♰♰♰ 正真正銘の馬鹿 ♰♰♰
神宮西を先頭にし後から黒川と上社が続いて階段を降りていた。背後からは数人のゾンビ達が追いかけて来る。だが、ゾンビ達はのろのろとした遅い足取りでいる為に黒川達に追いつくまでには日が暮れそうだ。
だが、問題はゾンビが至る所にいる事だ。黒川達が走っているちょうど目の前にも2匹の男女のゾンビが立ちふさがっていた。だが、神宮西が瞬きをする間もなく消火器の煙をゾンビ達に撒き散らしてゾンビ達が煙に目がやられている隙に黒川達はゾンビの横を通り過ぎて階段を降りて行った。
「ところで一体全体どうして学校中がゾンビだらけになってしまった?」
黒川が走りながら上社と神宮西に尋ねると、神宮西が黒川の質問に答えるかのごとく前にまた立ちふさがっている一匹の男子生徒のゾンビを消化器でぶん殴った。
「さぁ、私にもよくわからないのだけど、外をふらついていたらいきなりあちこちで叫び声が聞こえてきて、気がつけば学校中がゾンビだらけになっていた。」
黒川は自分と上社を先導してくれる神宮西を見て思った。
神宮西がこの狂気で思わず叫びたくなる世界に足を踏み入れても妙に冷静なのはきっとこれまでに沢山の修羅場を経験して慣れているからだろう。神宮西は女の子で味方がなく、たった一人でゾンビがうじゃうじゃいる校舎の中で俺達を助けに来てくれたというのに俺達ときたら男が2人もいるのにおじけついているじゃないか。
だけど、もう泣き言を言っているヒマなんてない。そう決心がつき、二階まで降りて階段から左に曲がり第二校舎へとつないでいる渡り廊下まで来ると渡り廊下には複数の男女のグループがいた。
「わわっ!ゾンビか!」
「よーく見たまえ黒川。彼らはゾンビではない。」
上社に言われて目を凝らして男女グループを見た。
「ほんとだ!ゾンビかと思ったけどゾンビじゃない。ゾンビのような格好をしているだけか!」
黒川はすぐに彼らに近づいて警告した。
「君達大丈夫か?今は学校中がゾンビだらけで大変だ!」
すると、まったくカッコよくもない顔なのにイケメン気取りなボリュームのあるヘアスタイルとピンクの色をした髪をしている男子生徒が頭の悪そうな喋り方で言った。
「すげっー!本当にゾンビが学校にいるのっ!?」
男子生徒から返ってきた反応は恐怖というよりも間近で大波を見る為に台風が来ている中で海に行くような若者のような反応だった。その男子生徒の隣にいたまたしても髪の毛が上にボリュームたっぷりのまるでマリー・アントワネットがキャバ嬢をして働いているかのような女の子が甲高いチワワのような鳴き声を出して言った。
「すっごぉーい!!友達からゾンビの画像がいっぱい送られて来たけどぉーてっきりハロウィンのコスプレかと思っていたけどマジだったんだぁー!」
上社が女の子のヘアスタイルを見てまるで宇宙人でも見ているかのような目で言った。
「君達、いったいどうしたのだ?その異星人っぽいヘアスタイルと喋り方は?ひょっとして君達は地球の言葉が通じない宇宙人なのかっ!?ひょっとしてひょっとするとこの騒動も人間になりすました宇宙人が人類を乗っ取る為の野望なのか???人類はやはり滅亡する運命なのか!????」
上社は両手で頭を抱えてぶつぶつ呟いて自問自答していた。
「ちょっとぉー!異星人っぽい喋り方ってなによぉ~!プンプン!!」
「自分が馬鹿だって事も気付かない人が馬鹿なのよね・・・・。」
わざと自分を卑下して男のウケを良くしようとする女は愚かではあるが、こんな時に毒のある言葉を吐いて相手と喧嘩を初めてしまう神宮西も厄介だ。
「まぁまぁ、今は争っている場合じゃない!俺たちのすぐ後ろにはゾンビが迫って来ている!君達もさっさとここから脱出した方がいいっ!」
黒川の警告を聴いた男子生徒が片手を高くあげて甲高い雄叫びをあげて言った。
「うぇーいっ!!!じゃあ!さっそくゾンビを見に行こうぜぇ~い!!!」
「ちっがぁーう!!俺は警告をしているんだっつーのっ!!」
黒川の言葉は宇宙人にはまったく理解しなかった。
「うぇーいっ!!!」
男女グループはまるでメスに群がる発情したサルのように発狂しながらゾンビがいる黒川達が来た道へといっせいに走り出して行った。
「ちょっとぉぉぉお!!いや、だからゾンビは危険だってばぁさぁっっー!!!」
複数の男女達は黒川の必死の警告も聴かずに黒川達が来た階段ヘと向かって上の階へと消え去ると、階段の上の階から複数のアマゾンに住む甲高いサルのようなキーキーと叫んでいる悲鳴が聴こえてきた。黒川が片手で眉間のシワを押さえた。
「俺が警告したせいだ・・・」
上社が黒川の肩を叩いた。
「黒川が警告したせいではない。彼らは正真正銘の宇宙人だったからだ。どうやら人類をゾンビ化させた真犯人ではなかったようだが。」
「私も訂正するわ。わざと馬鹿っぽく喋っているのかと思っていたけど、どうやら本物の馬鹿だったみたい。」
黒川は生徒達の悲鳴が聴こえてきた方から背を向けて上社と神宮西の方を向いた。
「さっさと忘れて放送室に向かうか。」




