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♰♰♰ ゾンビタイムの始まり ♰♰♰


 上社が後ろを振り向くと同じ学ランを来た青白い顔をした男子生徒と目があった。


「誰だ?君は・・・」

「なんだ、知り合いじゃなかったのかよ。」


黒川がそう言った途端、青白い顔をした男子生徒は両手を前に突き出した。そしていきなり両手で上社の両肩を掴んだ。


「おい?何をするつもりなんだ?」


黒川の疑問に答えようとするかのように男子生徒の口が開き、鋭い牙が上社の右の首筋に向けて襲いかかった。


「上社ッッ!!」


黒川は上社が襲われたと思い立ち上がった。だが、上社は男子生徒の牙が自分の喉元に触れる直前に両手で男子生徒の顎を上に押し上げた。


「いったい何だよ?コイツ!?」


黒川は上社を助けに行かなければならないと解ってはいても突然の出来事に頭が混乱して体がフリーズしていた。

なぜ、男子生徒は上社を襲ってきたのか?

なぜ、男子生徒は自分達とは違い青白い顔、血のように真っ赤に充血した目、もう何十年も寝てないかのような凹んだ目の周り、骨まで見えそうな細い腕をしているのか?なぜ、男子生徒は口の周りには赤い物がついているのか?


黒川の頭は日常の常識からかけ離れている光景を見た混乱でいっぱいで神経が上社を助けるように働いてくれなかった。上社が男子生徒と必死に格闘しながら黒川に吠えた。


「見て解らないのかっ!?コイツは僕らと同じ高校生じゃない!ゾンビだっ!」

「はいっ!?ゾンビ?確かに映画やドラマで見てきたゾンビにそっくりだけどそんなの実際にあり得るものかっ!なぁ、上社。いつもの俺らを笑わせる為のネタなんだろ?」


黒川は現実を受け止める準備がまだ整っていなかった。


「否定したがる気持ちもわかる。現実の悲劇のニュースを受け入れると後に襲ってくるのは恐怖と悲しさだからな!人はすぐ被害者の事さえも忘れようとする。でも、今を見ろ!僕は襲われてるッッ!」


上社は力を込めて抵抗しているがゾンビらしき男子生徒の人間の力とは思えない異形な力に押され、上社は後ろを確認する余裕もなく下がってしまった。そのせいで上社の腰に後ろにあった机が当たってしまい、背中が後ろに大きく逸れたせいでバランスを崩した上社は仰向けに床に倒れてしまった。倒れた上社の上に男子生徒ゾンビが覆いかぶさってきた。その光景を見た黒川はついに上社を助けに行かなければならないという現実を受け止めるスイッチが起動した。


「ゾンビなのかどうかはさだかじゃないが、上社が襲われているのだけは確かだ。待ってろっ!今、助けに来てやるからな!」


黒川は机から横の通路に出て上社の所に向かおうとした。


「いや、僕の事はいい・・・・。」


上社は床に倒れたまま再び男子生徒ゾンビの顎を押してゾンビの牙から免れようとしながら黒川に言った。


「いきなりどうしてっ!?」

「まずは自分の心配をしろ。」

「え?」


上社の言葉になにか匂わせるものを感じた。


「そういえばさっきから何か血生臭いにおいがするな。」


黒川は強烈な匂いを発している隣を見た。すると自分の隣に目の周りが真っ黒で腸を口に加えた女子生徒ゾンビがいた。


「ぞっ!!!ゾンビ!!!!本物だったのかよっ!!!」

「だからさっきからそう言っていただろ~~~」


女子生徒ゾンビは両手を垂直にあげると口にはさんでいた腸が床にボトッと落ちた。


「ひょっとして口に加えた物を落としたのは別の食料を今から食べようとしているからとか?」


女子生徒ゾンビは頷くと口が開き、中から真っ赤に染まった牙が新たな餌である黒川に向かってきた。


「ひぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」


黒川が叫んで後ろに引き下がったその時、背後で何か人にぶつかった感触がした。黒川は思わず後ろにいるぶつかった人に謝った。


「あっ!ごめんなさっ・・・ってまたゾンビかぁぁぁぁー!!!!」


黒川がぶつかった相手もまた青白い顔をして両腕を垂直あげて顎がない男子生徒ゾンビだった。

黒川は気がつけば右にも女性生徒のゾンビが左には男子生徒のゾンビが二匹のゾンビの間に挟まれてしまっていた。


女子生徒ゾンビも男子生徒ゾンビも足取りは遅いが一歩ずつ餌である黒川に足が向かった。黒川が二匹の餌になるのも時間の問題だ。他人の助けを求めたいが上社は今、床に倒れていてゾンビと格闘中だ。黒川は二匹のゾンビがいる左右を見渡して為す術がないと察すると両手を頬に当ててまるでムンクの叫びの絵のように叫んだ。


「おっ!俺はどうすればいいんだぁーーーーー???」


その時、教室の後方の扉がまるで石でもひきずったかのように重く引く音がした。黒川の視線は後方の扉へと移った。扉の隙間が開くたびに外から光が漏れてきた。それが黒川にとっては希望の光に見えた。


「本山か東山でも誰でもいいっ!コウちゃんでも構わないっ!どうか!俺達を助けに来てくれた人であってくれ!」


扉が開いた。そこには黒川に放課後に居残り授業を言い渡した古典の担当教師がいた。


「先生っ!いいタイミングで来てくれたっ!!」


黒川は喜びのあまりヤギのようにその場から跳ねてしまいそうだった。


「ダメだっ黒川!!そいつは僕らの知っている教師じゃないっ!!」


上社の言葉が耳に入ると安堵から再び不安へと押しやられた。黒川は目を凝らして古典の先生を見た。すると古典の先生も突如現れてきたゾンビ達のように両手を前に突き出してきた。


「ははは・・・本山と東山が来てくれた方がまだマシだと思える日がこようとは・・・」


古典の先生も青白い顔をして、目が窪んでいる。教室にいるゾンビ達と違う所は口の周りに血が着いているのではなく、スーツに血が飛び散っているだけだ。その血はひょっとして今まで教えてきた生徒達の血なのだろうか?


「事態は順調なくらい最悪な方向へと進んでいやがる・・・。」



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