♰♰♰ 救世主はトイレの中にある ♰♰♰
その頃、堀田とザコ二等兵達は背後から3匹のゾンビに追いかけられて廊下を走って逃げていた。
「なんで逃げても何処にでもゾンビだらけなんだっ!」
先頭を走っている堀田が目に貯めた涙をこぼしながら弱音を吐いていた。
廊下にも教室にも窓の外にも化物達がうろちょろして、化物に追われて逃げ惑う哀れな羊たちの悲鳴が学校のあちこちで聴こえてくる。いきなり教室の窓ガラスが割れて窓ガラスから無数のゾンビの腕が飛び出しザコ二等兵の一人の制服を掴み、捕まったザコ二等兵は地獄の教室の中へと連れていかれてしまった。無数のゾンビに襲われたザコ二等兵のむごい叫びが廊下中に響き渡った。堀田は振り返る事もせずザコ二等兵を助けに行かなかった。一心不乱に何処かへ行く宛を探していたらザコ二等兵の一人が言った。
「あの廊下の突き当りの音楽室へと非難しよ!」
「俺もそれをさっき思いついたが、お前に先に言われた!」
堀田が後出しで言っている間に3人は突き当りにある音楽室の扉の前にやってきた。堀田が教室の扉を開けるとザコ二等兵の一人の顔がやっと天使に会えたような穏やかな表情になった。
「ようやく、安息の地へ行ける・・・・。」
だが、安息の地から飛び出てきたのは扉一面を埋め尽くすほどの楽器を手に持った大量の吹奏楽部ゾンビだ。
「うぎゃああああああああ!!!!」
音楽室にいたゾンビ達は触手のような手を伸ばすとザコ二等兵の一人を捕えた。ゾンビ達は肩や腕、頭、足に脇腹など肉がある所ならどこでも掴まれていた。捕らえられたザコ二等兵は堀田とザコ二等兵たちに助けを求めた。
「た、たすけ・・・・・」
最後の言葉を言う事も叶わずザコ二等兵はゾンビ達によってバラバラに肉を引き裂かれザコ二等兵の死体というよりも肉の塊だけになってしまった。
堀田とザコ二等兵らはすぐに来た道を引き返した。だが、来た道には自分達を追っかけていた3匹のゾンビがいる。前には大量のゾンビがいる音楽室。堀田は来た道を引き返すのを諦めてちょうど自分達がいる場所の横にある階段へ向かい階段を降りようとした矢先に下の階段から上へ登りに来たゾンビらが現れてきた。ならば上に昇ろうと階段を見上げると上からも餌の声を聴いて下に降りてきた5匹のゾンビがいた。ならば反対の道は?と階段の向かい側にある渡り廊下を見た。すると渡り廊下もゾンビらが歩いていたのだ。
「四方塞がりだ・・・・。」
堀田は逃げ場所が無いことを嘆いた時、そばに男子トイレがあるのが目に見えた。
「男子トイレだ!そこへ逃げろ!」
「で、でもそのトイレの中には・・・」
ザコ二等兵はまるでトイレの中にいるゾンビよりも恐ろしい物を怖がっているようだ。
「つべこべ言わずに今はゾンビから逃げるぞ!」
堀田はもうヤケになって男子トイレの中へと逃げ込んでいった。後から残り4人だけとなったザコ二等兵も男子トイレの中へと入り、堀田は3番目のトイレの前に立った。
「名城さぁぁ~ん!助けてくださいよぉぉぉ!学校中がいつの間にかヤバイ連中だらけになっていまして・・・」
「ぎゃあああああああ!!!!!!!!」
突如、入り口の方から悲鳴が聴こえた。入り口を振り向くとザコ二等兵の一人がトイレに侵入してきた一匹のゾンビに襲われた。堀田は慌てだし早口で妙な敬語を使いだした。
「今の悲鳴を聴きました??聴きましたよねっ!??化物がザコ二等兵を襲っています!化物たちはもう僕らに迫ってきています!無敵の名城さんならなんとか追い払ってくれますよね?ね?ね?だから早く俺達の事を助けてくださいよぉぉ~~!」
「・・・・・・・。」
