♰♰♰ 救世主はいるのか?② ♰♰♰
3人は今見ている光景に化物を見た以上にショックを受けた。
「どうして大人って簡単に諦めちゃうのだろ・・・。」
下に群がるゾンビ共によってサンドバッグとなった揺れる校長を目で追いながら真由が訪ねた。すると突如、3人以外の声がした。
「大人は子供より現実は簡単にはいかないと理解しているからよ・・・・。」
3人は突如、声がした先を見た。
「こずえ先生っ!」
真由達がいる扉の前からちょうど右斜め前の所に国語教師のこずえ先生の机があった。こずえ先生は机の上に右腕を置いてその上に頭を載せ腕枕にしながら顔だけは教え子である生徒達を向いていた。三人はやっと生きたまともな人に会えたと喜んでこずえ先生の所へと向かったが、麻子がこずえ先生が妙な事に気がついた。
「先生?どうしたの???腕から血が・・・・」
こずえ先生の左腕がだらりと下に降りて手首から血が流れて床にはもう血溜まりが出来ていた。
「ああ、気にしなくていいのよ。自分で決断した事だから・・・」
「自分でって!先生死んじゃうつもりっ!?」
動揺している夏樹の質問にこずえ先生がいつもの授業の時のような優しい笑顔を向けて最後の授業をした。
「あなた達もいずれ大人になるのだから先生のした事がわかるわ。さあ、手を出して。」
真由はこずえ先生に言われた通りに手の平をこずえ先生の前に差し出した。するとこずえ先生は血が流れていない右手に持っている鋭利な物を真由に差し出した。
「これって・・・カミソリ????」
こずえ先生が手渡したカミソリは使った後と思われる血がついていた。
「これがあなた達にできる唯一の事だから。もし、あなた達にその時が訪れたら、自分を責めなくていいのよ・・・・・。」
その一言を言うのに最後の気力を使い果たしたのかこずえ先生はぐったりと動かなくなった。
「先生っ!」
「やだ・・・やだ・・・ウソ・・・・」
3人の顔がまるで自分達の末路を見てしまったようになった。死しか希望を見いだせない絶望の世界。職員室にいる先生達だったゾンビはようやく破られた校長先生のお腹から出てきた一つの腸に二人で口にくわえて奪い合いに夢中で元同僚が死んだ事にも気付いていない。
夏樹と真由と麻子がこずえ先生の絶命にショックで完全に気を取られていたその時、背後からいきなり複数の手でドアを激しく叩いているような物音がした。3人が音が聴こえてきた背後を振り向いた。その音の出処は自分達が先程、生徒指導室から職員室に入ったドアの奥の方から聴こえてきた。
「生徒指導室にいたあの化物達がここに入ってくるのも時間の問題かも・・・。」
麻子の顔から血の気が引いたように白くなっていた。それはまるで自分達を襲ってきた化物達に変わろうとしているかのようだ。
「どこかへ逃げなきゃ。」
真由がいうと夏樹と麻子はどこか逃げ道はないのかと職員室を見渡した。
「ほら、あそこなら逃げられるかも!」
夏樹がちょうどゾンビがいない職員室の後方のドアを指した。だが、麻子の手がドアを指している夏樹の腕を止めた。
「ダメ。よく見て。」
夏樹と真由は麻子に言われるままにドアを見た。
「夏樹の言う通りゾンビがいない道はあそこしかないように見えるけど・・・。」
「真由、扉じゃなくて扉の奥を見るの。」
真由は言われた通り扉の奥を見た。すると扉についている長方形の窓ガラスにぼんやりと複数の黒い影が見えた。夏樹は先程、廊下から現れた無数のゾンビ達を連想してしまった。
「じゃあ、どうしろって言うのっ!?」
ドアが叩かれる音がしだいに大きくなってくるのにつれて3人の心臓の鼓動も太鼓を叩いているかのようにしだいに大きく鳴り響いていった。麻子が呟いた。
「職員室を逃げ道にしたはずが、逆に職員室に追い込まれちゃった・・・。」




