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♰♰♰ ゾンビだらけの大運動会③ ♰♰♰

体育館では悲鳴と叫び声が響き渡る地獄絵図さながらとなっていた。


バレーボールの女子部員の一人の女の子はゾンビと化した複数のバレーボールやバスケ部員達に追われて逃げ場を求めて体育館中央にある敷居のネットによじ登り始めた。だが、餌を追いかけてきたゾンビ達も複数でネットへとよじ登ろうとした。やがて重みがかかってしまい、女子部員の真上にあるネットの網に限界が来て網が切れてしまい、女子部員もゾンビも共に地面へと落下してしまった。それほど高くない場所から落ちた為に命に別状はなかったが、落ちてきたネットは生徒とゾンビの上へと覆いかぶさり、編に引っかかった魚のように身動きが取りにくくなり、ネットの中でもがいていた。


その横を3匹のゾンビに追われて走って逃げている二人の女子バスケ部員が通り過ぎた。二人の女子部員はちょうど目の前にあったバレーの試合に利用するネットの下をくぐり抜けた。その後に来た3匹のゾンビ達は文明を捨てて原始時代の野蛮な猿の頃に戻ったせいかバレーのネットに気づかずにネットに真正面に突っ込んでしまい、ネットの網に顔が当って3匹は床に倒れた。


別の所では複数のゾンビと追いかけっこをしていたバスケ部の女子部員が逃げていた矢先に置いてあったバスケットボール籠を見つけ、籠の中にあるボールを掴み、必死になってバスケットボールを次々と自分へと向かってくるゾンビ達にめがけて投げつけていた。


残る生徒達は地獄から脱出する為に渡り廊下とつながっている体育館の唯一の出入り口へと群がり、生徒達は自分の前にいる生徒を押したり、どかしたり、ぶつかって相手を転ばせてもなりふり構わずに出入り口の扉へと早く近づこうとした。出入り口の扉は引き戸になっており男子バスケ部員員が重い引き戸を引いた。後方にいる生徒達は一刻も早くこの地獄からおさらばしたくて先頭で扉を開ける男子バスケ部員に対して野次があちこちに飛び回った。


「ねぇーいつになったら前に進むのー?」

「さっきの叫び声は何だ!?」

「何でさっきから止まっている!?早く進めよ!」

「さっさと前に進んでよっ!」

「早くしろ!」

「早くっ!」

「早くっ!」


その時、開いた扉のわずかな隙間から白い光の線が体育館へと漏れた。やっとドアが開いた。うるさかった野次も一気に鳴り止み、空気が墓場のように静かになった。外の光がこの世の地獄と化とした体育館へ光を注いでくれる。先程まで殺伐していた野次を飛ばしていた者もお天道さまの後光に照らされて眩しい顔をしている。


「あれこそまさしく希望だ、希望の光なのだ・・・・」

「外には希望がある!」


大勢の逃げ惑う生徒達はもうすぐ地獄から抜け出せると強く確信し、安堵していた。先頭にいたバスケ部員の男子生徒が扉を全開に開くと皆に向けて導きの言葉を言った。


「さぁ、光ある希望の中に飛び込もう!」


生徒達はその言葉に導かれるかのように希望の光あふれる世界へと足を前に進もうとした。だが、目が眩しい光に徐々に慣れてきたのか渡り廊下の様子が鮮明に伺えた。外の世界は光あふれる希望ではなく、扉を埋め尽くす程に餌を狩りにきた大勢のゾンビ達の地獄への招待であった。


「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


外にあるのは希望ではなかった。前へ進むのも地獄。後ろに下がるのも地獄。囲いの外は残酷で理不尽だらけな社会の縮図だった。扉の前でゾンビ達が大量の餌を食べているそのちょうど真上にあるバスケットゴールの中には首だけとなったゾンビがバスケットゴールの中に入ったまま、片目でウィンクした。


黒川は両手を窓に貼り付き、額を窓によせて窓の向こう側にあるおぞましい光景に全身の毛が逆立ちそうなほど震えた。


「なっ、なんだコレッ!???」


上社が窓から外を見直しながら答えた。


「まるでゾンビだらけの大運動会だな。僕達はゾンビとゴールの見えない競争をしている。人間の逃げる速さか、それともゾンビの数を増殖させる速さのどっちが勝つのか・・・。」


 




♰♰♰




 黒川は窓の外側で起きている悲劇に対して助けることも何もできない自分に拳をギュッと強く握って悔しさを噛み締めた。


「くそっ!今の俺にはどうしようもできないっ!終わりだっ!何もかもっ!」

「いいや、まだ終わりとは言い切れん。」

「希望もクソもないじゃないか?」

「まだ僕達が残っている。」

「僕たち???」

「ああ、この光景を見て気づかないのか?」


上社は両手を広げて自分達を指しているように言った。


「僕達はゾンビを倒した。という事はきっと僕達の他にもゾンビから逃れる事が出来た生存者達がいるハズだ。」

「・・・上社の言う通りだ。きっといるさっ!めずらしくお前の意見に同意だ。ところで上社・・・今までゴメンな。」

「なんだ、いきなりあやまりよって。」

「だってほら・・・俺達いつもお前の言っている予言を馬鹿にして笑っていただろ?」

「謝る必要なんてない。だって僕らは同じ宇宙人同士だろ?」


黒川が口の両端を持ち上げてほほ笑んだ。今まで上社みたいな宇宙人とは話が通じないと思っていたが、奇妙な事に同じ悲劇が起こって初めて共通の目的意識が心を通じ合わせたのだ。黒川はなぜかこんな非常時に見捨てたはずの元親友の事を考えていた。


「・・・・・知らせなきゃ、生き残っている皆でこの地獄から抜け出すぞって。」

「でも、どうやって皆に知らせるのだい?僕達二人で危険な化物達がうろちょろいる学校中を歩き回って生きている人を一人ずつ探し出せと言うのかね?」

「その為に放送室があるのさ。」

「そうか、それなら伝えるのに手っ取り早い。そうと決まったならばさっさとここから脱出しよう。ゾンビが復活するのは結構早い。」


黒川は先程、自分が椅子で倒した女子生徒のゾンビが倒れたままではあるが微妙に腕を動かしているのをチラッと見て言った。


「ああ。」


黒川と上社はさっそく駆け足で教室から廊下へと走り去っていった。


黒川達の悪い予感は的中していた。椅子に倒された女子生徒ゾンビは執念深かく立ち上がった。女子生徒のゾンビは上社と黒川の後を追って二人が出ていった教室の扉までたどり着くと途中まで閉められていた扉を開けた。が、その時に頭上にドア枠と扉の間に挟んで置いたカッターのトラップが扉を開けた事により発動し、ゾンビの頭上にカッターの刃がギロチンのようにゾンビの額を突き刺して落ちてきた。床に倒れた女子生徒ゾンビは何やら生まれたてで必死に立とうとしている子牛のように四本の手足でもがいた。

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