♰♰♰ ゾンビタイムの始まり③ ♰♰♰
上社は今度こそダメかもしれないと諦めの二文字が脳内を横切った。
「ああ、頼りの黒川が!・・・いやそもそも黒川に頼ろうとしていたのが間違いだ。」
それに気づくと上社は周りを見渡した。すると自分の顔の横に机の足が見えた。ふと先程、黒川がゾンビを机で倒した方法を思い出した上社は自分のちょうど横にある机の足を片手でしっかりと掴んだ。
まるで火を掴んでいるかのように手が熱かった。そして渾身の力をふりしぼり机が前に倒れるように机の足を前へと傾かせた。上社の片手に机の重さが伸し掛かる。そしてついに机は前へと傾いた。
机はそのまま上社の上に覆いかぶさっている男子生徒ゾンビの頭にめがけて倒れてきた。男子生徒ゾンビは上社の横へと倒れ、上社は男子生徒ゾンビに代わって自分に覆いかぶさっている机をどかすとすぐに立ち上がりまだ床に倒れている黒川に向けて叫んだ。
「黒川!ヘルメットを使え!ゾンビの弱点を忘れたのか!?横にある僕のヘルメットでゾンビの頭を叩くのだ!!」
上社の声を聴いた黒川は床に伏せた顔を上にあげた。するといつの間にか上社がゾンビから逃れて立ち上がっていた。
「そうか頭だ!頭を破壊すればいいのか!!」
顔を横に向くと上社のいつもかぶっている妙なヘルメットの頭の触手の一本が黒川の鼻をこすった。くすぐったいのを我慢して黒川は上社のヘルメットを手に取った。
そしてうつ伏せ状態から上半身だけを後ろへと大きくひねらせ片足を掴んでいる男子生徒ゾンビの口が大きく開いて足首を噛む前に男子生徒ゾンビの頭に目掛けて上社のヘルメットで思いっきり殴りつけた。すると男子生徒ゾンビは脳みそが水風船のように破裂しゾンビの脳みそが崩壊した。黒川は荒れた呼吸がまだ落ち着かないまま上社のヘルメットにこびり付いているゾンビの血を見た。
「これ、本当に防衛道具だったのだな・・・」
「だからいつも僕はそう訴えていただろ。」
苦難から解放された黒川の顔がほころびながら上社がいる黒板の前まで軽やかにステップを踏むように行くと上社にヘルメットを渡した。上社はすぐに自分の頭にヘルメットをかぶり、ヘルメットを自分の頭に合うように調整していた。
「これを被ってないと落ち着かない。」
「よかったな、上社。学校で変人はお前一人だけかと思っていたけど、仲間がいっぱい増えたじゃないか。」
「ふん、しょせん僕以外は雑魚だが。」
「その雑魚がまだ生き残っているぞ。」
黒川が上社の後ろを指した。上社が背後を振り返ると先程、上社に机の下敷きにされた男子生徒ゾンビがもう立ち上がっていた。ゾンビはただちに上社に向かって来た。しかし、黒川が自分の目の前にある机を前へと引き押すと机は男子生徒ゾンビの腹に強く当たってゾンビの体は後ろに倒れ、ゾンビの復讐は再び机によってあっけなく幕を閉じた。黒川は上社に顔を向けるとヘルメットについている二本の触手を指した。
「なぁ、そのヘルメットって被っているだけなのか?その二本の触手から何か出せないの?レーザービームとかさ。」
「んな事起きるワケないだろ。」
「なんか上社にオカルトを否定されるとムカつくな。まぁ、その話はもういいや。落ち着いた所でこのゾンビ達はいったい何だ?学校でいったい何が起こっている?」
「何が起きているかだって?ヤレヤレ。僕が朝に言った警告を君はもう忘れたのかい?そうさ、ついに来たのだ。宇宙人の侵略による黙示録が。」
いきなり宇宙人という言葉が出てきてポカーンと口を開けたまま頭の整理が追いつかない黒川を見て上社は運動場が見える教室の窓際まで来ると顔を外に向けたまま黒川に言った。
「外を見給え。」
黒川は何が何だかわからないままともかく上社の言われる通りに窓際までやってくると両手を窓に貼り付けて窓の向こう側へと顔を覗かせた。




