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♰♰♰ 救世主は・・・??? ♰♰♰

仰向けに床に倒れた名城は立ち上がろうとしたその時にゾンビに上から覆いかぶさられてしまい、身体をうまく動かせなくなりゾンビの下でもがいていた。名城の上に覆いかぶさってきたゾンビは名城の首に牙を向けてきた。名城は手に持っていたスッポンの棒を横向きにして自分に向かってくるゾンビの口にスッポンの棒を噛ませ、ゾンビに噛まれる危機を防いだ。


だが、片方の足元では女子高生のゾンビが先程、ラバーカップを顔に被せられた恨みでも晴らそうとするかのように名城の足首に牙を向けようとしていた。名城はゾンビに足首を噛まれまいと開いているもう片方の足で女子高生ゾンビの頭を何度も蹴ったりして必死に抵抗した。


だが、いつまでそんな事をしてもこっちが先に疲れるだけだ。名城は周辺に何か使える物がないか周りを探ってみた。


悪運が強いのか倒れた場所から近くにトイレブラシが床に転がっているのを見つけた。名城は片手を千切れそうなほど伸ばしてトイレブラシの棒を掴もうとしてみたが、指に触れそうで届かなかった。先程まではゾンビの牙が自身に向かうのを両手でスッポンをつかんで押さえていたが、今は片手だけで棒を掴んでゾンビの牙を押さえているのはさすがにしんどくゾンビの力強さに押されぎみで名城の手が徐々にしびれていった。


そうしている間にゾンビの牙が名城の首元の皮一枚へと触れそうなほど近づいて来た。名城は口をだらしなくポカーンと開けたまま傍観しているだけで一向に助けに来ない役立たずの堀田達に怒りをぶつけた。


「おめぇら!見ているヒマがあったらそこに落ちているブラシを俺によこせっっ!」


ブラシはちょうど堀田達の近くに落ちていた。ゾンビ達が名城一人に集中している為にゾンビ達は堀田とザコ二等兵らには完全にノーマーク状態だった。


堀田は名城に怒鳴られると夢から覚めたようにはっと目を覚めて、周囲を見渡すと横にいるザコ二等兵の一人の袖を引っ張って小声でザコ二等兵の耳に話しかけていた。話が終えると堀田とザコ二等兵らはその場から立ち上がった。名城は助けに来てくれるのかと思った。


「名城さんもついに運が付きたか・・・・・・・」


堀田はそう言うと目の前に落ちているのにブラシを拾わず、名城を助ける事もなく、ゾンビが名城に集中している隙にトイレの窓から体を外に乗り出して外にあるパイプに捕まり下へと降りて行った。


「そのまま地獄まで落ちろっ!!」

「名城さんの犠牲は無駄にはしないでぇーすー!!!!」


堀田とザコ二等兵らは名城に満面の笑みをこぼしながらトイレの窓の外にあるパイプにしがみついて下へと降りていき見事トイレから脱出して行った。


「・・・・ま、あいつらを信用した俺も馬鹿だったよな。」


だが、いつまでも自分を責めている余裕はない。スッポンを握る手が限界だ。この手が耐えられるのも後わずかな時間しかない。覚悟を決めて手を伸ばしたその時、奇跡が起こった。トイレブラシが手に届いた。名城の表情に少し安堵の色が見えてきたその時、上からずとんと何者かの足がトイレブラシの先に落ちて来た。顔の周りに便座つけたポン・デ・ライオンのような一匹のゾンビが名城の唯一の救いの手であるトイレブラシを踏みつけて、名城がトイレブラシを取るのを阻止した。


後には何も出来る事がない。前を向き直すとゾンビの牙がもう名城の首肌に触れる所まで来ている。ゾンビの吐息が首にふりそそぐ。生きたままゾンビに捕食されるのを目の前で見せつけられなきゃいけないのか。目の前の事でいっぱいなのにこんな時にネクタイをつけているせいで首が締め付けられていて苦しい。ネクタイ・・・・。


そういえば自分に牙を向けているゾンビにも自分と同じ邪魔なネクタイをつけている。その事に気がついた名城はトイレブラシを掴もうとした片手を自分に牙を向けてくるゾンビのネクタイを掴むとネクタイを強く下に引っ張った。


ゾンビの首がネクタイに締め付けられ、首の皮膚にネクタイが食い込むほど締め付けられ、青い血管が浮き出た。そして名城はネクタイを横にに引っ張った。ネクタイに首を締め付けられたゾンビはまるで首輪をつけた犬のようにご主人が紐で引っ張られる方向へと進み名城の体から横へと逸れた。


上半身が自由となった名城はすぐに上半身を起き上がらせるとスッポンを両手で掴み直し、自分の足首を掴んでいる女子高生の顔をスッポンで殴った。先程、トイレブラシを踏みつけたゾンビが名城に襲い掛かった。名城はトイレのラバーカップでゾンビの腹に突いた。


ゾンビが後ろに倒れているその隙に名城は立ち上がり、トイレの入口付近まで駆け寄って後ろを振り返った。背後には名城に倒されたゾンビ達がまた立ち上がり、今度こそは全員で一斉に名城に襲いかかった。何度倒してもゾンビ達はまだこの世の生に未練がある。


名城は入り口から隣にある掃除用に使われる蛇口に向かうと蛇口の下にあるホースを掴み、ホースの先を蛇口につけて水を出した。名城はホースの先をつまみ、勢い良く出てきたホースの水をゾンビ達の顔に目掛けて浴びせさせた。ゾンビ達はホースから出て来る水の勢いに押されて前に進めない。その隙に名城はスッポンを手に持ちトイレの出口の扉まで来ると地獄から抜け出す唯一の扉を開けた。


「・・・・・・・・!」


だが、それはけして開けてはいけないパンドラの箱だ。ようやく地獄から抜け出せた思っていたら廊下の右にも左にも大量のゾンビが蛆虫のように湧いていた。もうトイレだけが地獄なのではない。この世のすべてが地獄になのだ。


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