トイレの中にいる名城は返事をしなかった。
そうこうしている間にもトイレに侵入してきたゾンビが一人二人と増えていき、ぞろぞろとトイレの中へ入って行った。中には女子生徒のゾンビまでもが男子トイレに入って来ている。ゾンビに襲われたザコ二等兵はゾンビ達に腸や腕などを食べられていた。堀田はゾンビ達を牽制するように言った。
「な、なんなんだよぉぉぉ~!お、おれはび、び・・・びびってなんかいないからナッ!こっちには名城さんがついているんだぞっ!言っておくけどな!名城さんを怒らせたらまじヤバイぞ!一人で複数の男を病院送りにして、半殺しにしているのだぞ!他校の生徒でさえびびっているんだからナッ!ね?ね?ね?そうですよね!名城さん!さっさと俺にケンカ売ってくる生意気なコイツらを殺っちゃって下さい!」
「・・・・・・・。」
尚も名城は無言を貫き通した。
ザコ二等兵の肉を噛まれて捕食されている音がトイレ中に響いていた。堀田は顔に滝のような汗を流した。次々とゾンビ達がトイレに集まってきている中で名城はというとトイレの中でタバコを口に加えながら組んだ足をドアに当てスマホでソリテリアをするのに夢中だった。
「あはは、冗談キツイっすよぉ~!そこにいるのはわかっているのですからね!」
「・・・・・・・・。」
なおも返事をしない名城に堀田は焦り始めた。
ザコ二等兵の食べる所がなくなるとゾンビ達は餌である堀田と3人だけとなったザコ二等兵の所へと向かいだした。食べられるのも時間の問題だ。
だが、名城は依然とソリテリアに夢中である。そもそも名城にとっては堀田とは友達でもなんでもないから救う義理もない。そしてとうとう堀田とザコ二等兵らはトイレの窓ガラスがある壁際まて追い詰められてしまった。
「そ、そんなぁ~ひどいっすよー名城さんっ!助けてくださいよ~~!」
先頭を歩くゾンビの一匹が堀田に迫ってきた。が、しかし先程、黒川がトイレでまったく武器として通用しなかったしまい忘れたスッポンに足に躓いて体制を崩してしまい、よりによって名城がいる3番目のトイレのドアに体を激突してしまった。
せっかくうるさい堀田はいなくなりそうでソリテリアを楽しんでいたのに楽しみが邪魔された名城は恨むような目を上にやって舌打ちをした。
逃げ道もなく、壁際まで追い詰められてしまった堀田とザコ二等兵らはすっかり腰を抜かして鳴き声をあげた。先程、スッポンに躓いてしまったゾンビは3番目のトイレのドアの前で立ち上がると目の前にあるごちそうに近づこうと足を一歩前に進めた。
・・・・・が、その時上からゾンビの頭に何か熱い物が落ちてきた。ゾンビは頭の上に落ちてきた物を床へと払い落とした。床を見るとタバコが落ちていた。まだタバコの先に小さな火がついている。一体誰が?その時、突如3番目のトイレのドアがいきおいよく外に開き、タバコを見ていたゾンビの顔面にめがけて思いっきりドアが当たった。ゾンビは後ろに吹き飛ばされ、背後にいたゾンビも一緒に巻き沿いになって床に倒れた。
堀田達もトイレの中にいるゾンビ達も3番目のトイレに視線が集まった。するといきなり開いた3番目のトイレの中から人が出てきた。名城だ。
名城はまるで寝起きのような髪もとかずにぼさぼさのヘアスタイルに寝ぼけた表情で突如現れた見た事もないおぞましい化物の姿と堀田達をひととおり見渡した後でここにいる者全員に宣戦するように告げた。
「まずは二匹か。」
「名城さぁ~~ん!!俺を助ける為にあいつらをやっつけに来てくれたのですねっ!」
堀田が目にお星様をつけて歓喜をあげた。
「あいつらをやっつけた後で次はお前の番だ。堀田。」




