。
「なにがやばいのだって?」
荒畑も背後を振り向くと自分達を囲んでいる気味が悪い奴らを見て驚愕した。
「嘘だろ・・・・・・・・これって・・・・・・・」
息を飲み無言で丸之内とお互いにアイコンタクトをした。深くて長い沈黙の中に共通の緊張が走った。
「すっげええええええええええ!!!!!!!!」
「なっ!?すごいだろ!皆、よくゾンビに似せているよな~!!」
丸之内は背後から自分の肩を叩いてきたゾンビのコスプレをしていると思われしき男子生徒の腕を掴んで高く持ち上げた。
「とくにこの腐りかけた肌の作りなんて凝りまくっているよな~!おやっ!骨まで見えているっ!本当に腕が腐っているみたいだ。」
丸之内達はあまりにも本物のゾンビそっくりなゾンビのコスプレらしき者にすっかり感心してしまい、観察してみたり、体のあちこちに触れてみたり、いじったりした。荒畑は自分の後ろにいる片目から目玉が垂れ下がっている男子生徒のゾンビの顔に目を近づかせて飛び出ている目玉に触れて感触をあじわったりしてすっかり改心していた。
「きもいけどここまで本格的に作っているなら改心してしまうわ。あっ、目玉が取れた。」
「こりゃあハリウッドの特殊メイクも驚くぞ!」
「そんなに感心しているならこの目玉を丸之内にあげるよ!ホレ!」
荒畑は男子生徒からもぎ取れた目玉を丸之内に向けて放り投げた。
「やめてよ、気色悪い。」
丸之内は荒畑が投げつけた男子生徒の目玉を手でおい払った。床に落ちた男子生徒の目玉がまるで殻が割れた生卵のように床で潰れた。ゾンビのコスプレをしているらしき男子生徒は悲しそうに「あうーあうー・・・」と呟きながら自分の潰れた目を見ていた。
「なぁ!せっかくだからコスプレをしている皆さんと写ろ!」
荒畑がポケットの中から自身のスマホを取り出した。丸之内はちょうど隣にいる腕から骨が見えている男子生徒ゾンビと肩を組んだ。
「はい、チーズ!」
カシャ!とカメラのシャッター音が鳴ったと共に眩い光が視聴覚室を照らした。丸之内は黒川と絶縁した後ですぐに気のいい親友達を見つけた。
「よし!じゃあ次は俺も写りたいから誰か撮影頼むわ。」
「じゃあ、俺がやるよ。」
丸之内は今まで撮影していた荒畑からスマホを受け取ると今度は撮影する側に回ろうとした時、背後から何者かの白い手がいきなり丸之内の肩に置かれた。その手は鉛のようにどっしりと重く、氷のように冷たかった。まるで幽霊が背後に立っているかのように背筋が凍った。恐る恐る後ろを振り向くと丸之内の背後に口を大きく開けてまるで腹をすかせて長い舌を口から垂らした犬のような興奮状態の男子生徒が片手を丸之内に向けて立っていた。
「あ、ひょっとして俺の代わりに撮影してくれるの?」
男子生徒は何も言わずに軽くうなずいた。
「ありがとうッ!!お前すごく良いやつだな!!」
丸之内は撮影に使っていたスマホを男子生徒に手渡した。
※※※
一方、黒川は・・・・。
「俺には聴こえる。コウちゃんが俺に助けを求めて嘆いている声が・・・。」
※※※
その頃、視聴覚室で丸之内は・・・・。
「お前らってほんと良い奴ばかりだ!中には初めて知り合いになる奴や年が違う人もいるけどさ、なんかまるで昔からの親友のようにお前らとはウマが合うよ!」
「よしっ!じゃあ次は変顔を皆で写そうぜ!」
「僕たちはコイツらの変顔には負けるけどね!」
丸之内と荒畑の微笑ましい笑い声が響いた。丸之内は黒川という親友をなくしてもすぐ変わりの親友を見つけた。ゾンビのコスプレをしていると思われる連中達と仲良く変顔を撮影し終えると荒畑は興奮状態で激しい息遣いをしながら言った。
「さっそくこれをSNSに広めよ!俺達は今日のトレンドになれる!」
「ああ、きっと社会の底辺の連中が俺達の事を羨ましがるぞ。」
「丸之内。実は俺は子供の頃はポケモンマスターになるのが夢だった。」
「まぁ、子供の時は誰もが一度は目指すよね。」
「いや、俺はつい最近までポケモンマスターになるのが夢だったぞ。でも、今はユーチューバーになるのが夢なんだッ!!」
だが、そんな荒畑の夢も日本のあちこちですでにゾンビの画像がありふれすぎているほど出回っていた。それのどれもこれもがゾンビが人を襲って肉や腸を食べている画像や映像だった。だが、日本は広しと言えどゾンビと仲良く肩を組み、変顔をしている画像を撮ったのは丸之内と荒畑だけであった。
※※※
一方、黒川は・・・・。
「ゴメン、二人を巻き込む気はない。先に理科室に行ってくれ。」
黒川は決心を決めると視聴覚室に向かう為に3階へと階段を昇った。残された上社と神宮西はお互いに意見の同意を問うように顔を見合わせた。
「で、君はどうする?」
「どう考えたって黒川が一人でやっていけるワケないでしょ。」
「だよねぇ。」
こうして上社と神宮西も加わって黒川と一緒に丸之内を助けに視聴覚室まで向かった。




