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♰♰♰  ゾンビ放送  ♰♰♰

黒川達は気を取り直して放送室へと向かった。渡り廊下を渡って第二校舎に辿り着くと横の廊下から3匹のゾンビが現れたが神宮西がゾンビ達を消火器の煙を浴びせて蹴散らしていき、黒川と上社は勿論、神宮西まかせで自分達は一切何もせずに第二校舎の階段を降りて行った。1階まで降りると角を曲がって放送室まで辿り着いた。上社が放送室のドアノブを回した。が、ドアが一向に開く気配がない。


「閉められている・・・・・」


長く苦しんだ崖をよじ登り、崖の頂上にようやく手が触れた途端、崖がいきなり崩れて真下へと墜落されたような気分になった。希望を抱かせられるのは時には残酷だ。


「放送室に鍵がかかっているなんて小学生でも考えつく事じゃないか!馬鹿馬鹿!俺の馬鹿!」

「あの時は願望だけが先走ってしまった!馬鹿馬鹿!僕の馬鹿!」


上社は両手で自分のヘルメットを殴っていた。黒川も上社も非常時に解決策を先決に考える事よりも自分を責める事を先決に言い合っていた。だが一人だけは冷静だった。


「どいて。」


たった一言で充分だった。凶器を頭上に振り上げて、まるでニューヨークのビルの上に立ったキングコングさながらな神宮西に言われると黒川と上社は自然と道を神宮西に譲った。そして神宮西は振り上げた消火器をドアノブに思いっきりぶつけるとドアノブは簡単にドアから外れて弧を描きながら床に落ちた。黒川と上社は呆然とその場に立ち尽くしてただ床に落ちたドアノブを見ているだけだった。神宮西はドアを押した。


「ほら、開いた。」


神宮西に押されたドアはどうぞ、この先に待っている狂気ワールドへとお入り下さい。と歓迎していると言わんばかりに開いた。ドアが開く幅が広がるたびに放送室の中の狂乱した血しぶきだらけの部屋が目に入った。血溜まりの海とくちゃくちゃと何かを口に含んで食べている音がする。嫌な予感が稲妻のように走った。だが、恐ろしい物ほど見たくなる。扉が半分以上は開いた。


すると校内放送を流すマイクが置かれてある机に背を持たれて青白い顔がだらんと肩に倒れて、床に足を広げて座っている一人の放送部員と思われし男子生徒がいた。男子生徒の右肩から血だけが流れているだけで右腕がなかった。そして扉は全開に開かれた。男子生徒の前に黒川達に背を向けている同じ放送部員と思われし女子生徒のがしゃがみ込んでいた。先程から聴こえてくる捕食しているかのような妙な音は彼女から聴こえてくる。彼女は一心不乱に何かを食べている。


目を凝らして見ると女子生徒は男子生徒の引きちぎられた片腕を手に持って口でかぶりついた。鋭い牙で肉を引きちぎると男子生徒の腕から白い真珠のような骨が見えた。黒川と上社は映画の中で何度も見た光景であったが、それは現実ではないおとぎ話だと思い込めたからこそ見られた物だ。だが、人間が人間を食べるこのおぞましい光景は現実に目の前で起こっている。


「映画とは違ってまったくドキドキハラハラする物じゃない。」


上社も黒川も顔をゾンビのように青ざめて今見ている光景のショックをどうやって受け止めればいいのかわからなかった。だが、捕食中の女子生徒ゾンビが異変に気づいた。片腕を捕食するのを止めて片腕を床に放り投げると女子生徒ゾンビは立ち上がり、黒川達がいる後ろを振り向いた。女子生徒ゾンビの口の周りは血で真っ赤に染まっている。そして女子生徒ゾンビは餌である黒川達へと向かった。


黒川と上社はいつまでも頭の中を真っ白のままにしてはいけない。現実に戻らなければ。わかっていているのに心は目の前の現実から目を逸したい。そして目を閉じた時、大きな音が鳴り響いた。神宮西が咄嗟に消火器で女子高生ゾンビの頭を殴った。殴られた女子生徒ゾンビは床に倒れて絶命した。神宮西の呼吸は激しく荒れていた。神宮西もさっき見た光景には動揺したのか動きが遅くなった。黒川は吐き出したい衝動を押さえて尋ねた。


「さっき見た光景を忘れるにはどうしたらいい?」

「大人が嫌な事を忘れようとする時によくやる仕事に没頭するのが一番だ。」


上社がドアの横にあるスイッチを押して放送室の電気をつけた後で3人は気持ちを切り替えて放送室の中へと突き進んで入った。黒川が真っ先に機材や水筒が置いてある机に着いたが、机に背を持たれて座っている片腕のない彼が邪魔だった。


「ゴメン。」


一言だけ謝ると黒川は片腕のない男子生徒の頭を横から押した。男子生徒は生きていると言うよりもぬいぐるみのように横に倒れた。黒川は机の前に置いてある椅子に座り、上社は黒川の背後へと回った。神宮西は黒川の横へと来て尋ねた。


「放送室に入ったのはいいけど、どうやって放送を校内に流すの?」


神宮西の質問をまるで待っていたかのように黒川は得意げにマイクを自分の口元へと向けさせて言った。


「その為に俺はここに座っている。」

「得意げになっているが、黒川はじゃんけんで負けて嫌々放送係を一時期やっていただけだからな。」

「あの時は嫌々だったけど、今はその経験がこれから役に立つじゃないか。」


そして黒川は緊急用のスイッチを押した。


『キィィィーーーーーーンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!』


いきなり黒板を爪で引っ掻いたような耳障りな音が響いた。


「鼓膜が敗れるッ!」


上社は両手で両耳を抑えた。さらに黒川はマイクを手で強く叩いた。『ヴォンヴォン!』と頭を叩き割っているかのような嫌な音をさせて『あーあー』と声をあげてマイクチェックをした。黒川の醜い放送は全校中に響き渡った。廊下にいたみきは突如聴こえてきた不快音を両手で両耳を抑えていた。


「ちょっとぉっっ!ゾンビの襲撃による苦痛だけでなく、耳の鼓膜が破れそうになる苦痛までも味合わせる気!???」


家庭科部にとっては黒川が出した不快音に両耳を押さえつつもその不協和音こそが希望の兆しのようにゾンビの血で血まみれに汚れたエプロン姿で歓声を上げていた。


家庭科部の床は辺り一面が血の海でゾンビ達が体の一部を失ったまま血の海に沈んでいた。オーブンには脳みそが丸々入って焼かれており、スープ皿には真っ赤に染まったスープが入っており、ウィンナーのような指が何本か浮かんでいた。両脇にナイフとフォークが置かれてある皿の上にはサニーレタスやルッコラとトマトの中にゾンビの腸が飾り付けてあり、フルーツを盛る皿の中にはパイナップルを口に詰め込まれたゾンビの頭部が入ってあった。部長が頭から脳みそを垂れ流して床に倒れているゾンビの背中の上に乗って立つとひどい騒音に負けじと大声で部員達にスピーチを初めた。


「皆さんっ!先程の放送を聴きました?あれこそ砂漠の中のオアシス!我々が生き残る最後の希望の鐘の音なのです!」


床はゾンビの死骸だらけで部長は血まみれの包丁を手に持ち希望について感動的なスピーチをした。部員達も血まみれのフライパンや大根を持ちながら希望の兆しに全員拍手をあげた。




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