↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/143

♰♰♰ 救世主はいるのか? ♰♰♰

 その頃、生徒指導室では原先生が長い眠りからようやく目覚め、夏樹と麻子と真由の3人の前に立ちふさがっていた。真由が涙目でパニック状態になった。


「どーしよ!どーしよ!原先生が起きちゃった!」

「どうするのって、今はこうするしかないでしょ。」


夏樹は空になったダンボールを原先生の頭に被せ、原先生の目が見えないようにした。


「ナイス夏樹!さあ、今のうちに逃げるよ、真由。」


麻子の言葉を聴いて落ち着いた真由は麻子と夏樹と共に息を殺して足音をひとつも立てないように気を付けて歩きながら自分達が生徒指導室に入った時と同じ出入り口へと向かった。


しかし、3人の背後で足音が聴こえた。背中で恐怖がぞくぞくと迫ってきているのを感じて後ろを振り向いた。原先生が3人を追っかけて歩み出していた。が、ダンボールで目の前が見えない原先生は足元にあったテーブルにつまずいて床に倒れてしまった。なんともあっけない幕切れだ。麻子は息さえ止めていたのをようやく吐き出して言った。


「さぁ、原先生がこけた今のうちにさっさとこの場から逃げよ。」

「うん、でも。なんか原先生の様子がおかしくない?」


真由の言葉を聴いて不審に思った夏樹と麻子が原先生のいる後ろへとまた振り返った。頭にダンボールをかぶせられているがいつもの知っている原先生とは違って痩せ細りまったく生気がみられない。


「きっと寝ている間に新陳代謝が落ちただけだって。原先生の事よりさっさとここから出ないと。次は私達の心配をしなきゃならなくなるよ。」


夏樹が真由の腕を引っ張って真由の注意を原先生から逸らせようとしたが、真由は原先生の事が気になってしょうがなかった。生徒指導室の出入り口のドアは横向きの引き戸を握り、下に向けさせて押せばドアは簡単に開く。


真っ先に出入り口のドアへと辿り着いた麻子がドアを開けようと手を引き戸へと伸ばした。その時、なぜかまだ引き戸に手が触れてもいないのにも関わらず引き戸が勝手に下へと向いた。麻子の長いまつげのエクステをつけた目の瞬きの回数が増えた。


「どうしてドアを開けないの??」


夏樹が一向にドアを開けようとしない麻子を不自然に思って尋ねてみた。


「ひ、引き戸がかっ、勝手に下に向いたの!私は引き戸に一度も触っていないのに!!」

「という事はつまり・・・・・」


真由が夏樹に顔を向けて尋ねた。


「外から引き戸を回している人がいるって事???」


夏樹が言葉に出すと三人は本能から危険を感じてドアから離れた。声を殺し、息を飲み込んだ。ドアの引き戸はまだ下に向いたままだ。そしてキィィ・・・っと扉の古い木片が床とこすれる不快な音がするとドアが外から部屋の中へとゆっくりと押されて行った。


扉ががどんどん開いていく、そして開いた扉の隙間からまるでナメクジがぬめぬめと顔を伸ばすようにニョキッと顔が飛び出てきた時、三人は安堵した。外から入って来たのは自分達と同級生くらいの女の子の顔だった。麻子が安堵の喜びを口に出した。


「なんだびっくりした~でも、よかった!先生がこなくって!」


次の瞬間、女の子の顔が刈り取られたりんごのように頭がぽろりと落ちた。女の子の落ちた首は夏樹の足元へと転がり、全開に開いたドアから首から上がなくなった女の子の胴体部分が生徒指導室の床に落ちてきた。女の子の胴体はまるで複数の肉食動物に噛みちぎられた後のように服装がぼろぼろに切り裂かれていて噛み跡が幾つか見られた。


そして首がない女の子が現れて来た廊下からラグビーボールではなく、ラグビー部員の首を腕に抱えたラグビー部員に学校名が血に染まったユニフォームを着ている野球部員に真っ赤に染まったラケットを手に持つ女子テニス部員、土ではなく血に染まっている園芸用など十匹以上はいる化物の群れが全員揃って青白い顔の白目に両腕を垂直に上げてこれから餌が居るパーティ会場である生徒指導室へとぞろぞろと入ってきた。


麻子がついに禁止されていた叫び声をあげ、廊下の外まで響き渡った。足元から笑い声が聴こえた夏樹は自分の足元を見た。すると先程、首が取れた女の子が白目を向いて夏樹の事を見ながらキャキャキャ!と猿のように嘲笑っていた。夏樹が咄嗟に女子高生の生首を蹴っ飛ばした。生首はラグビー部の身につけているヘッドギアに当たって跳ね返り、テニス部員のラケットに当たって床に落ちてきた所で園芸部員に頭を踏まれた。


化物達は遅い足取りだが3人の餌がへと向かって来ている。3人は後ろに少しずつ下がっていた。放課後のチャイムが鳴るまで今まで通りの学校だったのに自分達が生徒指導室に入っている間に何かが変わってしまった。変わった連中の顔色を見て恐怖を感じた真由が隣にいる夏樹の腕の制服の裾をひっぱって震えている唇でやっと喋った。


「に・・・・逃げよ。早くここから!」

「なんか、この人たちヤバイ薬でも飲んじゃったの??それとも私の頭がおかしくなっちゃっただけ???」


麻子も徐々に落ち着きを取り戻そうとしていた。


「でも、唯一の逃げるドアがほら、化物だらけじゃん!?」


真由は自分達が入ってきた扉の光景を指した。


「いや、逃げ道ならあった!職員室に通じる扉がある!」


夏樹は左側の奥にある隣の職員室に通じている扉を指した。


「そっか!先生達は今頃、会議中だから職員室に絶対いるもんね。」


先程のおぞましい恐怖から徐々に希望を取り戻してきた麻子が言った。


「先生達ならきっと助けてくれる!さぁ、職員室に行こ!」


夏樹の言葉を合図のように3人は職員室へ通じるドアがある後ろへと振り返った。が、3人の目の前にはダンボールをかぶった原先生が立っていた。原先生も出入り口のドアから出てきた化物と同じく、両手を垂直にあげていた。3人は同時に叫びだした。


「原先生も学校の皆もなんで化物になっちゃったの???」


夏樹が焦って声が早口になっていた。3人は急いで原先生の横を横切って職員室へと通じる唯一の扉へと向かった。麻子がドアノブを握り、扉を開けると3人はすぐに職員室へと入り、夏樹が扉を閉じると扉に鍵をしめた。


3人が職員室へ入ったちょうどその時は太陽に雲がかかり、電気がついていない職員室の部屋の中は暗くて職員室がどうなっているのかわかりづらかった。ただ職員室の奥の方からキィキィとなにか紐が重いものを吊るしてこすれたような鈍い音だけがした。


「この音?なに?」


夏樹の疑問に答えようとするかのように太陽を隠している雲が引いていき、窓から光の線が職員室へ射し込んでいき部屋を照らしていった。光が出来ると影もできる。まるで大きな幼虫の塊のような黒い影が職員室の中を大きく揺れ動いていた。3人は目で蠢く影を追った。


職員室の奥にあるホワイトボードの前に置いている机の真上の天井照明を吊るしてある鉄の棒状部分に紐を結びつけて首をくくって死んでいる校長先生の姿があった。その真下では校長先生のおこぼれの肉を食べようと校長先生の死体に手を伸ばしているかつて校長先生を慕っていた先生達のゾンビで溢れていた。校長先生はまるでボクサーに殴られて揺れるサンドバッグのようにゆらゆらと揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。